<女神フォーナとの交流会>

 ユリシアです。
 円卓の方針により開催が決定した『女神フォーナとの交流会』について、お知らせします。

 交流会は、1月31日(木)の午前10時から昼食を挟んで午後6時までの間、旧カダスフィアフォートに建立された女神フォーナの神殿で開かれます。

 交流会に参加する旅団長の皆様は、1月28日までに出席の確認を行ってください。
 今回は限られた時間での交流会となりますので優先順位を考えて行動するのが良いと思います。

 なお、女神フォーナ様は、とても親しみやすい方ではありますが、多数の質問を並べたてて返答を迫ったり、無理難題を要求するといった失礼が無いように配慮をお願いします。

 女神様との交流会が、楽しく有意義に過ごせる事をお祈りしています。



■参加作戦選択解説

 女神フォーナとの交流会で行う行動を指定して下さい。
 また、なんらかの理由で参加を見合わせる場合は、参加しない事を選択する事もできます(リプレイには登場しません)。

※参加の注意
 プレイング期間は1月28日(月)の朝8時30分までです。
 リプレイの発表は1月31日(木)を予定しています。

 このリアルタイムシナリオには、1月18日午後15時の時点で円卓に参加できた旅団の団長だけが参加する事ができます。
 参加資格のある旅団は以下の通りです。

Forest villa 【アルテミシア】/冒険者旅団『蒼』/六風旅団/閃きの剣/蒼の軌跡/
虚ろなる社『朧龍殿』/最強の誓い/移動診療所『東風』/移動楽団ワールウインド/
無限の剣/ヴィンドオブニル蒼騎士団/アルカナ魔法騎士団/隠れ家ヘよーこそ/
アクセサリーハウス『幻想曲』/クズノハ忍法帖/蒼翼の騎士団/梁山泊/湯の瀬遊撃隊/ ♪灼魂〜FireBall〜♪/傭兵酒場−ライジング・サン/稀文堂/不死教戒/黎明の盾/ハールファウス修道会/合縁奇縁〜輪廻が結ぶ糸〜/恋愛探求旅団 『赤い糸』/
大衆食場 仰天龍/ TRICK OR TREAT/城壁はじっこ見張り小屋/【CLOVERS CAFE】/
Dr.ケイツ診療所/TOY BOX 〜月下のサーカス〜/虚奏庭園/星煌騎士団/
夜行性のカタツムリ/雲燿の風/最強部隊「Clash Negros」/麟凱機動兵団/
【旅団帝国】神聖爆乳帝国/翼ある矢/緑翠館/赤の太陽 銀の月/銀淵のクレイモア/安らぎの庭園/ †glitter school†ぐりたぁすくぅる/アッシュ辺境伯領/幻夢旅団【雪風】/
アパート「赤まりも@北一番通り」/タイタンギア/隠れ茶屋―朧月―/
邪教の館☆悪魔の集う場所 /木漏れ日広場/零‐ゼロ‐/+RESTAURANT*めちびち+/天使の診療所/トゥース探偵事務所/恐竜王国/茜さす帰路/連理の輔翼/
六等星の館/四季の色/漆黒の翼/硝子の社/薫柚亭/闇の城/作戦会議室/
マクガドル探偵社/ Flying Link/風の中に浮かぶ風皇殿/オレンジの丘の洋館/
芸人一座・カルミア/蛍火幻灯/芝生でお昼寝♪/プレイヤー憩いの場/冥暗天騎士団/天使連盟/風の宿/遊楽遊楽本舗 海月堂/盗賊ギルド“夢幻のつばさ”/
とんがり耳特命隊/戦塵の使徒/戦闘旅団 竜剣衆/土曜日の実験室/
布団王国ぽわふか/ W.G探検隊/平面維持軍/食事処『夢幻』/月詠奏鳴曲/
SHINING‡HEARTS/ †*。・Shooting Star・。*†/ † Only One †/ユグドラシル/
大陸広域救助団!/気まぐれ喫茶/海賊団『Blue Haken』/《ナイツカラード》/
ランドアース闘技大会愛好団/フローリア学園/九尾神社/ ♯LightΨGarden♯/白狐荘/
(旅団規模順並び)

※補足
 途中で円卓旅団の入れ替わりがあった場合も、交流会に参加できるのは上記の100旅団の団長となります。
 プレイング締切までに団長が交代した場合は、交代後の団長がプレイングを掛けるようにしてください。



