<第5競技:ウェンブリン大会 経過>
●第5競技『ウェンブリン』開始
朝の清々しさが残る競技場に、早くからにもかかわらず多くの人々がつめかけている。
各組に振り分けられた冒険者たちから、それぞれ有志が集まり、12のチームが形成されて、伝統の競技ウェンブリンは行われる。
決戦はトーナメント方式。6チームずつのトーナメントがふたつ組まれ、シードを含め、対戦相手の決定は、すべてクジによる抽選で決定された。トーナメントを勝ち進んだ2チームが、頂点をかけて対決する。なお、優勝チームに『500点』、準優勝のチームには『400点』、規定により2チームとなる3位にはそれぞれ『300点』が与えられる。
一日目を終えた時点での上位チームがこのまま勢いにのってしまうのか?
それとも、下位に沈んだ組の代表たちがワイルドファイアの青空のもと、反撃の凱歌を響き渡らせるのか?
すべては皮のボールと、そして、運命を切り開く冒険者たちの両足にかかっている!
【トーナメントA】
第一試合 春の5組VS夏の6組
(その勝者が、シードの秋の10組と対戦)
第二試合 春の3組VS夏の7組
(その勝者が、シードの冬の1組と対戦)
【トーナメントB】
第三試合 冬の2組VS夏の8組
(その勝者が、シードの秋の11組と対戦)
第四試合 冬の12組VS秋の9組
(その勝者が、シードの春の4組と対戦)
●第一試合 春の5組VS夏の6組
黒狗・ミスト(a00792)が右サイドを駆け上がり、地を這うようなグラウンダーのクロスをゴール前へ、セリカ特戦隊員専医・ジョニー(a27337)が力任せに振り抜いたシュートが、大会の初ゴールを見事に飾り、夏の6組が先制する。
その後、両チームが1点ずつを加えて前半が終了。
後半戦の立ち上がり、春の5組守備ラインの一角を担う死ぬまで不死身・ランブル(a31922)が、サイドに張ったエンジェルの邪竜導士・アリエル(a32700)へパス、彼女は中盤の中央で攻撃的な役割【幻想】を務める風紋を想念で描く影・ルキ(a25948)へと繋ぎ、一点が返される。
同点とした春の5組は、善戦にそびえ立つような白銀に瞬く星・アルジェント(a26075)のポストプレーから、何度ものチャンスを作りだし順調に加点、最後尾から駆け上がった剛の剣姫・エニス(a23199)のゴールなどもあり、見事逆転に成功した。
結果――4対2で、春の5組の勝利!
●第二試合 春の3組VS夏の7組
中盤の右サイドを支配する春の3組の【鶴翼】、雑食型自由人・アーク(a29905)が中央へ高鳴りのクロスボールを入れる。しなやかな身のこなしから、ストライカー・サルバトーレ(a10671)がヘッドで後方へとそらしたボールを、二列目から駆け込んだ腕・ヒジキ(a20507)が相手防壁の股間をスライディングで抜けるトリッキーなプレイでゴール前に飛び出し、素早くシュート……が、ゴールに飛び込んだのは彼の靴であった。
珍事にも関わらず、チームメイトに声をかけて落ち着かせると、幸せの花を探す者・マッシロ(a30396)が中盤の底【舵取】の位置から、左サイドの雲色の飛翔脚・レスタァ(a32114)へ鮮やかなフィードを決める。先制の足がかりとなる重要なプレーだった。
後半は怒濤の反撃をみせた夏の7組が、試合のペースを握る展開となった。センターフォワード【主戦】を張る月下斬裂・ツァン(a36250)はひとり前線に残り、仲間たちの押し上げを待った。後に今大会屈指のディフェンスとも評されたぴよぴよ・ジーニアス(a02228)が、相手の死角からその小さな身体を足下へねじ込ませてボールを奪い、左サイドを駆け上がる蒼海の水面・キュール(a36040)へ低い弾道のパスを送る。ゴールを決めたのは、陽光にさやさやと輝く髪をなびかせた少女、攻撃的なポジション【嚆矢】となった白陽の剣士・セラフィード(a00935)であった。
後半終了間際、ストライダーの俊敏生をいかんなく発揮し、自身ゴールを守り続けた雷鳴の射手・ロイズェ(a00758)の檄が飛ぶなか、中央突破をはかった春の3組が加点、歓声と銅鑼が鳴り響いた。
結果――2対1で、春の3組の勝利!
