<リプレイ>
●遠き地平
「切りがねぇもんなんだなぁ……」
「ふむ」
補給線に程近い場所を巡回していた碧緑に燃え上がる剛拳士・ガルティア(a19713)は、ふらりと現れたアンデッドを拳で打ち砕いた。同方向を巡回していた独眼の重騎士・ウラジ(a07935)もまた、剣でアンデッドを切り払う。
自然の理の如くにアンデッドが現れ、それは途切れる事は無い。
掃討を始めた頃の様に、危険なほど多い訳では無いが、確かにアンデッドはおり、骨の山は変わらずそこにある。
それは掃き清めて土だけになった庭に、風に吹かれてまた落ち葉が積もる様に似ていた。
また、手入れをしない庭に雑草が生える様にも。
「地道に排除して周るしかないのかな」
決別を呼ぶ吠響・ファウ(a05055)が真横に振るった斧が、その場にいたアンデッドの最後の一体の頭蓋を半ばまで潰す。倒れたアンデッドを動けぬように更に砕いて、冒険者達は巡回を続ける。
幸せの運び手の柔らかな光が、放浪者・クレスタ(a36169)のギターの音色と歌声とを聴いていた難民達を包み込む。空腹を癒す幸福感が、難民達の内側を満たして行く。
ゲート転送は1日に1人1度しか行う事はできない。死者の祭壇へのゲート転送で運べる物資は限られており、またエルヴォーグ中央城砦への備蓄が優先されている。炊き出し等は行っていても、必要十分な食材がある訳では無く、避難所の生活を支えているのは、やはり幸せの運び手だった。
「昔話か……ちっちぇ頃にばあさんによく聞いたなァ……」
「ああ、聞いた聞いた。あれだろ、物凄い昔にはノスフェラトゥ様がいなくって、どこもかしこも平和だったって話」
伝承などは無いかというクレスタの問いかけに顔を見合わせる、兄弟で逃げてきたという男達。そんな何時とも知れぬ昔を懐かしむような昔話を、クレスタは1つ1つ聞いて行く。
同じように【雛鳥】の者達もまた、ドラゴンズゲートを求めての探索の途中に立ち寄った、遺跡について難民達に聞いていた。グリモアの近くに遺跡など無かったと聞いて周っていた所、リリカル武闘少女・ミオ(a36452)が袖を引かれて振り返る。
「遺跡って、古い建物の事だよね?」
「ですです、うんと古いのです」
少女の言葉にうんうんと頷くミオ。少女は兄と思しき青年を手招きする。
「この人達が住んでるって言ってあるあのおっきなお城、あれってずーっと昔にえらい王様が住んでたんだよね?」
「まあ、そんな話があったな。大方お伽噺の類だろうけどな。んで、ノスフェラトゥ様がやって来て、偉い王様を倒したんだよな」
「どこから来たの? 知ってる?」
たとえ伝承でも、同盟領内にあるのならば探す方法があるかも知れない。そう、真剣な表情で話の続きを促す月下のそよ風・ファリィ(a43580)。
「あんたら知らないのか? ノスフェラトゥ様たちはあっちから来るんだぜ。父さん達を連れてったマルヴァスもその前に来たエラい人も、みんなあっちの果てから来たんだ」
青年はマルヴァス領の方角を指差す。顔を見合わせるチョコは世界を救うと思ってる・パク(a39784)と抱擁の理を謳う過去の歌姫・ナーナ(a48057)に、青年は周囲の者達へ同意を求める。そこから得られた話の内容や口ぶりから、エルヴォーグとミュントスを繋ぐ道がマルヴァス領にある事は間違い無さそうだった。
月を宿す演劇の舞姫・シャナトラ(a08991)は友好的な難民に、ランドアースから持ち込んだ種子や苗を見せたり等しながら、地獄の環境について考えを巡らせていた。
「ランドアースの植物を根付かせるのは難しい……のでしょうかね」
こんな種は見た事が無いと言う者や、似ているけれど何処か違うという返答が大半だった。元は同じ種の植物でも、環境の違いによって変質してしまっているのだろう。
食糧事情の厳しさを思って、シャナトラは溜息を吐く。
別の避難所では小さな戦いが起こっていた。櫻を愛する栗鼠・ガルスタ(a32308)が、避難所の近くに現れたアンデッド達を流水撃で切り払う。ほんの数体のアンデッドだったが、それもまた地獄の日常――当然ある物としてのアンデッドの存在を教えていた。