<リプレイ>

●交流会、開幕
 女神フォーナとの交流会に参加する団長達は、旧カダスフィアフォート跡に作られた、女神フォーナの神殿を訪れていた。
「皆さん、遠いところをよくいらっしゃいました」
 微笑みを浮かべ、旅団長達を出迎えたのは、女神フォーナその人だ。
 まるで無防備に見える女神の姿に、嵐の眷属・アルロ(a10672)は眉を潜める。
「もし敵対的な存在がフォーナ様に害を及ぼそうとした時、自身を守る手段はあるのですか?」
「心配して下さっているのですね、ありがとうございます。ですが、この神殿にいる限り、ドラゴンが私を見つける事はできませんから、大丈夫ですよ」
 そしてドラゴン以外の存在ならば、自分を害しようはずもない……女神フォーナは、ランドアースの住人達を信頼しきっているのだろう。
 多くの客を迎えたせいか上機嫌なフォーナに導かれ、一行は女神の広場へと辿り着く。
 雪のフォーナ感謝祭でも多数の冒険者が踊っていたこの広場が、交流会の行われる場なのだ。
 並べられたテーブルに、軽やかに跳ねる靴音・リューシャ(a06839)が、団員と共に作った菓子をテーブルに並べていくのを、神を斬り竜をも屠るメイドガイ・イズミ(a36220)が手伝っていく。
 朱陰の皓月・カガリ(a01401)や幼き眩惑の狐姫・セレス(a16159)も手伝い、広場には紅茶の香りが漂いはじめた。

「お目通りの機会を設けて下さり感謝デス。どうかこれからも私達が進む道にフォーナ様の加護がありますように……同盟諸国を見守って下さい」
 夜舞蝶・ルゥ(a08433)がぺこりと頭を下げて、交流会は開始される。
 生命と魂の賛歌・カズハ(a01019)が竪琴を軽く爪弾いた。
「では僭越ながらこのカズハ、盛り上げ役を務めさせていただきます!」
「それじゃ、俺達も。女神様と一緒なんて、なんか緊張っスねぇ……!」
 カズハに続き、灼炎の歌音・カノン(a50135)もまた、月輝皇・ルナンガ(a30566)と共に弦楽の響きを奏でた。
 カズハ達が疲れた時に備え、暗闇に響くひとすじの歌声・ヒカリ(a39091)は楽器を手に待機。
 玻璃のみぎわ・アネモネ(a36242)も伴奏を始め、広場には柔らかな雰囲気が漂い始める。

「フォーナ様、今と昔では紅茶の味は変わりますか?」
 我は破滅を断つツルギなり・ルビナス(a57547)の問いに、フォーナは頬を緩めた。
「今も昔も、こうしてゆったりと味わうお茶の味には、淹れて下さる方の心が映し出されるような気持ちが致します。……とても美味しいですよ」
 ティーカップを優雅な所作で口元に運び、フォーナは花の咲く様な笑みをこぼす。

