<【監視業務】3月19日に起こった事件>

 3月19日に行われたレルヴァ大遠征……そのときアンサラーでは、死者の祭壇で起きた事件を目の当たりにしたのデス。
 一度陥落した経験もあり、すぐさま撤退を選んだ私達は、一人も怪我人を出さずに、死者の祭壇で起きた事を同盟諸国へと伝えたのデシタ。

【連絡】レルヴァ大遠征に関して【〜18日18:00迄】 白髏の霊査士・ロウ(a90004)

場所:会議室っぽい   2006年03月09日 17時   発言数:64
さて、数日出遅れで失礼。
来る19日はレルヴァ大遠征ということデ……
同盟全体がやや手薄になりマス。
アンサラーの仕事といえば死者の祭壇を監視するコト――

此方からでもあちらからでも地獄門が開かれる事態になれば、
大なり小なり戦いが発生することは必至だと思いマス。
同盟の大事のときこそ、この任務は地味に重要デス。

と、いうことで19日の皆サンの行動に関して、
念のため確認をとっておこうと思いマス。

【レルヴァ大遠征に参加する】か
【アンサラーで待機する】か、選択してくださいネ。

ついでにアンサラー待機を選んだ場合は
簡単にその日の行動を宣言してクダサイ。
(通常業務通りなら通常業務通りでも結構です)

締め切りは急ぎ足になりますが【18日18:00】迄デ。
それでは、宜しくお願いしますネ。

※天の声
どちらの選択を行ってもリアイベ参加(含む作戦旅団参加)は制限しません。
ただ今回のリアイベは重傷を負う可能性が高いイベントですので、慎重に判断してください。
大遠征参加を選択すれば、アンサラーで仮にイベントが発生したとき、アンサラーに居なかった扱いになります。
選択が間に合わなかった場合はアンサラーにいたと判定されますのでご注意ください(その場合、通常業務で行動を確認します)
以上ご了承の上、ご協力いただければと思います。

 1. レルヴァ大遠征に参加する
   (7)
 2. アンサラーで待機する
   (51)

緋の護り手・ウィリアム(a00690) 2006年03月09日 18時
既に「指令書の為の入団で、指令書入手後の退団も考慮してる」との入団届けで作戦旅団受理済みだが、俺はこちらだ。(2. アンサラーで待機する)
天速星・メイプル(a02143) 2006年03月09日 18時
残ります‥ 先程申告した通常業務の内容で、警戒と伝令役を務めるつもりですので‥(2. アンサラーで待機する)
天殺星・ユキノジョウ(a14273) 2006年03月09日 19時
俺も残って監視するっすなぁ〜ん(2. アンサラーで待機する)
黎燿・ロー(a13882) 2006年03月09日 20時
【質問1】待機を選択した際、行動を宣言。又は、通常業務通りとの事だが、この通常業務は現在のではなく、来週の通常業務の事であろうか。(2. アンサラーで待機する)
草原に舞う梟・ウィニア(a02438) 2006年03月09日 21時
私も待機ですね。当日も地獄門の直接監視に当たります。(2. アンサラーで待機する)
白髏の霊査士・ロウ(a90004) 2006年03月09日 21時
【回答1】来週の業務ですネ。ただし業務のほうを利用する場合、こちらの締め切り迄に書き込まないと有効にはなりませんノデ、ご注意くださいネ。
ジョーカーとは違う存在・カリス(a07331) 2006年03月09日 22時
此方で待機するつもりだ。周辺警戒に回り、何か有った際は声の矢文にて周囲へ呼びかけを行うよ…(2. アンサラーで待機する)

