<第4作戦:反抗作戦を撃破せよ 〜中央城塞死守〜 第2ターン>


■参加作戦選択解説

(1)エルヴォーグ中央城砦の防衛を行う
 必要人数は400名です。400名以下の場合、襲撃が発生する可能性が高まります。あまり人数が多いと、敵側を刺激して敵戦力の増強を招いてしまうかもしれません。

(2)エルヴォーグ中央城砦でユリシアの護衛任務につく
 ユリシアの護衛につきます。城砦の中にいるので、少数の護衛で充分でしょう。

(3)避難所の作成・維持・難民への呼びかけを行う
 今回作戦提案で提案された難民に関する施策を行います。安全な場所を作り、離散した難民達を安全に保護するのが目的です。

(4)引き続きエルヴォーグ占領地のアンデッド掃討を行う
 アンデッド掃討には終わりは見えてきませんが、少しでも数を減らす事が重要でしょう。

(5)今後の作戦方針について提案する
 今回の会議を踏まえて、新たな作戦方針を提案します。


 

<リプレイ>


●会議の間
「今最も重要かつ早急な対処を必要とするのは物資補給ラインの筈だ」
 エルヴォーグ中央城砦。
 かつては、この砦を護る護衛士達が会議したのであろう部屋には50名程の冒険者が集い、今後の方針について話し合いを行っていた。
 護衛士団長の位置に座するのは、エルフの霊査士ユリシア。
 その彼女とそして周囲の冒険者達に大して訴えかけるように漆黒眼・イゥロス(a05145)は、補給線の確保の重要性を説く。
 地獄という敵地の中に拠点を構える以上、補給線の確保は最重要なのは当然の事で、イゥロスの言葉に反論する者はいない。
 食料は、当面は幸せの運び手で間に合わせるとしても、補給線の安全が確保できていなければ、いざ戦闘になった時に、同盟諸国の冒険者達が各地で分断されて各個撃破されてしまう事態もありえるのだ。

「食料もそうだけど、橋の修復も重要だね」
 そう発言したのは、色彩を纏う影法師・グラーティア(a08565)。
 現在、リゥドゥラ王子の勢力側の橋は健在だが、マルヴァス卿の勢力側に通じる橋は破壊されている。これを修復しない限り、マルヴァス卿の勢力側へ攻撃を仕掛けるのは難しいだろう。
 現在の状況は、マルヴァス卿の勢力にとってのみ有利な状況になる。
「マルヴァス側への崖の幅、どれ位あるんですかね?」
 と問うたのは、超時空戦闘用可変型巨大・シシャモ(a18361)。
 ロープを渡すなどして少人数の移動は可能ではという意見については、確かに可能だが、非常に危険だろうとユリシアが答えた。
 たとえば、どこでもフワリンを使えば、ゆっくりであるが断層を越える事が出来る。
 途中で攻撃されれば一巻の終わりだが、可能か不可能かといえば可能だ。
 だが、向こう岸で敵に襲われた時、どうやって戻ってくるかは非常に難しい。
 長いロープを利用して簡易の橋を作ったとしても、そのような橋は簡単に壊されて、渡っている途中の冒険者の命が危うくなるだろう。

「2つの橋の確保こそエルヴォーグ制圧の為に必要不可欠という事だな」
 桐一葉・ルカ(a05427)は、そう言って腕組みをする。
 現在確保しているリゥドゥラ勢力側の橋に加えて、破壊されたマルヴァス卿側の橋を確保しない限り、エルヴォーグの完全制圧は難しい。
 ルカの言葉は、現在の状況を正しく言い表していただろう。

 だが、そこに至る道は厳しいものであった。
 ノスフェラトゥであれば、地獄で最もありふれた建材である『アンデッド』を使い、短期間で必要充分の橋を掛けられるだろう。
 だが、同盟諸国にはアンデッドを建材として使いこなす術は無いのだ。

「まずは材料の確保と、その材料で可能な橋の建て方について考える必要がありそうですね」
 月を宿す演劇の舞姫・シャナトラ(a08991)は、紙にさらさらと一つの図を描いて見せながら、そう発言する。
 彼女の絵は、向こう岸まで届く数十メートルの高さの塔を綱で支え、それを倒す事で橋を架けるという物だった。
 過去の記録では、巨大な記念碑などを建立する為に使用された事があるという工法だったが……。