「まあ、なんだ……フォーナ様の祝福には、感謝してるよ、ホント」
 夫婦である親愛なる隣りの魔王・マオーガー(a17833)と闇翳る月明・ルーシェン(a16220)が、かつてフォーナの祝福を受けたことに礼を述べる。それを見て、雷神天狐・シーグル(a27031)は自分の携えて来た質問を投げかけた。
「フォーナ様は、なぜ祝福を覚えて下さるようになったんですか? それに、感謝祭が冬の季節に祭として残るようになった由来やエピソードになった出来事も、あったら教えて下さい」
「『祝福を与えた人を覚えておく』のが、私の能力だからです。当時の人々も、とても喜んでくれて、お祭りをしてくれたのですよ」
 神の時代から今の時代に至るまで、その祭りが生き残っていたということのようだ。
 続いて挙がった質問は、フォーナを含めた神という存在そのものに関することだった。笑劇の伝道師・オメガ(a00366)が、問う。
「フォーナ様達のいた神の世界は、平和なんですか?」
「平和といえば平和です。意見の対立はあっても、暴力で言う事を聞かせようという事はできませんから……」
「今後もしも他の神々が再臨された時には、フォーナ様からも口添えをお願いしますぅ」
「ええ。ですが、神の世界からこちらに戻って来る神は、きっと皆さんと仲良くしたいと思っていますよ」
 意気込んで頼み込んで来る仙人・シズク(a17134)へ、女神は微笑でそう応える。
 神聖爆乳帝國皇女・ミシェル(a27427)は、女神達の姿が描かれた絵をテーブルに置いた。
「レーツェちゃんはどんな女神様で、ヒトをどう思ってるんでしょうなぁ〜ん?」
 この絵の端にいる女神がレーツェという名であることは、以前にフォーナの口から知らされている。今回は、その女神について、より詳しいことを知るための質問だ。
 少し言いづらそうに、フォーナは答えた。
「気高い女神でしたが、今はどうしているでしょう……神の世界では関わりが薄い者同士の関係は、だんだんと薄れて感じられなくなっていくのです。だから彼女が今、ヒトの事をどう考えているかは判らないのです」
「そうですかなぁ〜ん」
 フォーナの問いに、残念そうに頷くミシェル。不破の双角・ゼオル(a18693)は、今の話を確認するべく口を挟んだ。
「ということは、他の神様は今は何をされているのかは分からないのですか?」
「神の世界で普通に暮らしていると思います。とはいえ、私が直接他の方々の様子を目にする事は出来ないのですけれど……」
 申し訳なさげに言うフォーナに、ゼオルは慌てて話を変える。
「ところで、希望のグリモアは、なんという神様が作られたのですか?」
 グリモアが神の遺したものであるなら、女神フォーナに聞けば分かるはずだ。
 だが、その予想は、二つの意味で裏切られた。
「わかりません。少なくとも、私の知らないグリモアですし……皆さんの話を聞く限り、『神が与えたグリモア』であるかどうかにも疑問があると感じます」
 意外な答えに、月夜に咲く一輪の花・コトナ(a27087)は目を丸くする。
「では、『ザウス神の言葉に神々は従った。ただ一人従わなかった神は東方に秘密を隠した』と書かれた本を図書館で見つけたのですが……これについても、何か分かりませんか?」
「そちらも、知らない話ですね。少なくとも、私が神の世界に戻ってからの話だと思います」
 女神フォーナですら、希望のグリモアを遺した者の素性は分からない。
 白破徒・フィー(a17552)は不安げに問う。
「グリモアの誓いの内容は、神のご意志に沿うものなのでしょうか……?」
 冒険者を志す者が希望のグリモアの前で交わす、2つの誓い。
『ひとつ、自らの民を守り、助ける為の努力を怠らないこと。ひとつ、自らの力を高めるべく努力すること』
 それらは、神の意思にかなうものなのか。
 冒険者達にとっての根幹ともなる部分への問いかけに、フォーナは言葉を選ぶかのような様子で答える。
「どうなのでしょう……神にも色々な考えがありましたから」
 一つ言葉を切り、安心させるかのような笑顔で、
「でも、少なくとも、ザウスは正しいと信じていたようですよ」
「ありがとうございます」
 ほっとしたような表情で礼を言って下がるフィーに続き、ゼオルは逆にフォーナからの質問を聞いてみることにする。
「フォーナ様から皆に尋ねたいことはありませんか?」
「そうですね……皆さんが召喚獣を得た時、何か声を聞いた……といった事はありませんでしたか? 召喚獣の存在については、わからない事が多いですので、何かあれば教えてもらえると嬉しいです」
「皆にも、確かに伝えておきます」
 そう約束するゼオルに、フォーナは微笑んで応じた。

●ドラゴン、そしてギア
 和やかな雰囲気に微かに目を細めつつ、大地を翔ける蒼き翼・カナメ(a22508)は他の団長達が淹れたお茶を楽しんでいた。
「それにしても、フォーナ様は美しい……こうして交流会が出来るとは光栄だな」
「全くだ。しかし、まさか女神様と一緒に茶ぁ飲むことになるたぁなあ……」
 と、思い出したように、天魁星・シェン(a00974)は女神に話を向ける。
「つーかヒト族が思いあがって神は俺らを捨てたっつー神話が出てるわけだが、そのへんどーなん?」
「ヒトがドラゴンの力を得ようと望んだという事実が、神話になったのだと思いますよ」
 なるほどね、と呟き、シェンは紅茶を啜る。
 大神ザウスを除いた神は、ドラゴンとなったヒトを見捨て、この世界を去った。
 その後にどうなったかは、冒険者達も知る通りだ。
 ドラゴンは大神ザウスによって虚無へと放逐され、そして今、放逐されたドラゴン達は、憎しみを抱えたままこの世界に戻って来ている。
 この問いをきっかけにして、話は再び、真剣さを交えたものへと移っていく。

