<楓華蹂躙> 楓華列島東部に位置するエミシ州。 そこで、楓華列島を恐怖に陥れる存在である『鬼』と闘った『楓華の風カザクラ』より緊急の報が各地へと飛んだのは、7月7日の星凛祭を控えた数日前のこと……。 「先の戦で得られた鬼の残した品を霊査して、今判っていることをお伝え致しますわ」 ドリアッドの霊査士・アヤカ(a90281)は静かに冒険者達を見て。 「エミシ州西部のナミベの国。鬼は、その海岸に巧みに船を着けて、ナミベ本領と第2領、第3領を一度に落とそうと画策していますわ」 広げられた地図の中で、海岸線の数カ所に印を入れていくアヤカ。 「既に、援軍として参じて戴けたミナモの武士団と、アオバの武士団が配置に就いて戴けていますが、他の国の武士団は数に入れて考えないで宜しいでしょうね……」 笑みを絶やすことのない霊査士が、沈黙と共に眉根を寄せ。 「……短い時間で、鬼を海岸線で撃退しないといけませんわ。相手はこのナミベの国を支配していた存在。既に抜け道や弱点も承知の上でしょうから、城砦が役に立つとは思えませんわ」 蹂躙することに長け、人の命を露程にも感じない存在が、今海の上にいる。 戦船を揃え、海上で備えたくても、トオミフジ州、エミシ州に残存する船舶は戦闘に耐える物ではなく。 冒険者達が選べた戦術は、水際で鬼の上陸を叩くという策だった。 「鬼は大船団をしつらえて、一度にナミベを攻め滅ぼそうとしています……武具も、ナミベの鉄を使った良質のものを揃えている様子ですわ……苦戦は必死ですが、ここで護れなければ、エミシ州のみならず、一気にキナイまで攻め込まれる可能性がありますわ」 鬼の驚異を振り返り、アヤカは冒険者達に告げる。 「皆さん。どうぞこのエミシ州を鬼より御守りください。ひいては、それは楓華を護ることに他なりませんわ。どうか……」 祈る様に。 願う様に。 深く、深く頭を垂れるアヤカ。 時は刻一刻と刻まれ、夜の帳の中に潜む狂気が、今正に解放されんとしていた。
楓華列島の夜。 満ちた月が徐々に欠けてゆく夜。
だが、今は天に輝く月明かりが、灯火無くとも足下を煌々と照らし、海行く船も暗礁を知ることができる程に。
草木も眠る時刻――。 時は満ちた。 死んだ者達――。 我が父。 我が母。 我が子――。
何故、死なねばならぬ。 何故、俺だけが生きている。
この手を染めるは、憎き貴奴の血潮。 この乾きを潤すは、阿鼻叫喚の地獄絵巻。
額に伸びるこの角は、貴奴らへの怒り。 怒りと。 憎しみと。 絶望が頭蓋を割って伸びた、誓いの証――。
怒りは、全て仇に。 腕を引き裂き、足をもぎ取り。 頭蓋を断ち割り、臓腑を掴み出し。 癒えぬ乾きを満たす為。怒りの矛を貫く為に。 俺は来た。 全ての元凶、天子に尾を振る者共を、この世より消し去る為に。 「全軍、我に続け! 天子に尾を振る狗共を抹殺し、我等が怒りの深さを知らしめよ! 我等が悲しみを刃にし、狗共を引き裂くのだ!」 2の将。 鬼の軍を任された、赤色の肌に筋骨逞しい四肢を持つ戦士、ガドウ。 エミシ州の破壊と、楓華の掌握を命ぜられた鬼の将達の要の1つ。 「ガドウが動いたか。我等も行くぞ。船団に前進を伝えよ!」 1の将。 2の将配下の精鋭部隊の3倍にもなろうかという本隊を指揮する、鬼の軍勢随一の参謀にして、大王の覚え厚き知将、ショウキ。 キナイのドリアッド抹殺を命じられ、手始めにアオバの『八門遁甲結界』を破って見せた知将でもあり。 彼らの見やるは、月明かりに浮かび上がるナミベの海岸。 「後れを取るな! 天子の狗がどれ程のものぞ! ガドウやショウキに我等が船団が引けは取らぬ!」 海岸の制圧、海上での戦闘に長けた賊将ラゴウ率いる海賊船団。 規律や規範など無き、無法者の中の無法者達が操る船は、小型ながら1の将、2の将の船を抜き去り、白波を蹴立てる速度で進み。 「……やれやれだ。男共はことある毎に死にに行きたがる……生き残らないで、何が勝利だい」 3の将。 冒険者達がエミシを訪れ、初めに会ったかった女将軍スズカ。 戦で強者との戦いを好み、面倒ことを嫌うが故に、1の将と反目も多いが歴戦の強者。 長い黒髪を風になびかせ、手勢を率いて挑む。 怒りと、憎しみと、恩讐の権化達。 血湧き、肉躍る『宴』が始まろうとしていた。
■参加作戦選択解説(1)湾中央部の海岸線を封鎖する 海岸線を封鎖し、1の将ショウキが指揮する鬼の本隊の上陸を阻止します。 最も多くの鬼達が上陸を目指す地点となりますので、水際での攻防にはかなりの激戦が予想され、数多くの熟達した冒険者の参加が必要になるでしょう。 但し、鬼との戦いに於いて、実力を伴わない蛮勇は死を意味しますのでご注意ください。 (40レベル以上推奨)
(2)湾左側で敵を迎え撃つ 湾左側に展開して、別働隊として上陸を目指す2の将ガドウ率いる鬼の精鋭部隊を迎え撃ちます。 ここの守りを突破され、別働隊の上陸を許せば、鬼の本隊との挟撃を許すこととなり、戦況は著しく不利になります。 相当の実力者でなければ、逆に返り討ちにあうことも予想されます。 持てる実力を如何なく発揮して、鬼部隊の上陸を阻止するべく全力を尽くしてください。 (50レベル以上推奨)
(3)湾右側からの上陸を阻止する 湾右側の守りを固めて、賊将ラゴウ配下の鬼の海賊兵団が上陸するのを防ぎます。 他の上陸部隊と比べて錬度はやや低いものの、水練を得意とする者も多く、水際での戦いには長けていますので油断は禁物でしょう。 湾左側と同様に、海賊兵団の上陸を許せば、鬼の本隊との挟撃を許すこととなります。 (31レベル以上推奨)
(4)後方を警戒する エミシ州に潜んでいるだろう鬼達による奇襲に備えて、後方の守りを固めます。 現在、3の将スズカ率いる鬼の遊撃部隊の動向が依然として不明となっており、大規模な奇襲なども十分に予想されますので、こちらにも人数を裂いておく必要があります。 また、後方の守りが堅ければ、挟撃を受けた時に被る被害を抑えることができるでしょう。 (31レベル以上推奨)
|
|