<リプレイ>
●地獄への道行き 〜ユリシア護衛部隊
エルヴォーグ制圧戦は、地獄の第1階層エルヴォーグの1/3を制圧するという大勝利に終わった。
当初の目標には達しなかったが、重要拠点であるエルヴォーグ中央城砦を確保できた事を考えれば、充分以上の成果であったろう。
だが、この勝利は新たな課題を生み出した。
この新たに得た地獄の領土を、いかにして維持するか……。
それは、とても難しい問題であった。
地獄の王子である麗冥帝・リゥドゥラと、地獄の軍師たる天恵暗鬼・マルヴァスを敵にまわしての戦いを勝利に導く。
そのための、一つの方策が、霊査士を含めた軍勢の進軍であった。
そして、今、死者の祭壇の前には、エルフの霊査士・ユリシアを守るべき399名の冒険者が集ったのだった。
「お主を傷つける訳にゃあ、イカンからなぁ」
甲斐の・チアキ(a07495)は金髪のズラを被って、ユリシアの影武者となりながら、ユリシアに君を守るを誓うをかけようとした。
かけようとした……が。
「あなたは、帰りなさい」
と冷たく突き放されてしまった。
「どうしてなのじゃー!!」
そう叫ぶチアキの両脇を、今度は潤心の治療師・ダフネ(a05226)と白銀の閃光・ユフィリア(a16892)が抱えあげる。
「重傷なのですから、大人しく下がりましょう」
「重傷者が作戦に参加しても邪魔にしかなれませんわ。同胞にこれ以上の負担を掛けないでくださいな?」
こうしてチアキは、第3作戦で重傷を負ったダフネとユフィリアに連れ去られていったのだ。
勿論、連行されたのはチアキだけでは無い。
「重傷者128名、これより撤退いたします」
そう言ったのは、重傷者を率いての撤退を作戦提案した銀隷・ルシェル(a16943)だ。
そのルシェルにユリシアは微笑を浮かべてこう応えた。
「ルシェル様、重傷者の皆さんの事を宜しくお願いしますね」
と。
それを聞き、ルシェルは背筋を伸ばしてピシッと敬礼する。
重傷者を無事に退却させる。それは、とても重要な役割なのだから。
「あれは別として、影武者という作戦は悪くないわね」
重傷者の一団が撤退したあと、神眼の護・リューディム(a00279)は、こんな事もあろうかと自作していたユリシアの衣装を着てこう言った。
リーダーを欠いた【ユリしね】部隊は、どうやらリューディムを中心として再編されたらしい。
「ボクも影武者やるんだよ」
そう続けたのは、風使い・リサ(a37897)。リューディムがあたかも本物のユリシアであるかのように振舞うので、リサは『影武者を使って、目立たないように隠れているユリシア』という設定で影武者参加。
本物のユリシアはユリシア然としているので、護衛部隊には、本物のユリシアに見える存在が2つと、正体を隠して部隊にまぎれているユリシアに見える存在が1つある事となる。
これは、ノスフェラトゥの斥候がいた場合でも、裏の裏を取れる編成である。
更に前方では、
「こんにっちはー、ユーリィでーっす♪」
と芝居がかった雰囲気で笑顔を振りまく偽ユリシアなどもいたが、これはご愛嬌だろう。
そして300有余名による進軍が開始される。
既に、他の部隊が死者の祭壇の地獄側を制圧している為、直接エルヴォーグに移動できるのは、霊査士をつれての移動には大きくプラスとなっていた。
途中、アンデッドによる襲撃が散発的に起こったが、軍団と呼べる規模の冒険者の壁を乗り越えてユリシアに迫る攻撃はありえなかった。
特に、先の戦いでも戦功が高かった紅十字や、城壁隊の働きは目覚しく、ユリシアとユリシア護衛部隊はほぼ無傷でエルヴォーグ中央城砦へと入城することとなった。
そして、ユリシアは【ユリしね】部隊の面々に護衛されて、城壁に登ると、城門前に集った勇者達にこう告げた。