避難所で幸せの運び手を使った後、付近の地勢について話を聞いていた魂に刻めその旋律・レシュノ(a45112)は、あんたらがマルヴァスを倒して出て行ってくれれば言う事無いのにねぇ――そんな呟きを聞いた気がして振り返る。誰が言ったかは分からないけれど、それが大方の難民達の思いなのだろう。
避難所にいる冒険者達は、アンデッドさえきちんと何とかしてくれるなら、元の村に帰りたいという声を聞く事もあった。
地獄門での戦に巻き込まれ、家族と別れ別れになって難民所に逃げて来た民達の中には、拭えない同盟への不信感が残っている。豊かでは無かったが静かなリゥドゥラ統治下での暮らしを懐かしむ声があるのも不思議では無い。
(「仕方無いのでしょうか……。ゆっくりと知り合わなきゃ駄目なのでしょうね……」)
茨冠の想奏・テイルズ(a48504)は子供達と、ランドアースの童謡や、エルヴォーグの村々に伝わる遊びを教えたり教えられたりしながら、少しずつ会話を積み重ねる。
踏破されていない地域の水場を調べる【水辺】部隊の者達。周囲や上空を警戒する触手の森の・フィンフ(a19327)や瞑月・シズ(a39292)の傍らで、辻楽師・ユーニス(a42404)が獣達の歌をもって小動物に話を聞く。
「もう少し奥にあるそうですよ」
「じゃあこっちの方かな……」
ユーニスの言葉を空色クラッカー・レジィ(a18041)は地図と照らし合わせ、一向はまた森の中を進む。
マルヴァス領の方へと向かった【礫】部隊の者達は、油断無く地形や環境を書き留めてゆく。途中立ち寄った避難所にも、また今まで踏破した道々でも、アンデッドは数多くいたが、怪しい集団やノスフェラトゥらしき人影を見る事は無かった。
「地獄ってさ、昼も夜も無いもんなんだね」
皓天・ミツキ(a33553)が、いつでも仄かに明るい薄紫の空を見上げる。
「気温も少し暖く感じたり、うすら寒くなったりする程度だしな……」
天焔・ヴァイス(a41634)は、そういや雨は降るがと、ミツキと空を見る。皓月乱華・シャオ(a29967)の、アンデッドが現れたと呼ぶ声がして、2人は顔を見合わせ駆け出す。
冒険者は避難所で得た情報や今までの情報を元に更に歩みを進め、利用可能な水場の位置、木材が切り出せそうな山や森、広がる荒野と岩山、そして骨の山の場所など、新たな情報が地図に書き加えられて行った。
特別な発見や珍しい情報には中々巡りあえず、また作戦参加者の減少もあって今まで程では無かったが、地図は確実に広がって行く。
小さな従属グリモアの周辺の調査を行っていた冒険者・フェレン(a48830)は、骨の山のある所に植物がもグリモアも無く、グリモアのある場所の近くには村や森が存在する事に気付いていた。
共に調査していた静寂を奏でし者・シーアス(a44387)も、グリモアの周囲に骨の山が無い事に気付く。骨の山にはアンデッドが惹かれて寄って行く。必然的に、グリモアの周囲に村ができるのだろうと2人は結論付ける。
グリモアから遠く離れ骨の山がある場所では、地獄の日常と化している巨大なアンデッドとの戦いが起こっていた。
輝銀の胡蝶・ミク(a18077)が中空に白光の槍を召喚する。突き立って長い胴と2つの頭を持つアンデッドの体を貫き崩す槍に続いて、間合いを詰めた賭ける重騎士・カエデ(a34095)がとっても大きな錆びた剣に聖なる光を宿らせ、アンデッドに打ちかかる。
ヒーリングウェーブを掛けるタイミングを計っていた探索士・エルヴィン(a36202)の傍らを駆け抜け、アンデッドに迫る虚無閃剣・リア(a11399)と鎧骨殲鬼・ギダン(a19463)。
骨の山を踏み締めて駆け上がり、双頭の片方にギダンがデストロイブレードを叩き込む。次いでリアの電刃居合い切りがアンデッドの胴の骨を中程で砕いた。
アンデッドの尾が周囲を薙ぎ払う。叩かれた冒険者が、唇から溢れる血を噛み締めるように激痛を堪えて反撃を繰り出す。戦場を覆うヒーリングウェーブ。柔らかな力に癒され、活力を得て戦いは続き、遂にアンデッドは打ち倒される。
「……さあ、行きましょうか」