●第三試合 冬の2組VS夏の8組
拮抗する2チームの戦いは、屈指の好ゲームとなった。中盤の底に見られたわずかなクオリティの違いによって、勝負の帰趨が決せられたといっても過言ではない。
前半は、夏の8組が2点を連続して奪取する展開からのスタートとなった。【幻想】を司る赤と白の狩人・マイト(a12506)が相手陣内、高めの位置でボールを奪い、守備陣を引きつけながらふんわりと舞う羽のようなパスを送る。声を出してパスを要求し、ゴール前へと駆け込んだ赤雷・ハロルド(a12289)が、爪先まで美しく伸ばされた足を振り抜き、甲でボールをジャストフィット、先制点を叩き込んだ。
2点をリードされた冬の2組は、前半が4分の3を過ぎた時分に、待望の得点をあげる。敵マーカーの合間を縫うように抜けた奏風月歌姫・セレネ(a30868)から、トップ下【幻想】の蒼炎の戦姫・フィア(a05367)へパスが通り、彼女はツータッチで左サイドから中央へと流れ込む慧眼の静風・キルレイン(a12779)へキラーパス、【嚆矢】はシュートを放つと見せかけてひとりを交わし、ゴールキーパーとの一対一を制したのだった。
その後、冬の2組が後半戦の立ち上がりを攻め、一点を加える展開となった。
リードを奪いたい夏の8組は、ドリアッドの舞踏家・エレナ(a06559)から、ピッチ上でポジションチェンジを繰り返す【鶴翼】、翡翠色のレスキュー戦乙女・ナタク(a00229)へ長い距離を一挙に走るフィードが通る。「取られたら3倍返し+1」、と突破したナタクからシュート性のクロスが敵陣を貫き、こぼれたボールを朱焔心韻・オウリ(a15360)が確実に合わせてゴールを決めた。
だが、仲間たちから司令塔としての信頼を集める冬の2組の【舵取】が、困難な展開にも動じず、相手の中盤に生じた綻びを突く。浄火の紋章術師・グレイ(a04597)が何気なくはたいたボールは、敵陣中央に開いた空間をなんなく転がり、攻める前線のプレイヤーたちの足がかりとなっていた。この景は幾度となく繰り返され、その後、総力戦の末に終了間際の勝ち越し点をあげたのは、冬の2組の方であった。
結果――4対3で、冬の2組の勝利!