「皆様のおかげで、無事、到着する事ができました。地獄との戦いは今後も長く続くかもしれません。しかし、皆様ならば勝利をつかむ事が出来ると私は信じています。これからも、力をあわせて行きましょう」
城壁の上から、ユリシアは微笑み。そして、彼女を護衛した冒険者の中から歓呼の叫びがあがる。
この道行きは、小さな一歩であったかもしれないが、地獄の戦いの大きな転機になるかもしれない。
少なくとも、その場にいた冒険者達の何人かは、そう感じたのだった。
●紫の闇に沈むアンデッド
一方、一部の冒険者達はアンデッドの残党と死骸の破壊の為に、地獄門へと集まっていた。
難民として集まり、同盟の冒険者達に助けを請うていた奉仕種族達は、戦の最中に文字通り蹴散らされ、粗末なテントも僅かな持ち物も残して逃げ散ってしまっている。
物悲しげに散乱する、踏みしだかれたテントの残骸を後に、冒険者達は街道へと踏み入り。
やがて小隊に分かれて、占領した地域のアンデッドの掃討を開始した。
「この骨……動いています」
【閃剣】部隊の僚友達と、地獄門付近の街道に出没するアンデッドを掃討しつつ巡回していた天舞光翼の巫女姫・ミライ(a00135)が、同じ【閃剣】部隊の傷だらけの・ロマン(a34353)を振り返る。
「アンデッドって事か」
ロマンは無造作に、今にも噛み付かんと歯を鳴らしている頭蓋骨を踏み割った。街道の付近に出没するアンデッドは少なかった。或いは、アンデッドが徘徊しない場所を選んで街道を引いているのかも知れない。
他にも動く者は無いかと気を張り詰めていたロマン達の耳に、足音が届く。息を切らせて戻って来たのは、先行していたエルフな紋章術士・サリナ(a01642)達だった。街道から幾分か離れた場所でアンデッドの小さな群を発見したらしい。ロマンとミライは頷き交わし、仲間達を伴って駆け出した。
骨の山に、骨を絶つ異音が響く。剣を振り上げ、振り下ろす。ただそれだけの地道な作業を黙々と続けていたストロベリーフィールド・アルミナ(a17367)は、骨盤を打ち砕いた骸骨の、経た年月を示すかの様に黄変した四肢がびくりびりと痙攣するのを見て初めて、それがアンデッドなのだと気付いた。
「もしかして……」
アルミナは自分が踏み締めている、骨の山から駆け下りる。仲間の冒険者の元に戻りかけたアルミナを狙う様に、よろよろと近寄って来た四足獣のアンデッド、穏なる銀鱗・ヴァイナ(a15850)が鉄鞭で屠った。アンデッドの足が砕けた事を確認して立ち去ろうとしたヴァイナとアルミナは、微かな物音に振り返り、眼前の光景に目を見開いた。
倒したばかりのアンデッドが、ヴァイナ達が離れた途端、身を捩じらせてごろごろと、何かに誘われる様に骨の小山へ向かったのだ。そのまま山まで辿り着き、寄り添う様に動かなくなった。
「小山の死骸の殆どがアンデッドの様ですね……何らかの理由で、骨が集まった場所に引き寄せられている様ですが」
「そうだな、自分達を襲って来ない。大概、アンデッドというもの生きてる奴等に群がるものだったと思ったが」
手近な白骨の背骨を短剣で割り砕いた銀色の盲狼・クレセント(a27149)が、立ち上がって周囲を見渡す。見た所、何か変わった物がある訳ではなかった。終着の地エルヴォーグの何処にでもある荒野が広がり、何処にでもある骨の山――アンデッドの山があるだけだ。
「理由は分かりませんが、骨の山がある場所に引き付けられるからこそ、この地獄にも人が住む余地が出来るのでしょうね、きっと」
でなければ、ノスフェラトゥは兎も角、奉仕種族達が生き延びる事は不可能に近いだろう。
翼と共に在ることを誓う武人・フィロ(a12388)はそう肩を竦めて、自分たちが立つ僅かに隆起した高台の頂から、紫の荒野の向こうに黒々とそそり立つ一際大きな骨の山と、開けた何も無い場所を縫って伸びる細い街道を見遣った。