 翡翠色のレスキュー戦乙女・ナタク(a00229)は、同盟諸国の冒険者達が得たドラゴンウォリアーの力に関する疑問を、女神にぶつけてみた。
「ドラゴンウォリアー化することで、問題点ってないんですか? あと、私達の子孫がドラゴン化しちゃったりするようなことってないんでしょうか?」
「皆さんは、この世界最初のドラゴンウォリアーです。その力を読み解く事は、神の力でも行えません。……ですが、私は皆さんがその力を正しく使えると信じていますよ」
「はいっ、もちろんです!」
 ナタクは意気込んで頷く。
「ドラゴンは他の大陸まで飛ぶ事が可能なんでしょうか?」
 ドラゴンの力について改めて確認するのは、風舞淡雪・シファ(a22895)だ。
「不可能では無いと思いますが、かなり時間は掛かると思います」
 大陸と大陸との距離は、それだけ離れているということだろう。礼を言って席に戻るシファに代わり、蒼の閃剣・シュウ(a00014)がフォーナに訊ねる。
「ヴァラケウスのドラゴン界は、ここにあったカダスフィアフォートというドラゴンズゲートに出現したけれど……他のドラゴンズゲートは、放置してて大丈夫なのか?」
「ドラゴンが地上に戻ってくるならば、彼ら自身に馴染みの深い場所に出てくる筈です。それはドラゴンズゲートかもしれませんし、或いは、彼らの故郷かもしれません。ドラゴンズゲートだけを特別に警戒する事には、あまり意味は無いと思います」
 玻璃のみぎわ・アネモネ(a36242)も、ドラゴンズゲートに関連しての質問をぶつけてみる。
「私も一つうかがいたいのですが……ディアスポラの神槍は、どうして地下に向かって伸びているのでしょう?」
「そうそう、地下でずっと掘り進めてるよね」
 アネモネとナタクからの問いに、フォーナは軽く首をかしげた。
「ディアスポラの神槍は、もともとホワイトガーデンが崩れ落ちないように支える為のものなんです。ですので、これ以上伸ばす必要は無いと思いますが……おそらく、止まらなくなってしまっているのではないでしょうか」
 ドラゴンズゲートに関しても、古代ヒト族の作ったものと、神々の手によるものとでは、フォーナの知る知識にも差があるようだ。
 そう思いながら、探検隊隊長・ワイドリィ(a00708)が口を挟む。
「ディアスポラの神槍の話が出たところで幾つか聞きたいんだが……」
 ワイドリィは、矢継ぎ早にホワイトガーデンの再生のグリモアがある浮島に建っている神殿の役割、それにスカイハイコリドーの目的と使用方法を質問した。
「ホワイトガーデンの遺跡には、外敵からホワイトガーデンを護る働きと、そもそもホワイトガーデンを空に浮かせるための働きと、黄金の海を作り出す働きなどがあります。私はホワイトガーデンの創造にはかかわっていないので、詳しい事は良く判りませんけれど……」
 神と一口に言っても、それぞれの力に応じて、担っていた役割は異なるのだろう。
 落花流水落ちる花は水に流れ・ソウジュ(a62831)は抒情詩に乗せ、エンペラーズマインドにエンジェルが囚われてる事をフォーナに説明する。
「そういったことが起こっているのですか……とりあえず、真なるギアに捕らわれている間は黄金の海で眠っているのと同じ状態ですから、生命に危険は無いと思いますよ」
「だが、危険性が無いとはいえ、エンジェル達は迷惑している。真なるギアがエンジェルを取り込む機能だけでも止められないか?」
 しかし、底王・ゴオル(a07582)の頼みに、フォーナは済まなそうな表情を作る。
「ギア達……もちろん真なるギアも含みますが、彼らは神がこの地上に戻ってこない事を前提に自律して行動するように創られています。ですから、私達が操れるものではないのです」
「そうなんですか……」
 フォーナならばギアを制御するのではないか、と思っていた蒼剣の騎士・ラザナス(a05138)は内心で落胆する。
「ホワイトガーデン関連でもう1つ。ピルグリムについてなんだが……」
 再び口を開いたシュウは、ピルグリムの脅威について詳細に説明した。
「おそらく、邪竜と同じく異界の存在ではないかと思うんだが、どう対策すべきだろう?」
 少しの間シュウに聞かされた内容を吟味し、フォーナは口を開いた。
「異世界からきたものという予測は、きっと正しいと思います。ですが、おそらくピルグリムはドラゴン界と異なり、この世界との接点の無い世界からきたのでしょう」
 もしピルグリムの世界とこの世界が繋がっていたのなら、続々と新手のピルグリムが押し寄せて来ていただろう、とフォーナは言う。
「ですから、今いる存在を滅ぼせば、消滅すると思いますよ」
「なるほど……」
 だとすれば、その役目は同盟諸国の冒険者が負うべきところだろう。
 ホワイトガーデンの平和を取り戻すためにも、冒険者達は戦わねばならないのだ。