●第四試合 冬の12組VS秋の9組
バランスのとれた3−5−2の陣形で臨む冬の12組に対し、秋の9組は最後列を4バック、前線を3トップとする攻撃的なフォーメーションを敷いての戦いとなった第四戦、先制点をあげたのは冬の12組であった。
素早いダッシュから、中盤の中央でボールを保持した灼熱の意志・トキオ(a31065)が、左【鶴翼】の駆け昇る流星・フレア(a26738)へパス。なかへ視線を送った彼女は、クロスと見せかけて縦への突破をはかり、敵陣を深々と抉った。最高の好機を逸した夢見少女・アレン(a08849)のこぼしたボールを、星辰の爪牙・アンリ(a00482)が詰めて先制点を奪う。
前半戦、相手の固い守備に苦しめられていた秋の9組にチャンスが訪れる。ゴールを背にパスを受けた聖闘士・シシル(a00478)は、胸トラップから上体を左右に振ってコースを確認、右の【嚆矢】として疾風のごとく駆け込んだ青の蛇聖剣・ラーシュ(a32863)へパスを通す。折り返されたボールは、ゴール前に切れ込んだ緋煌妖華・マーク(a05390)がインサイドで合わせると見せかけた切り返しから、相手ディフェンダーを置き去りとし、チームの初ゴールとなった。
その後も秋の9組は、守備ラインの左端、【長矛】を務める特攻暴走巫女・チトセ(a30031)が見せる多彩なプレーを中心に、怒濤の攻撃を展開する。【幻想】に位置する凪し銀影・ナギ(a08272)は、時には影となり、時には煌めく白刃となってフィールドを駆け抜けた。だが、後方へ退いてゴールマウスに鍵をかける、天藍顔色閃耀・リオネル(a12301)を中心とする冬の12組の3バックを崩すことができない。
後半の終了間際、中盤の構成力を欠いた敵陣を、するすると駆け上がった【自由】の赤誠の武道家・フェリディア(a16292)が、まさしく間隙を縫うようなゴールを決め、冬の12組が待望の勝ち越し点をあげる。
結果――2対1で、冬の12組の勝利!
●ベスト8第一試合 秋の10組VS春の5組
4−3−3の攻撃的布陣を敷いた秋の10組に対し、春の5組は同じくスリートップの3−4−3で挑んだ一戦は、多くのゴールが期待された戦前の予想に反し、両者ともに砂を噛むような思いに囚われる、凍りついたかのようなゲーム展開を余儀なくされたのだった。
前半も終わり半分に差し掛かったころ、相手の鋭いシュートを眼光一閃、素早い足の運びからしなやかに身体を伸ばした歪の・アルベル(a11047)が防ぎ、【守護】として職責を果たすと、ルーズボールは雪月花の使徒・ミサオ(a27988)が前線へクリア、【舵取】として無尽蔵のスタミナを見せるひだまりの舞姫・レティシャ(a31140)の力強いプレーによって、秋の10組がボールを維持する展開となった。ボールは敵陣右サイドの奥深くへと転がり、追いついたのは青空遁走曲・ナル(a19332)ただひとり。敵守備陣が身体を寄せる前にグラウンダーのクロスがゴール前に供給されたが、残念ながら得点にはつながらなかった。
後半、芳香の医術士・ヨナ(a25570)からの指示を受けた村人プレイヤーから、中盤の底に位置する【舵取】騒奏疾駆・ソウ(a26879)へパスが通る。春の5組はそこから攻撃を組み立て、相手ゴールへ畳みかけるようにシュートを連続させたが、秋の10組の侍魂・トト(a09356)がゴールマウスに飛び込みヘディングでクリア、得点を許さないなどゴールを決めることができなかった。
幕切れは呆気なく、前がかりとなった春の5組ディフェンスラインの裏を突いて疾走した、橙玉は時に牙をむく・ククル(a31253)の爪先が弾むボールへとかろうじて届き、【守護】の脇をかすめるゴールとなったのだった。
結果――1対0で、秋の10組の勝利!!