「アンデッドが現れました!」
別の大きな骨の山の裾で、アンデッドの捜索と死骸の破壊に勤めていた冒険者達が、邪風の黒騎士・ツキト(a02530)の警戒の叫びを聞き、一斉に走り出した。
骨の山が崩落する音が響く。紫の空を切り取って黒々と稜線を浮かび上がらせる、連綿と続く死骸の小山の中腹を突き破って、3つの頭を持つ獣型の巨大なアンデッドがのっそりと現れた。
【月陰】部隊の戦友達を率いてアンデッドを牽制する様に取り巻くツキト。そうと感じさせない動作で、素早く踏み込み達人の一撃を獣アンデッドの首筋に叩き込む。
傷口を重ねて抉る様にして、終わり無き闇・クライヴ(a25280)が黒炎覚醒で増強されたニードルスピアを叩き込んだ。行動を共にしていた天に向かう花・リツカ(a20633)が、引き絞った弓からライトニングアローを打ち出し、機を合わせて白鴉・シルヴァ(a13552)が、彩雨流千撃の・チヅキ(a38104)と共にアンデッドの前へと躍り出る。
骨が無造作に組み合った様な、獣アンデッドの爪先が振り上げられ、辺りの冒険者を薙ぎ払う。死臭を孕んだ風を率いて迫るアンデッドの爪。受け損ねたチヅキの腕から血が噴き出し、骨の山に滴り落ちた。
「回復するデス!」
赭色邪竜・ギバ(a27654)が凱歌を歌い上げる。歌は癒しの力となり、傷付いた者達を包み込む。
打ち掛かり、爪に屠られ、術を解き放ち、癒されてまた立ち上がる。
現れたアンデッドは確かに強力だったが、熟練の冒険者達にそうそう敵うものではない。
短いが緊迫した攻防の果て、遂にアンデッドの体が揺らいだ。
「もう一度、眠りを。どうか……」
祈るようにアンデッドを見据える海底撈月・ビルフォード(a15191)眼前で、白光が収縮して慈悲の聖槍を成す。目線一つで静かに放たれたそれが、獣アンデッドを貫いた。
3つの頭が咆哮もなくがくりと落ちる。
獣アンデッドはやがて膝を折り、崩壊してまた元の骨の山の一部となった。
戦いの影響で崩落した骨の山を見下ろしていた渡り鳥・ヨアフ(a17868)は、目の前の光景に息を呑んだ。山裾に転がった死骸の群が、ずるりずるりと移動して骨の山へと戻って来ているのだ。
アンデッド達は骨の山まで辿り着くと、動きを止めて唯の死体の如くに横たわる。
「骨の山から離れた場所なら比較的安全って訳か……」
街道に殆ど骨が転がっていない理由に思い至り、ヨアフは一人呟く。
アンデッド溢れる終着の地エルヴォーグでは、その情報は何よりも貴重だった。
●グリモア制圧戦
終着の地エルヴォーグにもまた、他の大陸と同じ様に無数のグリモアがあると言う。
それを制圧する事も、戦いに勝利した冒険者達の急務と言えた。
「さて……幾ばくか残党が残っていればいいのですが……」
敵との遭遇を心待ちにする様に薄く笑い、【戦塵】部隊の鈴蘭谷の・プリムラ(a14092)や星降る夜の翼・ルミリア(a18506)と東を目指す、死徒・ヨハン(a04720)。
「アンデッドと遭遇しても冷静に。一つでも多くのグリモアを制圧しましょう」
蒼風の守護騎士・アルトリア(a30380)が【月華】部隊の、蒼のせせらぎ・アクア(a37892)や仲間達に呼び掛け、エルヴォーグの南方へと出発する。
それを皮切りに、更なる力を求め、冒険者達はグリモアを制圧すべく各所へと散って行った。
開け放たれた扉がきいきいと物悲しく鳴っている。刈り取り手を失った畑では不健康な色味の野菜が、萎びた葉を物悲しげに風に揺らしている。何処かへと連れ去られてしまったのだろうか。つい最近まで人が住んでいた気配が残る無人の村を探索する大地を翔ける蒼き翼・カナメ(a22508)。
「グリモアがあったぞ!」