足掻く四肢を更に打ち砕いてから、抑揚無く淡々と言って、ミクは遠く地平を見遣る。
視線の先にはまだ、見果てぬ場所が広がっていた。
●会議の間
「そろそろ膠着状態が解けて欲しいけれど……でも、戦闘になるのも嫌ね」
藍き歌い手・フェルレイ(a36403)が頬に片手を添えて、ふうと微かな溜息を吐いた。
「なにもないのが一番なぁ〜ん」
哭きの・カイエ(a14201)が答える。
何も無い事は良い事である。エルヴォーグ中央城砦が陥落し掛けた時の事を思えば尚更だ。
確かに良い事なのでございますが――五鏡銀尾の・ヒエン(a05183)はゆっくりと、会議の間の扉を見遣る。カイエやフェルレイ、そして他のユリシアの護衛に付いた者達が守る会議の間では、現状を打破する為の話し合いが続いていた。
「私としては、リゥドゥラ軍と交渉を行い、叶うのであれば共闘をしたいと思う。現在、同盟は幾つかの問題を抱えている。その事を考えるとリゥドゥラ軍と協力した方がいい。前に円卓で採決をした時より状況は動いているのだから」
議長の位置に付くエルフの霊査士・ユリシア(a90011)と、会議の間に詰める50人を越える冒険者に対して、強く主張する様に言う深紅の逆月・レオン(a42618)。
「冒険者の面子や感情よりも相手側の住民含め民のための停戦は必要かと思います」
十字架を背負う者・レイ(a07113)も続けて主張する。
「切り札となるカードもあらへんうちにそないなこと言い出すんは、こっちが戦力に不安を抱えとると明言するようなもんとちゃうんかい? 運良く停戦を締結出来たとして、王妃の命があればソッコーで破られる気もするしなぁ」
冴焔・シーヤ(a31355)の反論に、灰色の岩山・ワング(a48598)が立ち上がる。
「それでも、情報収集の為に王子との交渉を行うのは有効なんじゃないのか?」
ワングの言葉に、幾人かの冒険者が同意の声を上げた。
困難は予想されるにしろ、上手く交渉の席に付かせる事ができれば、偵察で得られる情報とは違う種の情報を得る事ができるかも知れない。共闘する事ができれば、リゥドゥラとマルヴァス双方を敵に回して戦うよりも、民に出る被害は少なくて済むだろう。それは同盟の冒険者が被る被害についても同じ事が言える。
しかし、交渉の糸口は乏しい。エルヴォーグの割譲にしろ、戦いが続けばエルヴォーグが荒廃すると訴えるにしろ、同盟が引けばいいと言われる可能性があるだろう。また、裏切りの可能性も常にあっる。シーヤの反論ももっともと言えた。
「……リゥドゥラ軍に対して……何のアドバンテージも無い今……交渉はきっとできない」
悲しみ絶ち切る刃となる・アルム(a12387)がゆっくりと、皆に言い聞かせる様に自説を展開する。
「……マルヴァス領へ行く手段も……すぐに出来ない以上、橋を落とした上で……防衛徹底を……推すよ。ザウス大祭まで半年をきった今……僕らに必要なのは……時間だよ」
トロウルとザウス大祭、そしてザウスの雷――確かに無視できない脅威ではあった。堅固な防御を誇る1つの城、1つの国を一瞬で壊滅せしめたザウスの雷の破壊力は、あの戦に参加した誰もが強く記憶に留めている事だ。
橋を落し、こう着状態のままに置いて防御に徹すれば、ランドアースにて同盟領を狙う脅威に意識を集中する事もできるだろう。
「今、この状態で他地域に戦力を割く事態が起きれば、奴らは確実にその気配を逃がさず衝いてくるだろ。二面作戦は危険だ。早々に同盟領地を2/3として敵残存を下の階層に退かすか孤立させるべきじゃないか?」
交戦を押す朽澄楔・ティキ(a02763)の言に、賛成者が頷いて同意を示す。
「それに、武力で優位を見せ付けた上で交渉を迫るという策もあります」
続けて蘭陵王・カスミ(a40120)がそう主張する。
交戦を押す者達の中にも、策を弄するマルヴァスを先に落すべきと主張する者、既に堅固な橋があり地の利もあるリゥドゥラを先に落すべきと主張する者、そして両軍一気に方を付ける方がいいだろうと押す者がいた。