「倒れた際の衝撃に耐える素材を確保するのは不可能かと思います。ただ、充分な準備をする事で、工事自体を一瞬で終わらせるという考え方は良いですね」
 と、ユリシアに否定される。
 しかし、対岸に敵勢力がいる状況で、石組みの橋を少しづつ地道に積み上げていく訳にはいかないのも確かである。

 八方塞りの状況だが、打開策を提案するものもいる。
 リゥドゥラ勢力との和平を強行に主張する、中佐参謀・ファウト(a45922)だ。
「やはり、リゥドゥラ勢力と不可侵条約を締結すべきだという事だ」
 彼らと条約が結べればマルヴァス勢力側に骨の城を架けてもらうなどの作戦も取れるというのが、ファウトの意見であり、この作戦には、何人もの冒険者が同意する。
 ノスフェラトゥは一枚板ならず。敵の敵は味方となるのならば、彼らと和してマルヴァスを討つ事も不可能ではないのかもしれない。

 ファウトらの意見は、だが、実現性に大きな疑問があるのは否めなかった。
「いまさら、ノスフェラトゥと組むというのか?」
 貴殿らは本気なのか? そう問うたのは、竜剣衆副長兼参謀・クウォルト(a06796)。
 ソルレオン亡き後とは言え、今までの戦いの犠牲となった一般人の事を考えれば、軽々に和平など口に登らせる事はできまい。
「今一度、大作戦を発令し、リゥドゥラ戦力を討滅すれば、エルヴォーグの2/3を制する事になる。マルヴァスを倒す方策は、その後に考えるべきでは無いか」
 この意見には、きつねしっぽのれーさし・リコ(a01735)らが強く賛同する。
「今こそ、エルヴォーグ全土を制する時なのです!」

 だが、そのリコの雄雄しい宣言は、会議の間に駆け込んできた冒険者の怒声にかき消されてしまった。

 その報告とは……。

「リゥドゥラ王子の軍勢が、城砦に向けて進軍しています。このままでは我々は不利です!」

 会議の時間は終わり……戦いの時間が始まろうとしていた。

●城門の戦い
 それよりも少し前。
 白骨夢譚・クララ(a08850)は彼方に、群れを見た。
 紫暗の大地に現れ、ただ真っ直ぐにエルヴォーグ中央城砦を目指す、不気味なほど統制の取れた一群。
 それは、粛々とエルヴォーグ中央城砦へ進んで来る死者達の群れだった。
「アンデッド……ですね」
「ああ、来やがった!」
 クララはアンデッド軍を注視し、共に監視していた風色の灰猫・シェイキクス(a00223)が城砦内に知らせるべく駆け出す。声の矢文に知らせを乗せて、おてんばっ娘・ライト(a21479)は冒険者が多くいる場所に向けて打ち出した。
「敵襲です――エルヴォーグの軍勢が!」
 前後して、城砦外で見張りをしていた紅蓮と白銀の翔剣士・カイ(a03487)が、エルヴォーグ中央城砦の城砦へと戻り、アンデッド軍侵攻の報を告げた。
 その知らせは事は直ぐに、城砦内の隅々まで行き渡る。
 交代の時間までと寝ていた冒険者は叩き起こされ、交代に戻って来ていた冒険者はまた武器を取り上げる。
 今回の侵攻は奇襲では無かった。発見も早く打って出る事も可能だったが、中央城砦に留まった冒険者は273名。戦力に不安がある状況下で、冒険者達は防御戦を選択した。