●地獄の底に眠るもの
 真剣な質問を時折交えつつも、交流会はおおむね和やかな雰囲気のままに進んでいた。
 これには湯の瀬遊撃隊旅団長の・ホノカ(a00396)や食通でも陶芸家でもない雄山・ドクター(a04327)、茜守狐・ジェネ(a27753)など、フォーナが質問攻めにならないよう、気を遣っている者がいたことが大きかっただろう。

「そういえばドラゴンズゲートに関して私も質問なんですけど、『ドゥーリルの灯台』屋上の像って誰なんでしょう?」
「古代ヒト族の方が作った像ですので、ちょっと私には判りませんね……」
 思い出したようにたずねた鉄鋼科学医科大全・アイシャ(a05965)に、女神は苦笑で答える。
「そうなんだ、かっこいいんだけどなぁ……」
 何やらうっとりした表情になったアイシャを脇に避けると、壁に耳あり障子に・メアリー(a14045)が問う。
「フォーナ様、『恋愛のグリモア』は存在するのでしょうかなぁ〜ん?」
「さぁ、それはちょっと……」
 どうやら、神であっても、全てのグリモアの名前を知っているわけでも覚えているわけでは無いようだ。
「ですが、皆さんが、その気持ちを強く持っているのならば、どこかにあると思いますよ」
 ふむふむと頷き、メアリーは続けて問う。
「フォーナ様のグリモアは夜のグリモアっていうそうですけど、固有の力があるかなぁ〜ん?」
「皆さんの領地の中にありますよ。でも、特別に考える必要はありません。固有の力もありませんし、既に力もあまり無いようですから……ちょっと寂しいですが、そういうものなのでしょう」
 グリモアにまつわる質問が出たのを機に、業の刻印・ヴァイス(a06493)は自分の質問をフォーナにぶつけてみた。
「伝説にある『猛毒のグリモア』、それに『魔石のグリモア』の場所を知っていたら教えてもらえないか?」
「……どちらも、地獄のグリモアですね」
 口にした瞬間、フォーナの顔に憂いが過ぎるのを、女神の表情の変化を注視していた華麗のお姫さま・ベルナデット(a05832)は目にした。
 ヴァイスは続ける。
「では、魔石のグリモアを奪ったというヴァンダル一族とは何者なんだ?」
「地獄の封印を解いた者達ですね。そのせいで、地獄は本当の地獄になってしまったのです……」
 地獄は、もともとこの世界を創造する際に、その害となった存在を封じた場所であり、実体の無いものだったという。
「それが、ヴァンダル一族が封印を解いたことで物質的なかたちを得てしまった……それが、現在の地獄なのです」
「なるほど、地獄に封印された穢れとは、そういうことであるかね……」
 エンデソレイ護衛士団に身を置き、日ごろ地獄の様子を見慣れている求道者・ギー(a00041)が呻くように呟く。
 昨年末、旧カダスフィアフォートに向かう道中で女神が語った『地獄の底にある触れてはならない災いと穢れ』こそが、それなのだろう。
「では、地獄への干渉を忌む理由は?」
「私が見たくないから……です。地獄は、私達神を不愉快にさせるもので満ちています。皆さんには美しく見えるものがあるかもしれませんが、神の目から見れば、地獄にある全ての物は、酷く醜く感じられるのです」
 なるほど、とエンデソレイ護衛士団に身を置くギーは応じる。
「好悪の念は抑えがたし……か。だが我々は既にノスフェラトゥと接触してしまっているのであるからな……。彼らが地獄で戦争中の他種族も、穢れた存在なのかね?」
 そのギーの問いに、フォーナは無表情に答えた。
「地獄にあるものは全てそうです。より深い階層のものならば、より穢れも大きいと思いますが、良く判りません」
 ノスフェラトゥが地獄の列強種族であるという説明は以前に冒険者達から受けていたものの、興味は無いようだ。
 それでも、沈勇なる龍神の魂宿りし者・リュウ(a31467)と星夜の翼・リィム(a24691)は、改めてフォーナに頼み込んだ。
「現在も地獄下層で戦争が起こってます。最下層にあるという災いと穢れを刺激しない為、仲介して頂けないでしょうか?」
 だが、フォーナは首を横に振った。
「どうしても地獄に関わりたいというのならば止める事はしません。もしかしたら皆さんの力で、地獄の穢れが払われるかもしれないのですから。ただ、地獄に関係する行いは、私に見えない所で行って欲しいと願います。地獄に対して私が出来る事は一つも無いのですから……」
 この願いは、フォーナの偽らざる心であるのだろう。
 この後、
「ザウスの死後に解けたロードの封印と同じく、地獄の底にある触れてはならない災いと穢れが解放された可能性があるのでは?」
 と、地獄の危険についてギーが問いを発したが、フォーナは、
「それを知る為には、地獄の最下層まで確認に行かなければなりません。可能性はありますが、確かめる事はできないでしょう」
 と応えただけだった。
 こと地獄に関する限り、フォーナの助力を得る事はどうやら出来ないようだった。