破壊竜・バジリスク(a10588) 2006年03月09日 23時
すみません、守りたい人がいるんです。(1. レルヴァ大遠征に参加する)
木陰の医術士・シュシュ(a09463) 2006年03月09日 23時
此処に残ります。当日は地獄門の監視に当たる予定です。(2. アンサラーで待機する)
緋炎断罪・ゴウラン(a05773) 2006年03月10日 00時
うぉ〜!トロとガチンコしたいよ〜!(涙)…などと叫びながらも、当日はアンサラー待機さ。地獄門を監視してるよ。ノスフェラトゥにしてみりゃ,同盟領が手薄になるのは好機だからねぇ、何か仕掛けてきても不思議じゃない。(2. アンサラーで待機する)
残響の・ルナシア(a20060) 2006年03月10日 00時
俺もトロウルと刃を合わせてみたいとは思うのですが、矢張り地獄門が不安です。祭壇の入り口付近に待機し、外からの侵入者(あれば)を防ぐような形で動きたいと思います。(2. アンサラーで待機する)
流水の道標・グラースプ(a13405) 2006年03月10日 00時
ほぼ通常業務通りで。監視と、あとは退路の確保を念頭に置こうかと。(2. アンサラーで待機する)
黎燿・ロー(a13882) 2006年03月10日 00時
此処で待機を。当日は、業務にて門の監視ではなく、団長の護衛をと思っている。■回答感謝致す。そして、先程、質問の際に投票してしまって申し訳ない。
求道者・ギー(a00041) 2006年03月10日 01時
アンサラーとしての役目は此方であるかとは思う、やはり不安である所もあるのでね(2. アンサラーで待機する)
白骨夢譚・クララ(a08850) 2006年03月10日 11時
…居なかった時に何かあれば、後悔する事必至ですので…此方で。いつもどおりの監視業務に、相棒さんのサポートに徹しております。(2. アンサラーで待機する)
紫眼の月・ヴァルゴ(a05734) 2006年03月10日 11時
...こちらで。来週も引き続き団長の護衛に専念するつもりだ。(2. アンサラーで待機する)

笑顔の約束・ソレイユ(a06226) 2006年03月10日 17時
わたくしはアンサラーを守りますの。二度と、あんな事にはならないように・・・(=x=;(2. アンサラーで待機する)
地蔵星・シュハク(a01461) 2006年03月10日 17時
向こうで動けるヒトはたくさんだケド、アンサラーは人数が限られてるカラネー……。(2. アンサラーで待機する)

紅水晶な気持ち・チュナ(a22407) 2006年03月10日 19時
こちらでいつも通りにいるのなのv(2. アンサラーで待機する)
花影・マサキ(a17214) 2006年03月10日 20時
…こちらで。当日は祭壇寄りの位置での周辺警戒を。何かがあった場合もいつもと同様で撤退援護ですね。(2. アンサラーで待機する)
又鬼・コロクル(a08067) 2006年03月10日 21時
…まあ、点呼でも見得切ってもうたしね。当日は周辺警戒の人に動向しつつ、有事には声の矢文を使って拠点等への伝令役をさしてもらいますわ。(2. アンサラーで待機する)
ヒトのダメ吟遊詩人・ナイチチ(a01310) 2006年03月10日 22時
ボクはこちらで〜。ただ、背後さんの仕事の都合で、来週はあまり行動できないかもしれないです…(汗(2. アンサラーで待機する)
蒼枷月響・ハーウェル(a18412) 2006年03月10日 23時
一振りの剣として…まず護るべきは此処ですから。当日は普段より警戒を高めつつ地獄門の監視を。(2. アンサラーで待機する)
九天玄女・アゼル(a00436) 2006年03月10日 23時
何をするか、は状況次第として…選択はこちらだな。(2. アンサラーで待機する)
静かなる灰色狼・ハサト(a14660) 2006年03月11日 02時
祭壇監視に従事・・・有事の際は皆に異変を報せに走ろう・・・(2. アンサラーで待機する)
紅い残光・カノン(a27217) 2006年03月11日 02時
私も残留組ですね。当日は祭壇監視と巡回の強化ですね。伝令の手筈等の再確認等もしておきましょう。(2. アンサラーで待機する)
空言の紅・ヨル(a31238) 2006年03月11日 05時
同盟中を揺るがす戦いに赴けないのは心苦しくもありますが…私のやるべき仕事はこちらに。残って周辺警戒を行おうと思います。(2. アンサラーで待機する)
朝霧・ニコラシカ(a17900) 2006年03月11日 11時
こちらです。拠点寄りの周辺警戒をしていようと思います。有事の際は凱歌での回復をし、撤退をいたします。(2. アンサラーで待機する)
朽葉の八咫狐・ルディ(a00300) 2006年03月11日 17時
有事の際は可能な限り異変や敵などの情報を集めてアンサラーから撤退し、正確な情報を外部に伝えられるよう心がけて行動します。(2. アンサラーで待機する)