その声に、周囲を警戒していた告死天使・ハデス(a24671)と全てを焼き尽くす紅蓮の炎・カキョウ(a25993)が駆け寄り、カナメが立っている石組みの粗末な祠の中を覗き込んだ。
粗末な祠の中に、小さな従属グリモアが1つ。
覗く者の顔を映しこんで、柔らかに輝いていた。
また別の街では恋する女将・ヴィオラ(a31688)が、グリモアを発見していた。
「これがグリモアどすかぁ」
街の中心で見つけたグリモアに指を滑らせるヴィオラ。美しき猛き白百合・シキ(a31723)が儀礼用長剣の切っ先で軽く叩くと、グリモアは透明な音を立てて剣を拒む。それは確かに、従属グリモアだった。
グリモアは、村や街の中心、或いは祭るよう建てられた祠の中、道が刻まれた岩山などに存在していた。
発育の悪いどこか病的な感じのする木々を押し分け、棘だらけの低木を切り払って森を進む轟天乱馬・アイラザート(a13992)。グリモアを守る敵の存在を警戒して慎重な足取りで進むアイラザートの後を、矢張り周囲に注意を払いながら付いて来ていた、蒼の旋律・キャルロット(a38277)が、茂みの向こうに水を思わせる煌きを見つけて足を止めた。
「グリモアよ」
「……本当ですなぁ〜ん」
幸いな事に特に戦力は配置されていないようだった。可能な限り音を殺しながらグリモアに近付き、絡み付いた根を押し退けた2人は、やっと発見したグリモアに手を添わせて笑い合った。
「何もしません、だから……」
「信じられるか……俺の娘を殺したくせに! まだほんの子供だったのに……っ!」
子供だったのに……汚らしい身なりの男がそう呟き、舌先三寸忍者・リツキ(a12603)を、憎しみと涙を溢れる眼差しで見据える。肩口の傷と、全身から滲み出る脅えの気配が、一層哀れだった。
グリモアを探して訪れた村。傷付き眠る男を見つけて、傷の様子を見ようと伸ばした手は振り払われた。
そして今、男は背を見せると殺されるとでも思っているのだろう、冒険者達を睨んだままじりじりと村の外へ後退りしている。
男を説得しようと試みたが、誰の言葉も男の心の表面を上滑りするだけだった。
「せめて、治療だけはさせて下さい」
移し色の医術士・ユファ(a27054)がヒーリングウェーブを施す。急に痛みが引いた事に驚いた男は、傷口とユファを見比べる。しかしそれでも男の不信が和らぐ事は無く、冒険者達はただ成す術を見出せないまま、男が走り去る足音を聞いていた。
●エルヴォーグ中央城砦にて
「ただの石の橋……ですか」
「だな……」
チーム【虚龍】を率いる邪竜の巫女・カムナ(a27763)は、亀裂に掛かる橋の検分を終えて立ち上がる。同じチーム【虚龍】の士魂・トワ(a33691)も頷き、軽く橋を拳で打った。
何の変哲も無い、重厚な石造りの橋だ。エルヴォーグ中央城砦もまた、ノスフェラトゥの戦いで見かけた骨を組んだ物では無く石を組み上げた物だった。
カムナはチーム【虚龍】の面々を促して、リゥドゥラ軍の側の亀裂に沿って巡回を始める。
「特に動きは無いようだな」
「ええ、良かったです」
紫焔刀の柄から手を離し、背を伸ばす紫焔揺らめく宵闇の虚空・ルフェル(a07584)。巡回路が重なり、偶々行き逢った赤光の竜姫・ロート(a11026)が、対岸を見て物柔らかに頷く。
リゥドゥラ軍の領地である方角には、ただ連綿と紫を帯びた大地が広がり、野を行くアンデッドも空を飛ぶ骨鳥も存在しなかった。「そろそろ交代の時間だ、戻るか」
【六風旅団】部隊の面々を促し、詰め所へ足を向けるルフェル。砦からは少し早い夕餉の匂いが風に乗って漂って来る。
「お疲れ様です」
【日の出亭傭兵部隊】の仲間と共に帰路を辿っていたロートが、【薫柚隊】の虚実不明の有象無象・ウィルヘルム(a11356)を見つけて手を上げた。
