<大怪獣をなんとかしろ!>


「諸君等も既に知っているとは思うが、このランドアース大陸を目指して、南の海より巨大な怪獣、マリンキングボスが接近している。この大怪獣はまっすぐに陸を目指しており、このままではそう遠くない時期に上陸を果たしてしまうだろう。そうなれば……およそ途方もない被害が出るであろう事は想像に難くない。我がパンポルナの護衛士達が行った調査によると、獣達の歌や大声による呼びかけに対しては一切の反応がなく、現時点では会話による対応や説得はほぼ不可能と判断せざるを得ない。かといって力づくでどうこうしようにも、見てくれこそあんなだが、冒険者が数千人規模で集まったとて、まともな相手ができるかどうか分からないようなような規格外品だ。これは想像以上に容易ならざる事態と思ってもらいたい。言ってしまえば、最大級の非常事態だ」
 冒険者達を集め、珍しく真面目に語る霊査士ヴルルガーンの言葉。
 それを聞いた場に、ザワザワと不安の声が上がり始める。
 しばし霊査士は彼等の声に耳を傾けるようにして黙っていたが……ふと顔を上げると、にぃっと笑い、言った。
「……が、対策がないわけでもない」
 その台詞に、場がピタリと静かになる。
 満足したように頷き、説明を続けるヴルルガーン。
「これも我が南国パンポルナの護衛士の調査により判明した事だが、この大怪獣の体内は広大なダンジョンになっているようなのだ。残念ながら護衛士達は最深部までたどり着く事はできなかったが……持ち帰られた品々を霊査した結果、間違いなくそこには『何か』があると判明した。具体的にそれがどんな存在なのかまでは分からないが、今回のこのマリンキングボス出現に関して、重要な意味を持つ『何か』だ。それは間違いない。なので、この体内ダンジョンの探索を大々的に行う必要がある。今回皆にこうして集まってもらったのは、その参加者を募るためだ。我が南国の護衛士達だけでは、到底人手が足りんのでな。相手は大怪獣の体内大迷宮であり、これはランドアース大陸の命運もかけた大仕事……冒険者にとって不足はあるまい、どうだ?」
 どこか挑むような顔で、冒険者達を眺める霊査士だったが……いきなり破顔した。誰も何も言わないうちにだ。
「はっはっは。うむ、その面構えなら、答えを聞くまでもないな。希望者は用意をした上で、南国の海岸に集合だ。こちらで用意した船に乗り、一気にマリンキングボスに接近。思い切り良く飲み込んでもらって、あとは各自の行動に任せる。とにかく最深部の『何か』を目指して進むのだ。内部はモンスターや各種巨大生物、アンデッドなどがひしめいており、さらに所々には、入ったら身体が溶けてしまうような水溜りも多数あるそうだからして、そのつもりでな。報告によると、多少暴れたくらいでは大怪獣はビクともしないそうだからして、戦闘に遠慮はいらん。立ち塞がるものは全て蹴散らすくらいの勢いでガンガン行くのだぞ。このすっとぼけた来訪者にランドアース大陸の冒険者の心意気を見せてやるのだ! 頼んだぞ!!」
 最後の言葉に呼応して、応、という冒険者達の返事がこだまする。
 ……かくして、南の海に現れた大怪獣マリンキングボスに対する最大の作戦が、今ここにおいて開始される事となったのだ!


●関連シナリオ
⇒⇒⇒≪南の楽園パンポルナ≫追撃、巨大黒クラゲを倒せ!
⇒⇒⇒≪南の楽園パンポルナ≫襲来、その名は大怪獣マリンキングボス!

 