 無言のまま足音を響かせ迫るエルヴォーグ軍。
 侵攻を留め少しでも戦力を削ろうと石橋に布陣した冒険者達。
 戦端は、音も無く切って落とされた。
 高レベルで固められた要害防衛部隊の力と、数で勝るアンデッド軍が、真正面から激突する。
 閃くナパームアロー。降り注ぐニードルスピアとエンブレムシャワー。折り重なって倒れ付すアンデッドの尖兵を乗り越えて、切り込む前衛の冒険者達。
 アンデッドの腐臭に満ちた大気を、桃風・ダスト(a20053)が振るった麒麟封刀が切り裂く。薔薇の花弁が散る。死屍から溢れた腐汁を避けもせず、踏み込んだダストの眼前で薔薇の花が咲いて巨躯のアンデッドが倒れる。
 獣を継ぎ合わせた様な鋭い牙を持つアンデッドの腹に食い込む、異邦人・コウイチ(a00462)の斬鉄蹴。腐った臓腑を振り撒きながら顎を開き、アンデッドはコウイチの肩口を噛み千切る。なおも攻撃を加えようとするアンデッドの首を、同じ【白き鷹】部隊の灰被り・シンデレラ(a43439)が達人の刀で切り落とし、ちょ〜トロい術士・アユム(a14870)が咄嗟にコウイチを含め負傷者を癒す。
「いたよ、エルヴォーグの冒険者だ!」
 聖なる力を纏うフリウリ・スピアーを、アンデッドの脇腹に捻じ込み、引き抜いた穂先で一点を示す鋼帝・マージュ(a04820)。その先には確かに、どこかで見たような革の衣装を纏い、細剣を持ったエルヴォーグの冒険者がいた。
「逃がさない……!」
 蒼翠弓・ハジ(a26881)はエルヴォーグの冒険者に狙いを定め、引き絞った藍翠に宿らせたホーミングアローを解き放つ。迫る鏃は翻るダークネスクロークによって阻まれた。次いで、エルヴォーグ冒険者を守る様にアンデッドが壁として立ち塞がる。
「貴様等、退け……!」
 【Laurel House】部隊の三代目雲龍の刀匠・レイド(a00211)、自然と昼寝愛好家・ファンバス(a01913)、征炎壁鋼・アガート(a01736)が流水撃でアンデッドを纏めてなぎ払う。吐き気を起こさせる凄まじい悪臭の中で、滑る武器を握り直し、只管に立っている敵を刈り取って行く。辛うじて立っているアンデッド達に安らぎを求めし森の守り人・リーゼ(a04066)がニードルスピアを死の雨と降らせる。
 橋を埋め尽くす勢いで増えて行くアンデッドの死屍。
 しかし、死骸を踏み越え、次から次へとアンデッドは押し寄せて来た。
 冒険者達は足りない戦力を連携で良く補い、果敢にエルヴォーグ軍の戦力を減らしていたが、疲労は募り、戦線が徐々に崩れ始める。
 ヒーリングウェーブを放った漫ろ雨・ルキ(a08504)は、また他に傷が深い者がいないか目線を巡らす。その目の端が、アンデッドに何かの指示を出す、エルヴォーグの冒険者を捕えた。何を――と思う間も無く、アンデッド数体が同時に動いて、戦場にアビスフィールドの薄闇が広がった。
 アンデッドの厚い壁の向こう側、肉感的な体の稜線を際立たせる革の衣装を纏った女が、ざっと手を振り下ろす。引き連れたミレナリィドールが宙に溶ける。アンデッド達の傷が癒え、花が枯れた暗緑の髪を揺らがせながら立ち上がったドリアッドゾンビの一群の瞳が妖しく光る。
「抜かせるか!」
 前衛を分断する様に巨躯を捻じ込むゾンビジャイアントが振るった腕をかいくぐり、【薫柚隊】の星深の戦騎・シフォン(a17951)が達人の一撃をと思って放った剣は、唯の惨撃としてゾンビジャイアントの背を背を抉る。
「……封術か……っ!」
 苦く呟き、シフォンに合わせて春暉・ポーラリス(a11761)は蹴撃を繰り出す。魔炎と魔氷に包まれたゾンビジャイアントを押しのけて、新たなアンデッドが現れる。
 ここで――この橋で全てのアンデッドを倒す事は出来ない。
 封術から逃れ、癒しの力を戦場へと送った銀花紫苑・ヒヅキ(a00023)は、後から押し寄せるアンデッド軍を見遣る。
 その時、アンデッドを切り捨てた果てなき白・アラストール(a26295)が、新たな敵影を見分けて叫んだ。
「モンスターアンデッドです!」
 引き時だった。
 冒険者達は負傷者を助けながら、エルヴォーグ中央城砦に向けて撤退を開始した。

