<地獄列強進軍開始!>


 地獄第2層姦淫の都ミュントス。
 上層へ繋がるドラゴンズゲート『渇望の祭壇』の前には、大軍勢が控えていた。
 軍勢を構成するのは、このミュントスを支配するノスフェラトゥだけではない。
 ノスフェラトゥが操る無数のアンデッドが陣を連ね、そして、地獄下層の列強種族達の姿までも、その陣列には見受ける事が出来た。

 同盟諸国の冒険者達が地獄第4層『腐敗の森ナビア』で戦って来た『ディアブロ』。
 影の如き姿の単眼の列強種族『シャドウスナッチ』。
 不可思議な色に変化し続けるクラゲの如き姿の列強種族『セフトシルフ』。

 地獄の諸階層から集結した、これらの列強種族は、いまや遅しと出撃の号令を待っていた。
 多勢が集まっているが故の喧騒は、しかし彼らの視線の先に、十の人影が現れるのと共に、ピタリと収まる。
 地獄の列強種族達の前に現れた彼らこそはノスフェラトゥの最精鋭、『ノスフェラトゥ十将軍』達であった。

第1席
「黒将」
マクマディガン
第2席
「銀将」
ソーンダイク
第3席
「魔戦童子」
ヴァルガリウス
第4席
「貪狼紳士」
サイフォン
第5席
「騎神装攻」
ゼルバルガ
第6席
「天恵暗鬼」
マルヴァス
第7席
「イビルロード」
デスバリア
第8席
「暴君烈士」
ペヨーテ
第9席
「幻奏猟兵」
ギャロ
第10席
「白蓮清流」
イクリミア

 彼らが顔を揃えているという一事をとっても、これが大事である事は察されただろう。
 そう、地獄列強達はこれから、乾坤一擲の一大決戦を仕掛けようとしていたのだ。

 そして、地獄列強達の軍勢の前に、一人の偉丈夫が姿を現す。
 その姿を目にした地獄列強の誰もが、畏敬の念を称えた瞳に浮かべた。
 ノスフェラトゥ第1皇子にして、十将軍達の主。それが彼……冥王・ラグレイダークであった。
 十将軍第6席、天恵暗鬼・マルヴァスが声を張り上げる。
「我らが盟主、ラグレイダーク殿下よりお言葉を賜る。清聴、各々心すべし」
 そして、マルヴァスが退き、ひざまづくと、ラグレイダークはゆっくりと言葉を発した。

「大儀である」

 その一言がもたらした影響は絶大であった。
 ノスフェラトゥが、ディアブロが、シャドウスナッチが、セフトシルフが、一斉に頭を垂れる。
 ただの一言に含まれた何かが、地獄列強達に教えていた。
 彼が、地獄列強を統べるに相応しい『血』の持ち主であると。
 もはや、言葉はいらなかった。
 地獄列強は烏合の衆ならず。
 ラグレイダークの元に集う、一個の戦闘集団となったのだ。
 頃合と見て進み出たマルヴァスが、扇を振るって開戦を告げた。

「四手に分かれて進軍を開始せよ。目指すは地上、魔石の見下ろす地也!」

●地獄列強襲来!
 最初にその異変と遭遇したのは、渇望の祭壇の内部で警戒態勢をとっていた地獄の第1階層の守護を司る『終着の都エンデソレイ』の護衛士、十六夜に佇む葬闇の影月・シンマ(a12592)だった。
 下層、ミュントス側から響く、無数の足音。
 それに伴うのは、多勢の上げる喚声だ。
「まさか!」
 仲間達と共に警戒に当たっていたシンマは、すぐさま事態を悟った。
 危惧していた事態……地獄列強の攻撃が、起こってしまったのだ。
 それも、ドラゴンロードとの決戦の真っ最中という、最悪のタイミングで!
「急いで撤退する! 中央城砦に知らせるんだ!」
「わ、分かりましたっ!」
 黎燿・ロー(a13882)に祝福の旋律・プラム(a19706) が応じ、護衛士達は上層へと駆け戻って行く。
 彼らの後ろで、地獄列強の軍勢は、奔流のように渇望の祭壇の通路へと溢れ出した。
 モンスター達は瞬時に駆逐され、アンデッドはノスフェラトゥの新たな手駒となる。
 護衛士達の背中を追う彼らの勢いは、もはや止め処もないものだ。
 ほとんど転がり出るようにして渇望の祭壇の出口から飛び出したロー達を、渇望の祭壇のエルヴォーグ側入り口周辺で警戒任務に当たっていたミンストレルレヴァリー・カルフェア(a23806)達がぎょっとしたように見つめる。
「どうし……」
「敵襲だ! 数は多数!!」
「……!!」
 問いかけを遮っての一言で説明は足りた。
 破狼・レイズ(a19975) のウェポン・オーバードライブによる危急の報せが、護衛士団終着の都エンデソレイの本拠地であるエルヴォーグ中央城砦へともたらされる。
「渇望の祭壇で防げるか!?」
「無理だ、俺達だけでどうにかなるような戦力じゃない!」
 一路、エンデソレイが現在の本拠地をおく中央城砦へと撤退する護衛士達。
 団長である霊査士ディクスがいち早く退避し、同盟本国に事態を知らせる。
 だが、同盟諸国の冒険者達が集結するよりも早く、冥王・ラグレイダークに率いられた地獄列強は、続々と渇望の祭壇からエルヴォーグへとその姿を現しつつあった……。