<リプレイ>


 ──ドン!
 篭った鈍い音と共に、空気が揺れた。
 放たれた爆砕拳の衝撃で、元は船か何かだと思われる瓦礫が崩れ、下にあった濁った液体の中へと落ちていく。
「そっちにいったわよん♪」
 技を撃ったのは、セクシー爆乳拳・アイリューン(a00530)だ。
 池に落ちた瓦礫が、しゅうしゅうと白い煙を上げながら溶け始める。
「心得たで御座る!!」
 返事と共に、重装甲の鎧が、その瓦礫を踏み台にして前方に突っ込んだ。白銀の王城・ライノゥシルバ(a00037)である。
「おおおおおおおおーーーっ!」
 裂帛の気合が迸り、振り下ろされるメイス。
 狙いは、こちらへと迫ってきていた異形の存在──半透明の物質に少女が閉じ込められたみたいな形をした、奇怪な怪物──であった。
 相手は転がっていた大岩の影に隠れるような動きを示したが、
 ──ドゴッッ!!
 その岩ごと、怪物の身体を打ち砕く鋼の一撃。兜割りの奥義だ。
「こっちもいくニャーーー!!」
 続けざまに大肉玉・アゲモン(a07525)がブレイブタックルで突進、横殴りの一撃が残っていた怪物の身体を完全に吹き飛ばしていた。
 まさしくそれは、見事、という程の連携だったが……。
「……」
 倒れた怪物を前に、彼らはなおも構えを崩さない。
 あたりにはまだ、無数に蠢く異形のモノ達の気配があった。
 退路は彼等の仲間、武辰流忍者・クロゥンド(a02542)と、ヒトの武道家・ミツハ(a05593)が確保しているが、まだそれを利用するわけにはいかないだろう。続いてくる、より多くの仲間のためにも……。

 ……マリンキングボスの体内に無事侵入した冒険者達は、それぞれに口から最深部への道を探し、思い思いの場所へと散っていた。
「しっかし、いくら倒してもキリがねえな、ここはよ!」
 呆れるほど巨大なカタツムリのお相手をしながら、寝覚めの良い死者・バック(a01803)がぼやいた。
 倒しても倒しても、後から相手がわんさか沸いてくる。
「先は長いみたいだね。気を引き締めていこ」
 緑陰・ピート(a02226)が言う。まあ、確かにそうするしかないのだが……。
「このままでは、アビリティも体力ももちませんね……」
 冷静に判断する、剣難女難・シリュウ(a01390)。
「……どうするの?」
 紅獅子姫・ラミア(a01420)が、隣の悪を断つ竜巻・ルシール(a00044)に尋ねた。
「……」
 が、ルシールは答えない。
 このグループのリーダーである彼女は、血液の流れる方向を目安にするつもりであったのだが……それこそ血管らしきものはそこら中で確認できる。縦横に走るその流れは、一定方向に流れているわけではなかったので、目安にはならなかった。
 が……そうして、なんらかの目標を定めて行動できたものはまだよかったのだ。
 多くの者は、マリンキングボスのどの部位を目指すかすら決めておらず、ただ闇雲に進んでいた。
 先に潜入を果たしていたパンポルナの護衛士達に話を聞くとか、協力を頼む、あるいはこっそり後をつける……等々の行動を取る者も殆どいなかったのだから、これはもう行き当たりばったりもいい所だ。
 さらに……。
「フハハハハ、さあ行けマリンキングボス! 冒険者達をもっともっと飲み込んでしまえ!!」
 ハシゴやロープを利用してマリンキングボスの頭の上に乗った終の虚像・フォルテ(a00631)が、下に向かって叫んでいた。
「はーいる、ふぉるてー!」
 そのフォルテに向かって、最後の砦・ファランクス(a01840)、餞・フィー(a02072)といった面々が片手を掲げ、銀狐の姫の幸せを願う・レギオン(a05859)が『大総統フォルテ様・バンザイ!』と書かれた垂れ幕を口から下に垂らす。さらに前科付不法滞在者・パブロフ(a06097)が、フォルテの背後にナパームアローを飛ばして爆発させ、派手な演出までしてみせた。
 マリンキングボスの口の中では、来る早々にどんちゃん騒ぎの宴会を始める者達もいた。
 ……まあ、別に騒いだり宴会をするまではよかったのだが……。
 問題なのは、調子に乗った冒険者達が、宴会用の食材にと、マリンキングボスの肉を削り取ろうとした事だ。
 口の中にいた者達だけではなく、内部に入っていった者達の中でも、あからさまに肉を狙っていたり、あるいは内部からダメージを与えようなどと考えた者達もいたようだが……それがいけなかった。
 当然の事だが、マリンキングボスは生物である。その身体の中に入る冒険者達は、いわば侵入者であり、異分子だ。
 生物には、外から入ってきたものを排除する、もしくは攻撃するといった免疫機構があり、言うまでもなくマリンキングボスにもそれはある。
 肉を取ろうとした者、頬に穴を開けようと考えた者、興味本位でのどちんこに攻撃を加えようとした者……その全ての前には、不定形をした空飛ぶスライムのような怪物──おそらくは白血球のような存在──が大量に襲来し、さらにそれに触発されて、数多くのモンスター、巨大生物、アンデット……等々が押し寄せ、攻撃をかけてきた。
 ……これにより、特にそういう事を試みた者が多かった口周辺が大混乱となり、本来退路を確保しなければならない場所で派手な戦闘が繰り広げられ、一時的に補給や連絡が寸断されるといった事態にまで陥ったのである。
 本人達は大真面目、あるいは遊び半分にやったのかもしれないが、マリンキングボス自体に攻撃を加える、という行為は、実に迷惑この上ない事でしかなかった。
 この事態を収拾するため、冒険者達は悪戯に体力、アビリティ、時間を浪費する事になり、探索も大幅に遅れる事となる。
 ……これらの事から、はっきり言ってしまえば、探索の仕方や方法、そしてその経過も実に酷い有様の冒険者達ではあったのだが……不思議な事に、続出してもおかしくない重傷者や死亡者は、1人も出なかった。
 ある者は、こう証言する。
 多数のモンスターに追い詰められ、もう駄目だと思ったとき、不意に目の前に肉の壁が出現し、怪物達から自分を隠してくれたと。
 披露の極致で目が眩み、強酸の池に落ちそうになった時、いきなりその池に溜まってきた酸が引いていったと。
 ……もしかしたら、それらの冒険者達はマリンキングボスに助けられたのかもしれない。
 が、本当にそうなのかは、誰にも分からない事だ。
 やがて、なんとか態勢を立て直す事に成功した冒険者達は、さらに広大な大怪獣の体内の探索を続けた。