 橋から撤退して来た冒険者達を受け入れるべく開かれた城門が、次の戦場となった。
 紫掛かった大地を覆うアビスフィールドと、繰り返されるドリアッドアンデッドの封術攻撃。薄闇の中、城門へ押し寄せるアンデッド達を、それでも連携し、補い合って冒険者達は押し返す。
「危ない――!」
 気が付けば孤立したままモンスターアンデッドの渡り合っていた負け犬・アイビス(a46954)が声に振り向くと、目の前に3頭異形の黒炎があった。スキュラフレイムに包まれ、アイビスは黒い松明に変じる。息を詰まらせる痛みの中で、炎の源を見遣るアイビス。 敵の邪竜導師の足元には蛇が蟠っていた。その姿も直ぐ、アンデッドの壁の向こう側に消える。
「ベインヴァイパー……が……」
 瞳を伏せたアイビスは、城門から押し寄せたアンデッドの一群に呑まれた。
 また混戦を極めた城門前の戦場の別の場所では、アンデッドの槍めいた骨に胸を貫かれた夜風・カガミ(a37387)が、赤黒い血を吐きながら地面に倒れ付す。
 ひくりと痙攣した体に、襲い掛かる異貌の黒炎、デモニックフレイム。
 現れたクローンが、ゆらりと立ち上がりケインを同盟の冒険者達へと向けた。
 城門を守っていた快傑・デュランダール(a03764)は、きりと歯を噛み締める。
 ユリシアの霊査通りだ。持久戦の構えを取るノスフェラトゥが、同盟の戦力が400名以下ならば攻撃してくるという事は、その人数ならば必勝であるという事を意味していたのだと、積み重なる死と血と痛みと共に知る。
「そう簡単には――」
 アンデッドの群に向け、デュランダールがナパームアローを投じる。影武者ドラゴ・トート(a16979)が朽ちた半身から蛆を振りまきながら迫る巨大な蛇に似たモンスターアンデッドへ、ニードルスピアを降り注がせる。
「今だよ!」
 ユメギワラストボーイ・ノア(a27086)の叫びと共に、ファントムブレイズ・ミリティナ(a00169)や朱陰の皓月・カガリ(a01401)等、牙狩人が城門に向けて矢を打ち出す。 僅かにアンデッド軍が退いた所を術士達が範囲攻撃で牽制し、前衛部隊が死力を振り絞って敵へ切り掛かる。
 歌紡ぎ・セルディカ(a04923)が、ミンストレルレヴァリー・カルフェア(a23806)が、夢見る箱入り狐・ネフィリム(a15256)が歌う。凱歌が至る場所で響き、冒険者達の体の異変と傷口を癒して行く。
 しかしその歌声も、戦場の隅々までは行き渡らない。
 鋭い爪を持つ狼に似てもっとおぞましいモンスターアンデッドが、錆びた鉄剣の様な爪で辺りを薙ぎ払い、切り裂かれて倒れ付す冒険者達。
 ヒトノソリンの武人・ラグナロク(a50165)は剣を掲げるも間に合わず、腹の半分を持って行かれて膝を折った。激痛が走る。血と共に力が抜け、長剣が地面に転がる。最早、癒しの力も届かない。
「生き別れの父母と……会いたかった……なぁ〜ん。元気で……」
 戦場の喧騒が青年の呟きを掻き消す。
 誰かの叫び声が遠くに聞こえる。
 撤退と言っているようにも思えた。
 そこで、ラグナロクの意識は途絶えた。

 戦いは、城砦内に及んだ。
 噎せ返る死の香りの中で、どこかで怒声が上がり、悲鳴がそれに応える。
 それでも怯む事無く、エルヴォーグ中央城砦の守りとして残った冒険者達は、戦っていた。
 エルヴォーグ中央城砦とユリシアと、守ると決めたエルヴォーグの人々、同盟の民人の為、死力を尽くして戦っていた。
 戦いの最中、一人城砦の奥を見回っていた闇夜に潜む・ルシード(a43884)は、ユリシアの元へと向かう味方と思しき冒険者達を見つけて近寄った。
 ユリシアの元には十分な戦力がいる筈だ。
「何かあった……」
 人影が振り向き、ルシードの誰何の声はそこで途切れた。
 驚きか、覚悟か。
 沈黙の後、衝撃波に打たれてルシードはくず折れる。
「行きましょう」
 闇き宝玉・パンドラが端的に促す。
 死者の眼差しでルシードを一瞥し、更に一撃を加えて完全に止めを刺したゴールディ・ハデス(a90268)は、他の仲間達――死してなお動き続ける同盟冒険者の骸達と共に、エルヴォーグ中央城砦の奥へと進んで行った。