「ああ、お疲れ様。今から出てくるよ」
ひらひらと手を振り返すウィルヘルム。砦から出てきた冒険者達は皆、ランドアースとは異なる異質の大地を前にすると、緊張の見える引き締まった表情を浮かべる。
ここが未だ敵地であり、死地である事を忘れる者はいなかった。
似たような光景は、エルヴォーグ中央城砦のマルヴァス軍側でも繰り広げられていた。
「どうですか?」
「特に異常はありませんでした」
めろんなパティシエ・ミルテフィーナ(a15361)を伴って巡回していた朱焔心韻・オウリ(a15360)は、マルヴァス軍側の亀裂を逆に辿って来た制圧せし翼・クウェル(a46073)と行き逢い、短く情報を交わす。
落されたと思しき橋の周辺にも、敵の存在する気配は無く、マルヴァス軍は沈黙を保っていた。
何れ破られる物であるにしろ、長い事戦闘の緊張に晒され続けていた冒険者達にとっては、マルヴァス、同盟両軍に訪れた一時的な休息は有難い物だった。
巡回を終えて、交代の者達を挨拶を交わし【黎明】部隊の者達と詰め所へ戻った白金・シフォーネ(a05026)は、詰め所の扉から溢れ出す、冒険者らしい活気に満ちた喧騒と食事の匂いに、ほっと溜息を漏らす。
最前線という事もあり、のんびりと休息を楽しむ、という訳にも行かないが、陰惨なこの場所では料理得意な者が食事と水と、場合によっては少量の酒があるだけでも随分な慰めになった。
「お疲れ様です。夜ご飯、まだまだ沢山残ってますよ」
パンを片手にジュエルソードを携えた幸せを求めし白き鷹使い・シャンナ(a00062)が、シフォーネに笑い掛け、それから【白き鷲】部隊の仲間達と、決意と緊張に満ちた表情で外を見据えて歩哨に出て行く。
背を見送って、シフォーネは急ごしらえの食堂へと足を向けるのだった。
●エルヴォーグ中央城砦作戦会議
「まず難民についての報告があります」
今後の作戦方針についての会議の口火をきったのは、楽風の・ニューラ(a00126)であった。
彼女の報告によれば、死者の祭壇前に集まっていた難民達は既に離散した後であったらしい。
「彼らから見れば、同盟諸国は恐ろしい敵に見えたのでしょう」
それは無理からぬ事だが、対応策が無い訳ではない。
「離散した難民達は、無人となった村や町などに隠れているようです。彼らに対して、どのような対応をするかは、今後を占う上で重要でしょう」
ニューラの意見に、新感覚弄られ系魔法少女・クリスティナ(a00280)と濃士・ヒカリ(a00382) が賛意を表する。
民の信頼を回復するのは重要であるし、この地域のグリモアを領有した以上、彼らは『列強種族ノスフェラトゥの奉仕種族』では無く『同盟諸国の護るべき一般人』なのだから。
「やはり、今の内に護衛しながら死者の祭壇内部を突破して地上に避難させておくのはどうでしょうか?」
そう提案したのは日常からの逃亡者・カッセル(a16822)。
この意見には賛同者も多かったが、この作戦にはユリシアが反対意見を出す。
「一般人をドラゴンズゲートで移動させるのは、とても危険な事です。100人のうち半数を連れて行ければ成功……となるかと思います」
目の前に死の危険があり、その危険を避ける為に止むを得ずという判断ならば話もわかるが、特に命の危険の無い一般人を命の危険に晒す事は、冒険者としては正しい行為とは言えないでしょう。
そのユリシアの説明に、カッセル達も頷くしかなかった。
アンデッドに命令を出せるノスフェラトゥが仲間にいれば話は別だが、現状では、地上への避難は難しいのだろう。
更に、難民の中にノスフェラトゥ側のスパイやアンデッド等が混ざっているのではという指摘もあり、会議は紛糾する事となった。