「アングーだ」
 低い呟きと共に、笑劇の伝道師・オメガ(a00366)が敵へと向けてニードルスピアを放つ。
「アングーだ」
 身体を激しくスィングさせつつ放つエンブレムブロウの連打で、追い打ちをかける貧乳様の巫女・イチカ(a04121)。
「アングーだ」
 負傷者をヒーリングウェーブで回復する無垢なる超死神さま愛好家・ガム(a01017)。
「アングーだ……って、ジェラードさん……この台詞、恥ずかしいんですけど」
 流水撃の構えを取りつつ、ぽつりと本音を漏らす盟約契りし愚直なる犬士・ステラ(a05867) 。
「アングーだ……アァーーーーーーーーーイ!!」
 そのステラの肩をポンと叩くと、愛を叫ぶ紳士・ジェラード(a06294)は同じ言葉を口にし、さらに気勢を上げつつ電刃衝のかかった武器で敵へと突っ込んでいった。
「アングーだ。せっかくだから、俺はあの赤い奴を選ぶぜ!」
 コンバット・エチゼン(a07559)が、ナパームアローを発射。
「アングーだ」
 口ではそう言いつつ、心の中では『アングーじゃ!』と叫んでいる破道の夢見師・トトギ(a10087)。
「アングーだ!!」
 訓練中のハイブリッド・ヒュー(a09996)は、言った後で、ぶっと吹き出していた。自分で言ってちょっとおかしいらしい。
「アングーだ」
 そんなヒューを、どっきりエロチックな天使・カナタ(a08780)が、背後から命の抱擁で狙っている。
「アングーだ」
 彼等の手並みを見渡して、満足げに太い首でコクリと頷く剛剣士・アンギルス(a01540)。彼がこの謎集団、その名も『アングーだ隊』のリーダーである。
「アングーだ」
 この隊のメンバーではないのだが、何故か後について来ている卓越した謎の技師・ホノカ(a00021) の姿もあったりする。
 ……よく分からない上に謎だらけの集団ではあったが、この体内ダンジョンに挑んだ中では実力と人数のバランスで最大級を誇り、その力はなくてはならないものであった。
「クズノハ忍法帖頭目・チアキ参上! トマトン(ロザリンド)はキノコジャムの刑なのじゃ!」
「面白いのだ! 天然記念物っぽい白トカゲこそ、ここで消化されて怪獣の血肉になるがいいのだ!」
『クズノハ忍法帖』と書かれた旗を持ったソフビ製・チアキ(a07495)と、紅ひげ盗賊団の予告状を構えたトマトの・ロザリンド(a00198)は、展開とか成り行きに関係なく、火花を散らして宿命の対決に臨もうとしていたが……まあ、そっとしておこう。
「マリンキングボス探索中の皆々様お疲れ様なのである! 冷たいジュースと各種サンドイッチを用意した。エネルギー回復にどうぞであるよ!」
 饗宴の思索者・アレクサンドラ(a08403)の声が響く。
 木陰の医術士・シュシュ(a09463)、チョコレートを食べる獣医・トウゴ(a07208)の姿もある。彼らは口からやや入ったあたりに補給のテーブルを設置して、疲れて戻ってきた者達に補給とアビリティによる回復を行う場所を提供していた。
「お疲れさま〜♪ 水どうぞ〜♪」
 月下に舞う蝶・アシュレイ(a10003)が、コップを差し出す。
 ほろ酔い旅商人・ヴィクト(a06701)は、多少のアルコールも用意していたようだ。
「スイカー、麦酒ー、カチ割り氷はいかぁっすかー」
 その傍らでは、青の天秤・ティン(a01467)が、持ち込んだ品で路上販売を行っている。蒼の閃剣・シュウ(a00014)と売上げ勝負を競っているという話だ。
 真空竜巻爆熱ゴッド爺おぶ執事・ジャスティス(a04256)は、負傷者をおぶって、忙しく入口と奥を行ったり来たりしていた。
 他には、凪し鬼影・ナギ(a08272)が、先に進んだ冒険者達から話を聞き、地図を作成していたし、同じように歴史の声を聴く・マーナ(a08112)も、負傷者の治療の傍ら、体内情報や戦利品目録をまとめていた。
 カレーな頑固親父・ヴァルゴ(a05734)やエルフの吟遊詩人・フィール(a09183)などは、獣達の歌で積極的に情報収集を試みていたようだ。
 事前に聞いていた『マリンキングボスは元気がないように見える』という情報から、なんとか診察できないものかと考えた鋼の弓兵・アルセイド(a08277)。
 ヒトの忍び・ヴァイス(a06493) もそう考え、各種薬を持ち込んで、その原因を独自に探っていた。
 セイレーンのアンデッドの数を数え、あわよくばその情報がセイレーンとの交渉条件に使えないかと考える艶麗な剣舞の踊り手・クーヤ(a09971)のような者もいた。
 戦いよりも、壁の材質や構造、霊査に使えるものがないかと探す無限の翼・ディグアロス(a05556)。
 凱風の・アゼル(a00468)も、戦いよりも詳細な報告を行うべく、観察に重点を置いていた。