●ベスト8第二試合 冬の1組VS春の3組
春の3組が3点を先制するという意外な前半戦となり、冬の1組はその後必死の反撃を試みるというスリリングな展開となったこのゲームは、春の3組擁する攻守の切り替えが早い中盤の構成力と、中盤の構成こそは敵わぬものの、ディフェンスラインならびに最前線において豊富なタレントを有する冬の1組が擁する個との戦いとなった。
サルバトーレやヒジキらに失点を許したものの、邪神を宿せし猫・ロキナ(a29568)のサポートを得た、光り受け熔けぬ翼求めし者・クルド(a11701)を中心とする冬の1組守備陣は、その後失点を許さず、前線へ鋭いフィードを展開させた。前線には、大会史上最高との呼び声も高い3トップが控えている。
ボールを足の裏に収め、左右に転がしたかと思うと、神話へと語り継がれるヒロイン・リーナ(a13062)は一挙の加勢で敵ディフェンダーを抜き去った。左の【長矛】、常時自動誤字スキルは集う・ラキア(a12872)がサイドへ駆け上がり、広がった中央のスペースへと切れ込むと、「ここで決めなきゃ女じゃな〜い!」とリーナは鋭いシュートを放った。3対1、得点差は2となった。
冬の1組はなおも攻め続けた。右サイドに張ることで、中央に比べてより多くの自由度を得た【幻想】のもももの錬金術師・アレス(a14419)が、中央へ蛇のように這うキラーパスを供給、仲間の得点を演出する。
さらに、【主戦】として前線で激しいチェックを続けた金輝の暁・ディリアス(a16748)から、シュート性のパスが敵ディフェンダーの足に当たってオウンゴール。冬の1組は劣勢をはねのけ、3対3のイーブンとして、試合を振り出しに戻したのだった。
勝ち越し点を狙う冬の1組の猛攻を、【防壁】借金王・ジークフリート(a35789)はその圧倒的なまでの高さでもってしのぎ、チームに反抗の気力を与える。そして、ボールは凜味恵風のましまろ・スフル(a35791)の足下へと転がった……。敵の中盤を、まるで無人のなかを進むように貫くと、少女は仲間と交錯してボールを預け、さらにワンツーを受け取ってゴール前へ。力を篭めて放たれたシュートは、相手ゴールキーパーの正面へ飛んだかと思われたが――爪先でコースを変えたサルバトーレが、ボールの行く末を見つめ……歓喜の叫びをあげたのだった。
結果――4対3で、春の3組の勝利!!
●ベスト8第三試合 秋の11組VS冬の2組
ダイヤモンド型の4−4−2でこの試合に臨んだ秋の11組だったが、【幻想】をつとめる毒電波の衛生官・ルリ(a36273)の奮闘もむなしく、先の死闘を制した冬の2組の巧みな試合運びの前に、1対0とリードを奪われたまま後半を迎えてしまう。
後半戦に入ってからも、可憐な雪華と鈴の華を護る紅影・クロノ(a19669)を中心とするディフェンスラインは敵チームの猛攻に晒され、彼の獅子奮迅の戦いも虚しく、秋の11組は2点目となるゴールを決められてしまった。
反撃の旗手となったのは、中盤の底からボールを奪うなり、力強い直線ドリブルからロングシュートを放った蒼闇の魔剣士・ラディアス(a10323)だった。惜しくはゴールとはならなかったものの、敵のクリアは、忽焉の赫・トゥース(a11954)がいち早く拾い、秋の11組のボールとする。彼はゴール前を一瞥すると視線を足下へと落とし、皮のボールの側面をこすりつけるようにして蹴り上げた。
左サイドから伸びた弧に合わせ、目にも鮮やかな青髪の少年が、その長躯を宙に浮き上がらせる。他のプレイヤーたちに比べ、頭ひとつどころではないアドバンテージを得た【主戦】青嵐の聖盾・アルタ(a36559)は、クロスボールをヘッドで折り返した。ゴールを決めたのは、アルタの腰ほどまでしか背丈のない小柄な女性、テストで三点笑顔は満・ティエン(a33937)だった。弾むボールへ身体の位置を合わせ、彼女は身を投げ出すようにしてヘディングシュートを放ち、敵ゴールの右隅へと転がる得点を決め、自らも歓喜に湧く仲間たちの輪に飛び込こんだ。
だが、秋の11組の反撃もここまで。これまでの必死のプレーによって力尽きた後半も終了間際、攻撃の機会を虎視眈々と狙っていた冬の2組【主戦】、嵐舞・ラクト(a33788)に強引な突破を許し、追加点を与えてしまったのだった。
結果――3対1で、冬の2組の勝利!!