古き森の・ユレイラ(a22991) 2006年03月11日 17時
こちらで…。アンデッドたちが怪しい行動を始めたりしないか注意しつつ巡回しています。(2. アンサラーで待機する)
白銀の星芒術士・アスティル(a00990) 2006年03月11日 21時
それなりに話し合いに参加してしまっているので此方ですね。後ろ髪は引かれますが、留守の間はお願いします(1. レルヴァ大遠征に参加する)
漂泊の剣士・ラクジット(a15762) 2006年03月11日 22時
何ができるかはその時にならねばわからんが、俺はこの地で待機しいつもどおりの警備をしていようと思う。(2. アンサラーで待機する)
看護商人・マーチェリッカ(a03587) 2006年03月11日 22時
何時も通り拠点で何かしてますね。(2. アンサラーで待機する)
灰銀の旋律・エンヤ(a18647) 2006年03月11日 22時
…こっちで、がんばる、よ。周辺警戒、してる。(2. アンサラーで待機する)
死徒・ヨハン(a04720) 2006年03月11日 22時
向こうには興味ありませんので。さて…。(2. アンサラーで待機する)
白焔の夢・ハルキ(a31520) 2006年03月11日 22時
こちらで。周辺警戒に当たりたいと思います。(2. アンサラーで待機する)
天魁星・シェン(a00974) 2006年03月12日 00時
こっちでな。(2. アンサラーで待機する)
紅天黒神戎王孫・ガンバートル(a00727) 2006年03月12日 00時
俺はこっちだな。アンサラーも気になるが、トロウルの存在を間近で見てみたくなり、遠征に参加する事にした。(1. レルヴァ大遠征に参加する)
天地の祈り・サディ(a13996) 2006年03月12日 07時
業務の延長で、何よりも皆さんの回復を優先しますなぁ…ん。(2. アンサラーで待機する)
薄滅霧色・イーチェン(a07798) 2006年03月12日 08時
こっち、です。いつもどおり、周辺警戒を、しているつもりです。(2. アンサラーで待機する)
アンサラーの吟遊詩人・ライラブーケ(a04505) 2006年03月12日 08時
残りますよー。拠点でいつも通りに駆け回りつつ、有事の際は回復支援をしながら撤退だよ。(2. アンサラーで待機する)
アルカナの・ラピス(a00025) 2006年03月12日 11時
まー あさゆっくりねたいのにゃー。(2. アンサラーで待機する)
真白の月鹿・コーリア(a00497) 2006年03月12日 20時
こちらで。レルヴァではアンサラーに何かあっても、すぐには戻れませんから……。(2. アンサラーで待機する)
真白の月鹿・コーリア(a00497) 2006年03月12日 20時
狽、なー!; ごめんなさい、切れました。行動は業務どおり、です。
焔の魔学術士・ミシェル(a06912) 2006年03月12日 20時
…一日だけ暇を頂きますね…個人的なものですが理由がございますので(1. レルヴァ大遠征に参加する)
輝銀の胡蝶・ミク(a18077) 2006年03月12日 21時
遠征に参加する予定…でしたが…当日参加が怪しくなったので…。行動は業務どおり…で。(2. アンサラーで待機する)
紫焔揺らめく宵闇の虚空・ルフェル(a07584) 2006年03月12日 23時
・・・・・・こちらに参加する予定だ。すまないが、しばしここは預ける。(1. レルヴァ大遠征に参加する)
打砕く焔・エルド(a13954) 2006年03月12日 23時
待機かのう。 行動は業務どおりで。(2. アンサラーで待機する)
静穏なる陽射し・レンリ(a05066) 2006年03月12日 23時
こちらに残って自分にできることをしたいと思います。(2. アンサラーで待機する)
黒紋の灰虎・カラベルク(a03076) 2006年03月12日 23時
自分がしたいこと、役目が一緒なだけ。僕がやるべき事をやるさー。(2. アンサラーで待機する)
地獄夜の番人・オズリック(a10046) 2006年03月12日 23時
此方で。何時も通り業務に励みます。(2. アンサラーで待機する)
歯科医・クルティア(a07373) 2006年03月13日 23時
久々に血沸き肉躍る敵、逃したくはなくてな…申し訳ないが、留守は任せた。(1. レルヴァ大遠征に参加する)
竜翼の聖女・シノーディア(a00874) 2006年03月14日 20時
こちらですね…。(2. アンサラーで待機する)
前進する想い・キュオン(a26505) 2006年03月14日 21時
遠征に参加したいのは山々だけど、正直此方の方が気になるんで…。当日は祭壇監視で業務通りに行動を。(2. アンサラーで待機する)
夢の浮橋・カクラ(a09664) 2006年03月16日 18時
私も普段の通り周辺警戒を。(2. アンサラーで待機する)
終焉の月に謳う華・エリオノール(a03631) 2006年03月16日 22時
こちらですね。あちらは戦力はそれなりにそろえられますけど、こちらは僕たちだけでどうにかしなきゃいけませんし。(2. アンサラーで待機する)
朱焔心韻・オウリ(a15360) 2006年03月17日 12時
こちらで、自分のすべき事を行います。(2. アンサラーで待機する)
瘋詠緋骨・ズュースカイト(a19010) 2006年03月17日 16時
こちらです。いつも通り、業務に励みます。(2. アンサラーで待機する)
愛を振りまく翼・ミャア(a25700) 2006年03月17日 20時
かなり悩みました…が、向こうにいる友人のためにもこの戦いには注力したいので、留守をお任せします。(1. レルヴァ大遠征に参加する)
緋の護り手・ウィリアム(a00690) 2006年03月17日 20時
申し訳ない、上で書き忘れたが、行動は通常業務の通りだ。
万寿菊の絆・リツ(a07264) 2006年03月18日 00時
いつもどおり周辺警戒に当ります、宜しく御願い致します(礼)具体的な行動は通常業務と同様のため省略させて頂きます。(2. アンサラーで待機する)
緑風の双翼・エリオス(a04224) 2006年03月18日 10時
何か起こりそうな気配だしね…こちらで。いつも以上に異変の気配に気をつけて当たろう。(2. アンサラーで待機する)
白髏の霊査士・ロウ(a90004) 2006年03月18日 23時
今回の件は以上デ。レルヴァに向かわれる方は、御武運ヲ