どちらを先に叩くにしろ、もう片方の戦力に対して十分な備えが必要だろう。備える為に戦力を割くのであれば、エルヴォーグを統べるべく全面攻勢を仕掛ける方が得策かも知れない。
他にも先の戦の様に、橋を落されてしまう危険性と、それから地獄の民にまた大きな犠牲をもたらす可能性等、色々と考えられた。
「方針……というか選択肢は出揃いましたわね」
「そうですね」
因果応報医術姫・トリスタン(a43008)と鉄拳制裁・グロウベリー(a36232)が纏めていた紙を付き合わせる。話を纏めた結果、選択肢は全部で5つとなった。
1.マルヴァス領に侵攻する
2.リゥドゥラ領に侵攻する
3.エルヴォーグを一気に制圧する
4.リゥドゥラ軍と交渉を行う
5.橋を落して防衛に徹底する
冒険者達とユリシアの言を受けて、それぞれに予想される難点も書き添えてあった。
選択肢にはどれも、一長一短がある。この先どうして行くのか、どう地獄と付き合って行くのか、今の危険だけではなくこの先を見据えた選択を行う必要があるだろう。
考えながら、トリスタン纏めを完成させて行く。
それからまた会議では、今後についての提案も行われた。
「骨の橋を作るのにボーンウォールを使うって聞いたけど、時間はかかるとはいえ向こうから橋をかけられるのにこっちから橋を使って攻めたらまた橋を落とされない?」
闇を照らす光・アイ(a02186)の言葉に、その可能性はあります、とユリシアは頷く。マルヴァス側に攻め込むにしろ、リゥドゥラ側に攻め込むにしろ、大きく状況を動かす時には橋に対する防御も講じる必要があるだろう。
「砦の防衛を少なく見せかけて誘き出したりとかで捕虜取れないものかな」
「サフィーロも意見提示をする。リゥドゥラ領に攻め込むなら、中央城砦を手薄に見せる。来たマルヴァス軍に伏兵で大打撃」
次いでなされた星夜の翼・リィム(a24691)と柘榴の蛇遣い・サフィーロ(a49949)の提案は、最も多くの冒険者が頷く所であった。意見を受けて暫し考えていたユリシアは、発言した者達や賛意を示した者達をゆっくりと見渡す。
「この提案は、実際に戦争を行う場合の、最初の作戦に相応しいかもしれません。円卓の決議の結果、作戦旅団が結成される事になるならば、そこで提案してみてください。そのときは、ユリシアが良い作戦だと思うと言っていたと、お伝えくださいね」
微笑むユリシア。誘引して打撃を与える戦法を取れば、自ら望んで戦端を開く事になる。作戦を行うには、やはり円卓の採決の結果を待つ必要があるだろう。
纏められた文章は今ユリシアの手から冒険者の手に渡り、補給線を通ってエルヴォーグの荒野を横切り地獄門へと運ばれて行く。
円卓へ、届ける為に。
●偵察
リゥドゥラ軍の領地も、エルヴォーグの同盟領と変わらない光景が広がっていた。
荒れた大地と、自然が作り出す様々な地形、彷徨えるアンデッドと骨の山だ。
特に、エルヴォーグの同盟領内と違ってアンデッド掃討作戦を行っていないリゥドゥラ軍の領内では、何処に行ってもアンデッドがいた。
「切りが無いのう」
亀裂の近くを辿り、森などなるべく遮蔽の多い場所を選んで歩んで、マルヴァス領へと続く橋を探していた【探偵社】の一行の内、孤山の老木・ヴァルター(a34611)は、そう呟いて遠眼鏡を下ろす。いかに高レベルの者達が揃っているとは言え、4人で可能な限り戦闘を避けて進むには敵となるアンデッドが多すぎた。警戒をしつつ、かなりの距離を進んだと思えたが、未だマルヴァス領への橋は見つからない。
「また集まって来たか――」
黒衣の閃迅・レオニード(a00585)が警戒の声を上げる。金色の花・リゼル(a22862)が放つ一発のエンブレムシャワーとレオニード、月無き夜の白光・スルク(a11408)が続けて繰り出した斬撃に、アンデッド達が次々と倒れ付す。戦わず切り抜けられる限界の場所まで踏破した――そう判じた一行は、非常な手際の良さで退路を切り開き、地勢についての貴重な情報を手に【探偵社】の者達は退路を辿って城砦へと戻って行く。
「あれも奉仕種族の村かのう……」
番紅花の姫巫女・ファムト(a16709)が高台から遠目に見遣る先に、小さな村があった。