●ベスト8第四試合 春の4組VS冬の12組
鮮やかな先制点を飾ったのは、冬の12組【幻想】連星の翼・アルビレオ(a08677)だった。両サイドの【嚆矢】までもが守備にさがり、ダイヤモンド型の中盤を助ける春の4組の支配を打破したのは、彼の激しい運動量があってのこと。冬の12組のゴールを【守護】として守る、星舞い落ちる夜・マイヤ(a28554)の好守から、中盤の無変身忍者・ハヤテ(a21057)が【主戦】のアンリへ山なりのクロスを供給、マーカーを振り切ったアルビレオが右足を振り抜いて、ゴールの左隅上部に突き刺さるシュートを決めたのである。
だが、春の4組もこのまま黙ってなどいない。センターラインに若干の不安を抱えながらも、【守護】となった蒼海の剣諷・ジェイク(a07389)を中心に敵から主導権を奪うと、両サイドに【鶴翼】あるいは【嚆矢】として配された4名が、前後左右を激しく入れ替わりながら、寄せては帰す波のような攻撃を仕掛けたのだ。
中盤の中央でボールを受けた桜花の舞姫・フィオーレ(a07880)
は、【幻想】らしい踊るような足捌きでボールを左サイドへと送った。ダイレクトパスに反応したノソリンの瞳を炎に燃やせ・ルシア(a35455)は、丁寧にボールを受け取り、【主戦】目がけて力強いクロスをあげた。流剣・ロック(a20544)のシュートは、一度敵に阻まれたものの、身体を浴びせかけるようにして頭を突きだした彼の執念が、同点のゴールを呼びこんだのだった。
「スパーのネギ……」
そう、叫んでしまいたかったが、ゴールはまだ遠く、嘲笑みの詭導師・ウィン(a08243)はパス交換から前のスペースへと飛び出し、そこからグラウンダーのクロスを放った。【主戦】が相手方の【防壁】とやり合う傍らをボールは過ぎ去り、左サイドから中央へと切れ込んできた紅蓮の暴れ姫・ディン(a24435)が、遠目からの大胆なミドルを決める。
その後、試合を支配したのはリードを奪った春の4組だった。彼らは冬の12組に加点を許さず、最少失点差を守り抜いた。
結果――2対1で、春の4組の勝利!!
●ベスト4第一試合 秋の10組VS春の3組
村人プレイヤーをひとり含む春の3組がここまで勝ち上がってきた要因として、【守護】のロイズェ、【舵取】のマッシロ、【幻想】のヒジキと続くセンターラインの確かさがあげられるだろうか。また、守備ラインの左端を担う水色の甘党エンジェル・ハニー(a31554)を中心に、ハートのあるプレーがラインに浸透し、相手に得点を許さなかったことも大きい。
一方、すべてのポジションを冒険者で固めた秋の10組には、常人とは懸け離れた身体能力があり、前がかりな4−3−3の布陣も彼らに向いていると思われた。だが、惜しむらくは攻撃的な【舵取】として好守をリードしたトト以上に安定したプレーを見せる者が他にはなく、彼が抑えられ、消耗した後半にチームの戦力が著しい低下を見せたことだろう。
先制したのは、秋の10組だった。左サイドから度々の突破を見せた風雅の如し舞姫・ヴィオラ(a31688)を見習い、自らも中盤の位置にまでポジションをあげた右の【長矛】、緋き夢幻の騙り手・ラクナク(a34086)がボールをダッシュ、一気に前線へと駆け上がった。右サイドに張りだしていた【主戦】のメロディと身体を交差させると同時に、彼女の足下にボールを預けたラクナクは、そのままゴールへの最短距離を進み、ゴール正面から放たれたトトのスルーパスに反応した。ボールはゴールのニアサイドに突き刺さった。
チームの劣勢を救ったのは、春の3組の【幻想】、セイレーンの少女スフルだった。小さな身体を、まるで回転する駒のように走らせ、細かなパスを繋ぎ、前線の右サイドで攻めの形を作ってゆく。左右に振られた相手【守護】の足下を、緩やかに抜けるシュートを放ったのはレスタァである。これで同点。
春の3組の最後尾、超あんこ熊王・ティータ(a13708)からはじまったパスの流れに、中央に人を集めた秋の10組の中盤は乱されてしまう。やがてゴール前へと運ばれたボールは、足を目一杯に伸ばしたサルバトーレの甲に小さく弾み、その瞬秒の後にはありったけの力をこめて撃ち抜かれ、逆転のゴールとなった。
結果――2対1で、春の3組の勝利!!!
