<その時、ヒトノソリンの長老達が……!>
「……ちょっと、皆さんにお話があるなぁ〜ん」
祭りの後、バーベキューで盛り上がる冒険者達の前に、ヒトノソリンの長老達が進み出た。
いつのまに集まったのか、各集落をまとめる立場の老人達がずらっと並び、ランドアースの冒険者達に目を向けている。
穏やかな笑みを浮かべている者、真面目な顔をしている者、厳しい顔つきの者、と表情こそ様々だったが、なんとなく彼等が大事な話をしようとしている雰囲気は伝わってきて……冒険者達は仲間との歓談をやめ、彼等へと向き直る。
「ああ、いやいや。そんなにあらたまらなくてもいいなぁ〜ん。楽にしていて構わないので、これから話す事を聞いてもらいたいなぁ〜ん」
ちょっと慌てたように軽く手を振ると、小さく咳払いをして、語り始める長老。
「……皆さんの大陸での話は、色々聞かせて頂いたなぁ〜ん。これまでに大きな戦いがいくつもあり、その度に多くの血が流されてきた事……そして、新たな仲間達──種族と出会い、同じ同胞として迎え入れてきた事……たくさん、たくさん聞かせてもらったなぁ〜ん」
静かな中に、長老の言葉だけが流れる。
「我々ヒトノソリンは、基本的に争い事は好まないなぁ〜ん。同じこの空の下、大地の上に生き、言葉も通じる者同士が武器を取って争い合う……それは、とても悲しい事であり、辛い事なぁ〜ん。だから、正直、皆さんとの交流は控えるべきだという意見もあったなぁ〜ん」
長老が、言う。
とたんに、ちょっと待ってくれ、説明させてくれ、等々の声が上がる。
長老はそちらに目を向けると、うんうんと頷いた。わかっている、とでもいう風に……。
「しかし、我々は納得するまで話し合い、決めたなぁ〜ん。本当の同胞なら、仲間なら、友人なら、共に笑うだけでなく、共に泣く事もある……それが本来の姿なぁ〜ん。そして、今日の皆さんとの祭りは、本当に楽しかったなぁ〜ん。共に笑い合えるものならば、これからもきっと、我々は上手くやっていける……それを、我々も心から望むなぁ〜ん」
再び、しんとするその場。
……では、ヒトノソリンは同盟に加わってくれるのか……?
誰かが、おそるおそるといった感じで尋ねる。
「それこそ、我等ヒトノソリンの総意なぁ〜ん。どうかこれからも、我々ヒトノソリンをよろしくお願いするなぁ〜ん」
そう告げて、一斉に頭を垂れる長老一同。
……一瞬の沈黙の後、
いいいいいぃぃぃやったぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっっ!!
会場全体が、爆発するような歓声に包まれた。
そこら中でランドアースの者同士、あるいはランドアースとワイルドファイアの者が抱き合い、飛び跳ね、思い思いの形で喜びを表現する。
「……では、早速ですまないなぁ〜んが、これから我々ヒトノソリンのグリモアがある聖地に案内するなぁ〜ん。実はもうそちらに宴会……ではなく、祈りの儀式の準備が済ませてあるなぁ〜ん。歌い、踊り、手を取り合い、そして祈りを捧げる事で、これから共に生き、より良き未来を築く事を、グリモアに約束するなぁ〜ん」
……かくて、新たな祭りの終幕の場が示され、一同はそちらへと向かう。
ヒトノソリンの聖地で、新たな盟友の誕生を祝い、そして祈るのだ!
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