 ……そんな彼等の行動は、前線で戦う者達に比べれば地味だったかもしれない。しかし、事によればそれ以上に重要な役目を担っており、成果のないものもあったが、果たした役割と、その意義は大きかったようだ。
 そして……冒険者達は、ついにこの迷宮の最深部へと到達する。
 一番乗りを遂げたのは、やはり事前にここに入った経験のあるパンポルナの護衛士達と、彼らを仲間に加えた者達だ。
「な、なに……コレ!?」
 涼雨・レイン(a06389)の手にしたカンテラの光の中に浮かび上がったのは……床の肉壁に食い込み、そそり立つ巨大な柱であった。
「生きてるね……これ」
 なんとなく遠い声で、紫剣の舞姫・サーラ(a09005)が言う。
 彼女の言葉通り、それは生物であった。
 直立した毛のない芋虫のような身体。
 それには邪悪な胎児のような顔があり、上部の先端には、細かい歯がびっしりと生えた、丸い大きな口が黒い穴を開けている。
「飲み込んだ何か……というより、寄生生物、かな」
 天上の落とし子・マイアー(a07741)は、そう判断した。
「……なんにせよ、こいつを倒せばいいんだろ。よーし、やってやろうじゃねえか! 攻撃を開始しつつ後続にこの場所を知らせろ! 行くぞ!!」
 このチームのリーダー、ポンテが号令する。
「わかりました。全力で行きましょう」
「チーム【武器】突撃なのだー!」
 エルフの武人・シルヴィア(a01005)が、暗闇を駆け抜ける風・キース(a06464)を盾として構え、芸人鎧・アルト(a06125) が虚ろを奏でる戯言師・ウィン(a08243)の身体を持ち上げた。
「だから僕は武器じゃないってーーー!?」
 ウィンが叫んだが、問答無用。
「逝けーーー!!」
 キース、ウィン、そして何故かリーダーのポンテが華麗に宙に舞う。もちろん武器として。
「回復は私が!」
 鎧進化で防御力を高めつつ、命の抱擁修行中・アリア(a10359)が前衛に出てヒーリングウェーブを展開する。
「これがパンポルナの武器……すごい威力ね。いろんな意味で」
 寄生生物の身体の一振りであっけなく弾き飛ばされた武器’sを眺めつつ、バニーな翔剣士・ミィミー(a00562)が感心したように呟いた。
「さて、お仕事お仕事」
 静かに頷きつつ、緑珠の占花・ココ(a04062)も回復アビリティの準備を始める。
「ここが決戦の場か! 行くのだ! エリー殿!」
 天に疾る雷・クーガー(a03554)が、通路に陣取っていたモンスターを斬り倒し、道を開く。
「ありがとう!」
 それを通って、ちいさなひらがなてんし・エリー(a02292)、剣の光将・アネット(a03137)、健康優良ナース・パルフェ(a06229)、天使のち時ドキ小悪魔・ショコラ(a02448)の4人がこの場になだれ込んで来た。
「覚悟しやがれこのゲテモノ野郎!」
「はっはっは! 海のオトモダチがネコさんにかなうと思うなよ!」
「というわけで、ネコの手貸します! 貨します娘参上!」
 黒ネコパンツを穿いた翠蔭の宿儺・スィーニー(a04111)、ネコミミ、ちちばんど、ねこぱんちゅで装備を固めた碧森の謳桜・カルサイト(a04097)、白猫の着ぐるみを着た翼蛇の柩・ロス(a03706)の3名も現れ、にゃぉーんとネコネコマッチョなポーズを決めた。
 さらに……。
「にいさーーーん!」
 鎧進化で鎧を半魚人っぽく変形させた悪の華・リリス(a00917)も飛び込んでくる。どういういきさつかは不明だが、マリンキングボスを生き別れの兄と信じているようだ。背後には真珠星・ベル(a00069)、紅鎖に抗う碧き風・イサヤ(a02691)、黒の闘士・デュラン(a04878)らの姿もあった。彼らは壁小隊として、別グループの黄昏愚連隊の先鋒を務めていたが、肝心の黄昏愚連隊の皆様は、黄昏過ぎとカレーの食べ過ぎで動きが鈍くなり、かなり遅れてしまっていた。
 後方からは、同じく駆けつけてきたマジックガンナー・アザリー(a04056)、ヒトの紋章術士・ベルシード(a01535)、妖精弓の射手・シズク(a00786)、エルフの邪竜導士・キララ(a00075)ら、バブリーわらしべ隊の遠距離アビリティ攻撃が降り注ぐと同時に、ヒトの重騎士・セリカ(a00140)、不破の剣士・アマネ(a01528)、真紅の羅刹・メイフォン(a01249)の近接攻撃隊が突撃する。
「ふっ、やっぱりラスボスとは巨大回虫だったのじゃな! そんなことはまるっとお見通しなのじゃ!」
 と、異形の寄生生物に指を突きつける宵咲の狂華・ルビーナ(a00172)。
「……なにか、ちょっと違うような気もしますけどね」
 その後ろで、白銀の星芒術士・アスティル(a00990)と影法士・シェリウス(a05299)が顔を見合わせていた。