●エルヴォーグ中央城砦最終防衛戦
 小早川・ラスキュー(a14869)がまず最初に、迫る足音に気付いた。
 同盟の勝利を告げる為に来た冒険者達か、それとも――。
 薄闇を透かして敵の存在を確認した小早川・ラスキュー(a14869)は、そっと室内に入り敵襲を告げる。
 軍医・ザイン(a00835)の指揮の下、ユリシアの周囲を取り囲み、また扉前に布陣する冒険者達。
 足音が止まる。轟音と共に扉が撓んだ次の瞬間、冒険者の一群が討って出た。
 その辺に落ちていた棒を握り締め、殴り掛かる小早川・ラスキュー(a14869)。腕で受け流され、逆に脇腹に鋭い蹴撃を食らって血反吐を吐く。
「そんな……」
 攻め寄せて来たのは、同盟の冒険者だった者達だった。先の戦争で死んだ者達のアンデッドがそこにいた。
 赤い風・セナ(a07132)が声を途切らせ、唇を引き結んでヒーリングアローをラスキューに送る。足元に突き立った矢をかわし、幸せ運ぶ笑顔の妖精・アンディ(a04272)は逆に冒険者アンデッドへ慈悲の聖槍を叩き込む。
「パンドラ!!」
 三日月に寄り添う戦乙女・アイリッシュ(a12290)が、奥に控えるパンドラを鋭く一瞥し、冒険者アンデッドの1体へ薔薇の剣戟を繰り出す。3撃入った所で、躍り出たシナト・ジオ(a25821)の斬鉄蹴が止めを刺す。
 アンデッドは喚声を上げなかった。
 冒険者達は戦う相手故に無言で、時折互いの隙を補う様に呼び合うだけだ。
 何処の馬鹿が攻めて来たのだと笑ってやる筈だった。武侠運送屋・ハンソー(a22844)目の前に立つ敵達――同盟の冒険者の骸達を見て、笑みとも言えない表情で掴み掛かり、投げ飛ばす。
 振り下ろされた剣の切っ先が胸に沈む。やらないか・フォロン(a23826)は激痛を堪えて冒険者アンデッドの脇腹を蹴る。確かに骨を砕いた手ごたえはあるのに、目の前の冒険者アンデッド達は苦痛を表に出す事は無い。
 混戦の最中、冒険者アンデッドが放った光条が、俺の命に代えてもユリシアを守ると扉に立ち塞がっていたヒトの医術士・リイト(a49684)を貫いた。
 一瞬で事切れ、倒れ付すリイト。
 仲間の死を見ても冒険者アンデッドの瞳は冷え冷えとし、ただ死の様だった。
 緊迫した攻防、危うい所で競り合っていたアンデッドと冒険者の戦いを終わらせたのは、どちらかの勝利ではなく、同盟の援軍到着を告げる報だった。
「潮時ですね。時間を稼ぎなさい」
 冷然とそれだけ言って身を翻すパンドラ。
「行かせぬのじゃ!」
 追撃を試みる紅硝子・ルツキ(a32927)ら冒険者達を阻む様に、冒険者アンデッドが立ち塞がる。一瞥もせず、パンドラとハデス達冒険者アンデッドは城砦内の闇に消えた。