エルヴォーグの首都エンデソレイに続くと思われる整備された大きな街道の近く、なるべく遮蔽の多い場所を選んで進んだ為か、ランドアースの街道近くに村を多く見掛ける様に、比較的多くの村を見る事ができた。
ノスフェラトゥも居るのだろうか、道々ファムト達が遭遇し、止むを得ず戦った様なアンデッドから奉仕種族達を守る様に、村の周囲をアンデッドが壁を思わせて囲んでいる。
「規模は……100人も行かないでしょう。平均的な村だと思います」
遠眼鏡を除いていた沈みゆく雪・ロウラン(a22375)が詳細を皆に伝え、それを天哭・シルヴェストル(a05448)が簡単な地図に書き留める。マントを被り木々の合間に身を潜めて、空を警戒していたセルリアンシュガー・ネミン(a22040)が警告の声を発した。
「鳥のアンデッドです」
布を被り、身動きせずアンデッドが行過ぎるの待つ冒険者達。野辺を行くアンデッドは数多く、空を飛ぶモノ達もおり、それが偵察の最大の障害となっていた。
「アンデッドは生気だけで大凡の位置を把握するそうですから、襲撃には気をつけないと」
雪原の女装護花剣士・ファル(a21092)が二振りの刃を構えて油断無く周囲を見遣る。 戦いを避ける為にも、【聖槍】部隊はなるべく骨の山から遠い場所を選んで歩んでいた。すると必然的に、同盟領とリゥドゥラ領を繋ぐ橋から恐らくエンデソレイまで続いているであろう主街道に添う形で進む事になった。
アンデッドの小さな群を殲滅すべく、ボクは飛べないヒトフワリン・アミラッカ(a37460)がレイジングサイクロンを放つ。希望の剣を振るう医戦士・アリシアーナ(a19030)が残ったアンデッド達にニードルスピアを雨と注がせて止めを刺す。
「何だか奇妙な道だよねぇ」
急ぎ戦場から離れて、手近な遮蔽物を探して斜面を駆け上がる【聖槍】部隊。
高台に身を潜める間際、振り返って愛を振りまく翼・ミャア(a25700)が呟く。
ノスフェラトゥは、山を迂回して道を敷けそうなのに、山を半ば切り崩して道を通していた。
「もしかして、骨の山を避けて道を敷いているのかも知れませんね」
周囲の物音に注意を払いながら、蒼翼の守護天使・ゼフィ(a35212)が答える。そして彼等は偵察を進め、ゼフィの言が正しかった事を知る。骨の山はノスフェラトゥでも動かし難い、自然現象なのだった。
リゥドゥラ軍の領地を進んで暫く、街道を行く奉仕種族の姿も、ノスフェラトゥの姿も無かった。恐らくそれは、戦時中という状況故なのだろう。
首都エンデソレイへ向かった冒険者達は、リゥドゥラ領の深部へと近付くにつれて、巡回する様に道を行くアンデッド達に遭遇するようになった。
秩序正しく後進をするアンデッド達の合間に、ノスフェラトゥ冒険者と思しき姿が見え隠れする。 できればノスフェラトゥ冒険者を捕らえられれば――そう考えていた荒れ狂うブリザード・グレゴリー(a35741)も、大量の秩序だったアンデッドを目の前に、龍焔・バーン(a30610)と見交わし無理と判じて遠眼鏡での偵察に留めた。
大きなアンデッドの集団にはノスフェラトゥが付いているようだったが、接近して野を行くアンデッドに遭遇し、戦いが起きれば更に大きな戦闘を呼ぶ事になる。
警戒に警戒を重ねた為、得られた情報は非常に限定的で、正確な人数までは把握する事はできなかった。
非常にバランスが取れた部隊構成だった【城壁隊偵察組】が、最もエンデソレイに近付く事ができた。麗冥帝・リゥドゥラが座す黒曜宮を擁するエンデソレイの周囲には、遠目に見てもそうと分かる程の軍隊が控えている。
訓練でもしているかの様な正確さで、エンデソレイの周囲を巡回をしており、様々なアンデッドからなる群が行き来している。
また、道々や首都の周囲に配置された骨の城も見受ける事ができた。
空を飛ぶ鳥アンデッドを見上げて、青い瞳の・アリッセ(a45337)は溜息を吐き、幾度と無く戦いを切り抜けて来たため、汗と埃と自身の血、そしてアンデッドの腐汁などで汚れた頬を指で擦った。「相当に警戒が厳重だね」
「首都じゃしょうがない……のですかね」