 ……さすがに、これだけの冒険者が相手では、たかだか1体の寄生生物などひとたまりもない。
 むしろあっけない程にそれは簡単に倒され、動かなくなっていた。
 その瞬間、ズズズズズズ……と、低く回りの壁、床、天井が鳴動する。まるで喜んでいるかのような反応だと、多くの者は感じた。
「ここは、位置から推測して、マリンキングボスの腰椎のあたりでしょう。どうやら、この寄生生物が取り付いていた痛みで、半分我を失っていたのではないかと推測できますね……」
 記録者の眼・フォルムアイ(a00380)が、あたりを見回し、言った。ある程度、彼はこの事態を予測していたようだ。
 ただし……本当にこれで事態は解決したのか……?
 それは、まだ分からない。
 マリンキングボス自体の事と合わせて、謎はまだまだ残っていると言えるだろう。
 むしろ、本格的な対処と調査は、これから始まるのだ。
 それに……多くの冒険者達は気づいていた。
 目の前で屍を晒している巨大な寄生生物。
 これと同じ気配が、まだ周囲から消えていないことに……。
 が、その姿は確認できない。
 どこかに潜み、成長し、表に出る機会を伺っている……。
 そんな事は容易に想像がついたが、今はどうする事もできないだろう。
 ……ここは、まだまだ継続的な監視が必要だ。
 そんな思いを胸に、この場を後にする冒険者達なのであった。

■ END ■