「さて、そろそろお昼の時間ですよ!」
 重くなりかけた空気を和ませるように、盾に護られし色無き配奏者・メビュルス(a49563)がそう告げる。
 その言葉を裏付けるかのように、大食堂の方からは、良い匂いが漂って来ていた。

●未知の大陸
 昼食は、闇夜の鴉・タカテル(a03876)や食事処『夢幻』の団長である夜駆刀・シュバルツ(a05107)、それにランドアース料理大会優勝の経歴を持つクイーン・マリー(a20057)らが、協力して準備した。
 荒波を穿つ海賊娘・ランディ(a36144)が持ち込んだ魚介類などもふんだんに使われ、質の良い食事が振舞われる。

 歓談の中で、城壁の姫騎士・サクラコ(a32659)がした質問が、冒険者達の知らない大陸について話題が移行していくきっかけとなった。
「神様達がこの世界にいた頃、ドラゴンの他に脅威となっていた存在はいましたか?」
「いなかったと思います。この世界の根源であるワイルドファイアは、神もドラゴンも超越した力を持っていましたが、悪意を持つものではありませんでした」
「こ、この世界の根源? 大大怪獣ワイルドファイアが?」
 思いもよらぬ話を聞き、目を瞬かせるサクラコ。
 ワイルドファイアが偉大な存在であるという話は以前聞いた事があるが、フォーナのその言葉には、流石に驚いて二の句を繋げない。
 その間に、黄金の林檎姫・ルゥル(a14115)は別の質問を切り出す。
「フォーナ様、ランドアースの西に、私達がまだ知らない大陸はあるのでしょーかなぁ〜ん?」
「確か無かった筈です」
「そうだ、フォーナ様。ワイルドファイア大陸の、大体の形を教えてもらえませんか?」
 リィムの問いに、フォーナは簡潔に答えた。
「偉大な存在であるワイルドファイアを模した姿になっていますよ」
「え?」
 紙とペンを出そうとしたリィムの動きが止まる。
 旅団長達は、頭の中で大怪獣ワイルドファイアの姿を思い浮かべた。
「……カニ、の形?」
「いえ、ですから、ワイルドファイアの姿を……」
 話が堂々巡りになりそうな気配を感じ、リィムは、別の大陸についても聞くことにする。
「で、では、コルドフリード大陸の形はどうでしょうか?」
「コルドフリード大陸はタロスの皆さんが作り出したものですので、現在の姿は私にも分かりません。タロスの皆さんが、地形を変えてしまっているかも知れませんから」
 そしてフォーナは1つの、そして重要な事柄を告げた。
「タロスの皆さんは、私達神と共にドラゴンとの戦いに参じてくれた方々です。きっと皆さんの力になってくれるでしょう」
 コルドフリード大陸に住まう未知の種族タロス。
 対応さえ誤らなければ、彼らもまた、同盟諸国の冒険者の仲間となってくれるのかも知れない。