●ベスト4第二試合 冬の2組VS春の4組
後に、事実上の決勝戦とも表されることとなったこの一戦は、サイド攻撃によって強敵を沈めてきた春の4組と、フィールドの中央を完璧なまでに支配してきた冬の2組という、奇しくも異なった特色を持つ2チームでの戦いとなった。
先制点を奪ったのは春の4組。守備ラインの紋章術士ビジネスウーマン・シャルム(a24852)からのアイコンタクトを受け、パスを受け取ったストライダーの牙狩人・サミル(a35624)が果敢に前線へと攻め上がる。明日はいつでも晴れのち晴れ・マイティ(a15944)がバランスを取って位置を下げる前方では、サイドアタッカーが広げられた鳥の翼のように、両サイドに張っている。ゴールへ身体ごとボールをねじこんだウィンに続き、【主戦】のロックがその役割を果たし、リードを2点と広げた。
冬の2組が動いたのは、前半も終了間際となってからだった。かろうじて敵の突破を止めた勇猛なる騎士・カイト(a34175)から、ボールはグレイを経由し、守備ラインから駆け上がった【自由】、月夜に捧ぐ夜想曲・クレス(a16646)の足下へと至る。手薄な的中番の中央を突破した彼は、視界の右隅を過ぎった黒髪の持ち主へと、丁寧なグラウンダーのパスを送った。
右の【長矛】紅いブドウ・ミン(a20429)は、背を敵【防壁】へと預ける格好から反転、ゴール前へと切れ込んだキルレインへライナー性のクロスを合わせた。キルレインは右足を伸ばし、空を滑るようにボールへと向かった。右のアウトサイドで捉えられたボールは、ゴールの右隅へと決まった。
後半の立ち上がりはお互いに探り合うような時間が続いた。冬の2組で【守護】を務める女性、守護者・シャーナ(a14018)が遠目から放たれたドライブ性のシュートを弾く。緋閃の孤狼・シャールヴィ(a12294)はこぼれたボールに追いつき、力一杯にクリアするのではなく、丁寧なパスを試みた。左の【長矛】永遠の成長途中・リューラン(a03610)がそれを受け取り、グレイが地を這うような楔を放つ。神出鬼没のプレースタイルで敵守備陣を脅かす【幻想】、蒼炎の戦姫・フィア(a05367)がトラップから反転、即座にキラーパスを敵守備ラインの裏側へと放った。ゴールを奪ったのは、またしてもキルレイン。ボールはゴールのファーサイドへと転がされ、【守護】の指先をかすめながらもゴールへと転がり込んだのだった。
戦いの帰趨を決したのは、効率的な攻めを見せる冬の2組の左サイドの【嚆矢】キルレインを、永遠の平和を光に誓い煌く紫眼・サク(a29107)がシャルムとともに止めた、そのひとつのプレーであたのかもしれない。前線での攻めの多くの人数をかけない冬の2組は、すばやく引いて守備を固めてしまう。だが、右の【鶴翼】として仲間を信頼し、プレーのなかから消えていた終焉の・テルミエール(a20171)を捕まえることまではできていなかった。
テルミエールからウィンへ、ロックが放ったシュートが放物線を描いて落下した先には、頬を高揚させ、右足を大きく振りかぶるマイティの姿があった。力任せに放たれたシュートは無回転のままゴールマウスへと迫り、うなるようにしてホップすると、ひしゃげた皮の球はそのまま、決勝点のゴールとなった。
結果――3対2で、春の4組の勝利!!!
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