●急報
 どうと最後のアンデッドが倒れる。止めのニードルスピアを放った大空の友と歌う・モコモコ(a00538)が、緊張を解いて背伸びをする。
「まずは点、それから線。面を綺麗に掃除するのは、線のアンデッド達を沢山倒してからだよね」
 指折り数えて言うモコモコに、【今日も行く】チームの凪・タケル(a06416)や万年貧乏な重騎士・アシャンティ(a14189)もそうだなと頷く。
 エルヴォーグは広く、アンデッドは多い。
 全てを奉仕種族が安心して住める場所に出来なくとも、一箇所ずつ確実に掃討して行く事で、彼等が安心できる場所を用意する事は出来る。
 その事実が、この地道な作業を続ける冒険者達に新たな活力を与えていた。

「もう随分、避難場所が整備されているな」
 【狂風隊】の狂風の・ジョジョ(a12711)やグランパスブリーダー・リエラ(a00139)と、死骸を破壊やアンデッドの討伐を行っていた戦帥の蒼き風・サードムーン(a33583)は、街道に程近い場所にできた清潔なテントの一群を見て仲間達を見て呟く。
 冒険者達の尽力により、死者の祭壇からエルヴォーグ中央城砦に至るまでの街道の整備は、着々と進んでいた。
 街道の傍に設けられた避難場所からは、煮炊きの煙も立ち昇っているのが見える。
 それは、難民達が避難場所に集まりつつある証のように思えた。

 街頭近くに設置された避難場所の1つでは、【紅十字】部隊の翠の賢帝・クリスティン(a26061)がテント等の整備に尽力していた。
「その辺りで良いと思いますよ」
 同じ【紅十字】部隊の紅鎧騎士・ターキー(a37654)と紅の鬼武者・アシュラ(a40851)に呼びかけると、2人が大きく手を振って応える。
「ありがたいねぇ、こんなにお腹がお腹が一杯なのは初めてだよ」
 幸せの運び手の淡い光に包まれて、避難場所に辿り着いた老女が微かに幸せそうに呟く。いまだに脅え、同盟冒険者への不信が拭い切れない周囲の難民達も、疎らに頷いた。
「分けてもらった甘パンも美味しかったさ。砂利も混じってないし。干した果物も美味しかった。本当に、この土地じゃろくな作物が取れないんだねぇ……」
「そうなのか?」
 畑の手入れでも手伝おうかと考えていた無の・ディーラック(a02723)が、子連れの女に問い掛ける。
「太陽のある国のお話と比べると、野菜も何も、いじけていて不味いものばかりだよ。しかも、萎びたり枯れちまえば、いきなり動き出すし」
「そうそう、めったな事が無い様に大きくて丈夫な貯蔵庫に入れてね。料理するのも一苦労だよ。料理してから直ぐに食べないと……ねぇ」
 女達は口々に、日々の苦労を語る。
 井戸端会議の様子を興味深く聞いていた冒険者達の1人が更に何か問おうとしたその時、急報が届いた。
 曰く、「エルヴォーグ中央城砦がエルヴォーグ軍の侵攻にあった」と。
 各避難場所に最小限の人数を残して、冒険者達はエルヴォーグ中央城砦を目指した。
 仲間達を、救うために。

●苦い勝利
 そして援軍は城砦へと集い、エルヴォーグ中央城砦を巡る戦いは冒険者達の勝利で終わった。
 城砦に控えていた同盟の冒険者達の人数をほぼ正確に把握し、侵攻したエルヴォーグ側の誤算は、重要拠点の護りについていた戦力が300名未満という状況で、その3倍はあろうかという戦力が後方に控えていたという事実だろう。
 同盟の冒険者達は図らずも、敵に弱点を見せて誘い込み、伏兵でそれを撃破する事になったのだ。

 勝利は得た。
 エルヴォーグ中央城砦を守り抜けた事は、エルヴォーグ中央城砦の護りに付いた冒険者達が得た勝利だ。
 だが、この戦いでは多くの冒険者が傷つき倒れ、そして二度と戻らぬ者もいる。
 勝利を得た城砦に悲しみを乗せて吹く風は、長く続くであろう地獄の戦いの先行きを予感している様にも思えた。

<作戦参加>
エルヴォーグ中央城砦の防衛を行う 273
エルヴォーグ中央城砦でユリシアの護衛任務につく 58
避難所の作成・維持・難民への呼びかけを行う 448
引き続きエルヴォーグ占領地のアンデッド掃討を行う 891
今後の作戦方針について提案する 44