 他方、六風の・ソルトムーン(a00180)は、海中に没したとされるフラウウィンド大陸について訊ねることにする。
「フラウウィンド大陸について詳しく訪ねたい。位置はどの辺りになるか?」
「ランドアース大陸からでしたら、北東の海の彼方ですね」
 その位置関係から、以前にサンダース号の乗組員達が発見した、海に沈んだ大陸がフラウウィンド大陸であるのは、どうやら間違いないようだ。
 バーレルの護衛士である緑の記憶・リョク(a21145)は、フラウウィンド大陸について抱いていた質問をフォーナにぶつける。
「フラウウィンドの民がチキンレッグの祖先というのは本当のことなんすか?」
「それは、私がランドアースを去ってからのことですから……ちょっと分からないですね」
「じゃあ、自分達を作ったのはどの神様なんすか?」
 再び問うリョクに、フォーナは微笑んで応じた。
「神が、それぞれの種族を作ったわけではありませんよ。グリモアを巡る争いの中でヒトがその姿を変えていった……あなたがたチキンレッグも、その変化の一つなのでしょう」
 女神の言葉に、リョクは現在生きる種族は、古代ヒト族が戦乱の中でその姿を変えていったものだという伝承を思い出す。チキンレッグも、おそらくその1つなのだろう。
 頭をかくリョクをさておき、悪を断つ竜巻・ルシール(a00044)は、より突っ込んだ質問をしてみることにする。
「フラウウィンド大陸を封印した『七柱の剣』の伝承を教えて貰えないだろうか?」
「『七柱の剣』は、ドラゴンと戦う為に作り出された兵器で、7本の剣です。それぞれの剣は、この世界の根源を成す存在の名を冠して作られており、その名に相応しい力を発揮しました」
 現在は、フラウウィンド大陸を海中に繋ぎとめているだろうと、フォーナは告げた。
 ドラゴンウォリアーの力を得た冒険者達にとっても、未知となる2つの大陸。
 そこには、果たして何が冒険者達を待ち受けているのだろうか。

●交流会、閉会
 女神フォーナとの交流会は、その後もしばらくの間続いた。
 同盟諸国でも最も重要な判断を下す旅団長達との交流は、女神フォーナにとっても楽しいものだったのだろう。

 交流会が終わり、旅団長達を見送りに出るフォーナに、久遠槐・レイ(a07605)がたずねる。
「フォーナ様は、これからどうされるのですか……?」
「もし去られるなら、連絡する手段はあるのでしょうか?」
 アルロも重ねて問う。だが、去るかも知れないという懸念を、フォーナは笑顔で打ち消した。
「連絡する手段は、去る時が来れば、お伝えしますね。ただ、この地の封印が完全になされるまで当分の間は、この神殿に留まるつもりです」
 旅団長達の間に、好意的なざわめきが起こった。周囲の荒野を見渡し、征嵐の牙・ガリュード(a25874)とランディはフォーナに問う。
「この辺りの環境について、要望とかはないか?」
「必要なら、神殿迄の道を整備した方がいいかな?」
「そうしてもらえたら、ちょっと嬉しいです」
 フォーナは花の咲くような笑みを見せた。
「門前町とか出来て、ちょっと騒がしくなってしまうかもしれないけれど……」
「私は、一向に構いません。皆さんが、心楽しく暮らしていただければと思います」
 確認に対する返答を受けてレイが頷く横、金色の魔術師・リゼル(a22862)は、最後に問う。
「フォーナ様。同盟の皆に伝えたい事や、神々として同盟に絶対にして欲しくない事、または同盟に望む事などがあれば承ります」
 問われ、フォーナは微笑で静かに語る。
「自らの欲望を律し、他者の為に何かをする気持ちを忘れないでください。その心があれば、ドラゴンと化す事はきっとありませんから」
 人間への信頼が、そこには篭められているように感じられた。
 紫艶なる戦姫・フィオリナ(a19921)が、皆を代表して女神に礼を述べる。
「多くの質問に答えてくれて本当にありがとう。進むべき道が見えた気がするわ。この先は私達自らが考え、行動しないといけないわね。世界を幸せに導く為に……」

 女神フォーナとの交流会はこうして幕を下ろした。
 彼女から得られた情報をいかにして活かしていくのか、そしてこれからも地上に留まるという女神とどう付き合っていくのか……全ては、同盟諸国の冒険者達にかかっている。