途中、疲れた頭には甘いものという事で、どろりとした液体が配られるなどした長時間の会議の結果は、灰緑の魔術師・グリュイエール(a28333)、守人・ニザーム(a28931)、幸福の護り手・バニット(a34106)などが主張した、エルヴォーグの同盟領内での難民保護という事で決着した。
特にグリュイエールらが提案した『エルヴォーグ冒険者が行っていた奉仕種族への保護』を念頭に施策を行うという意見は、難民達にも受け入れられやすいものだったろう。
ノスフェラトゥと違って、アンデッドを従える事が出来ないので、そこは冒険者が力を振るうしか無いのだが。
また、離散した難民については美白の歌姫・シュチ(a42569)らの意見に従って、彼らが既に『同盟諸国の一般市民であり奉仕種族では無いのだ』という方向で呼びかけをして、誤解を解いていこうという事になった。
これに加えて、地上からの補給物資の搬入や、地獄で得られる食べ物などについても話し合われたが、当面の間は、幸せの運び手に頼ることになるだろうという結論となった。
輸送に戦力を割かれるのも問題であるし、地獄の食料を徴用するのは難民達に誤解を与える可能性があるという理由だった。
そして、最も重要な今後の軍事情勢については、リゥドゥラ王子の勢力に対する対して交渉を行うべきでは無いか? といった意見が多く出された。
この意見については、やはり、リゥドゥラ王子の勢力に最も詳しいアンサラー護衛士団の判断にゆだねるという事で決着した。
もし、リゥドゥラ王子の勢力との交渉を行う場合は、アンサラーの護衛士が向かうことになるだろう。
逆に、アンサラー護衛士団が交渉は無益だと判断するならば、行わないのが正しいだろう。
もともと、王妃勢力に対して離反する意志をもっていなかったリゥドゥラ王子が、マルヴァスの勢力の目と鼻と先で同盟諸国と交渉を行う可能性は高くは無いのだろう。
会議は長時間に渡ったが、それでも、なんとか結論らしきものが見えてきていた。
少なくとも、当面の目標には充分であろう。
そして、会議の最後にユリシアからの重要な霊査結果が報告された。
「ノスフェラトゥ軍は、私達同盟諸国の軍勢が、この城砦より主力を引き上げた所での全面攻勢を考えているようです」
と。
それを防ぐ為には、状況が打開されるまでの間、この城砦に駐屯し続ける必要があるのだという。
「霊査により、この城砦にどれだけの冒険者がいれば、ノスフェラトゥ軍が攻勢を控えるかは判りました。まずは、この城砦の防衛をしっかり行い、それ以外の行動を行っていきましょう」
中央城砦の防衛に必要な人数は400名。
それ以下となれば、ノスフェラトゥ軍の全面攻勢が始まってしまうのだ。
だが、多ければよいという事でもない。
もし、400名を大幅に超える大兵力が集まれば、危機を感じたノスフェラトゥが下層の地獄からの援軍を召集すかもしれないからだ。
「少なくとも難民を安全に保護するまでは、このにらみ合いの状態を維持するべきでしょうね」
ユリシアの言葉に、会議に参加した冒険者達も同意する。
仮に、同盟諸国が再侵攻をかけるにしても、方針の決定や作戦の準備には相応の時間が掛かるだろう。
にらみ合いを続けることは、この時間を稼ぐ事にもなるだろう。
「しばらくの間、この城砦の護りを宜しくお願いしますね」
ユリシアはそう言うと、冒険者達に一礼した。
<参加作戦>
エルヴォーグ占領地のアンデッド掃討を行う 783
エルフの霊査士・ユリシアを護衛してエルヴォーグ中央城砦へ 399
エルヴォーグ中央城砦でリゥドゥラ軍側を警戒 376
エルヴォーグ中央城砦でマルヴァス軍側を警戒 396
エルヴォーグ占領地でグリモアの確保を行う 658
作戦立案を行う 108
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