蛍石の護り手・シーマリネィア(a39304)がアリッセの呟きに応じる。
迂回をし、また同じ方角に行く冒険者達と協力をしながらここまで来たが、アビリティの残数も考えれば帰路の事を考える時間だ。
攻める事になるのか、それとも別の意思をもってあの首都に至る日が来るのか。
それは、今後の冒険者達の判断を待つ事になるだろう。
思いを残しながら、無銘の騎士・フェミルダ(a19849)は仲間達を促し踵を返す。
無事に、生きて、見たものを伝えるために。
●エルヴォーグ中央城砦にて
膠着した状況の中で、それでもエルヴォーグ中央城砦の防衛についた冒険者達は黙々と敵の領地を見張っていた。
「何も無さそうですね」
「ですなぁ〜ん」
城砦外を巡回する【まじかる小隊】の重装型・ササラ(a10143)と蒼閃月・エリュトロン(a20610)が、比較的のんびりと言い交わす。
「何かあったら大変です。さあ、もう少し見回りを続けましょう」
【まじかる小隊】の面々を促して、まじかる長官・ユーリアル(a06708)は、敵領と同盟領に横たわる亀裂の方を目指す。
一方城内では、隠し通路や隠し部屋の探索が行われていた。
【城壁隊防衛組】や【覇軍】や有志の冒険者達が、今まで城砦内を探索した者達の情報を元に徹底的に城内を調べ尽くして行く。
空言の紅・ヨル(a31238)が拳で軽く石壁を叩く。鈍い響きが返る。壁を隅々まで見て何も無い事を確認し、振り返るハル。
「どうですか?」
問いに、反対側の壁を調べていた白焔の夢・ハルキ(a31520)が軽く頭を振って答える。
「こういう所にある事もあるな……」
別の部屋で、暖炉や備え付けの家具に何か仕掛けが無いか、組まれた石から、棚から全てを見て行く紫眼の月・ヴァルゴ(a05734)。宵天に繋ぐ夢幻之紅焔・オキ(a34580)もまた、建物の構造を想像しながら部屋の要所を見て行く。
仲間達と、パンドラが潜んでいないか暗所の見回りを行う鎖耳の・ミルフィア(a42745)。
「あの……やっぱりもう逃げてしまっているのでしょうか?」
「そうかも知れませんね」
先を進んでいた城壁の姫騎士・サクラコ(a32659)が、足を止めて廊下の先、ランタンの光の届かない薄闇を見遣る。
古くからあるであろう要所の城砦の事、確かに隠し部屋等はあったが、どこも厚く土ぼこりが積もり、使われた形跡はまったく無かった。
やはりパンドラ達は、あの戦いに紛れて逃走したのだろう。
城砦を調べ尽くした冒険者達は、そう結論付けたのだった。
昼夜変わらぬエルヴォーグでは、気温の変化が時を知らせる。橋の左側で警戒に当たっていた、【夕焼】の鈍色銀糸・カルア(a28603)が、そろそろ薄ら寒くなって来たなと、野良ドリアッド・カロア(a27766)に話し掛けようとしたその時、橋の右側にて歩哨に立っていた月影の魔術師・バイビレッジ(a13869)の声が響いた。
「人影が!」
バイビレッジと歩哨に付く青い記憶・ユファ(a27054)は有事に備えて構えを取る。
橋の防衛に当たっていた冒険者達が見守る中、程なくして人影の正体が分かった。
リゥドゥラ領へと偵察に赴いた者達が帰って来たのだ。最初に同盟領へと帰還した【烏座】の者達を皮切りに、一組、また一組と冒険者達が戻って来る。
戦闘回避と警戒を徹底し、また単独では行動しないよう促した為か、敵地に赴いたにも関わらず、深い傷を負った者は居なかった。
リゥドゥラ領から帰還した者達は、エルヴォーグ中央城砦へと向かう。
迎える冒険者達。エルヴォーグ中央城砦は遅くまで、無事の帰還を祝う暖かな空気に包まれていた。
<作戦参加>
エルヴォーグ中央城砦の防衛を行う(600名必要) 761
エルヴォーグ中央城砦でユリシアの護衛任務につく 59
補給線から離れた場所のアンデッドの掃討および同盟領内の調査を行う 312
リゥドゥラ軍の領地の偵察を行う 48
円卓に提出すべき事について意見を交換する 34
今後の作戦方針について提案する 21
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