【監視業務】3月19日に起こった事件 白髏の霊査士・ロウ(a90004)

場所:妄想と愛憎渦巻く広場   2006年03月19日 15時   発言数:1
●報せ
 静かだった。
 風もなく光もなく、生きとし生けるものの息吹も無く。
 良くも悪くも慣れた停滞。
 そんな死の大地で周辺警戒に当たるもの達が、風を感じた。
 肌で感じる風は無い。血の臭いを感じる淀んだ空気の中、あまり良い予感ではなかった。
 だが、その予兆を見過ごして戻るわけにはいかない。
 ゆっくりと進めば、風と感じたものの正体は「声」であった。
 其の姿を認知したのは、古き森の・ユレイラ(a22991)――遠眼鏡を降ろし、振り返る。
 彼女の合図に頷いたジョーカーとは違う存在・カリス(a07331)が警戒しつつ、更に距離をつめる。其の間に又鬼・コロクル(a08067)が拠点へと声の矢文で「異変」を伝えた。
 これで情報は順々に後方へと伝わっていくだろう。
「おーい!」
 大きく手を振りながら「彼」は確かに護衛士達へと呼びかけていた。
 遠くてよくわからないが、黒髪の、ヒトのようだ。黒い鎧にこびり付く黒ずんだ血の跡が印象強い。恐らくは、皆が戦うために此処にいるものであるゆえに。
「アンサラー護衛士の方々ですね? 僕はミュントス特務部隊に所属している者です!」
 彼は必死に叫ぶ。
 一歩分でも早く、護衛士達に伝えんとする姿勢が見えた。
「僕らは失敗しました! 現在敗退して撤退してきています。アンデッドに追われて危険な状態です……至急、増援を頼みます!」
 其処まで彼が告げると、驚いたカリスが「なんだと?」と更に距離をつめた。
 しかし、黒い鎧の青年は慌てて背を向ける。
「僕はすぐに戻らないと……方角はこっちなので後に続いてください!」
 その姿に、護衛士達は様々な表情を浮かべた。
 焦り。起きてはならぬことが起こってしまったのではないかという、戦慄。
 彼の背に恐ろしい傷があったことも、事の大きさに信憑性を持たせた。
 だが、同時に、拭い切れぬ不信感があった。
 殊に、コロクルやカリスには実際の経験があった。
 明確に答えをつかめるわけではないが――

 彼らは知る由も無い。
 この報せが本来有り得ぬものであるということを。
 しかし虚実には、真実も混ざっているものなのだ。

●熾烈
 決断の時間はあまり猶予を持たなかった。
 そして短い決断で為されたこと。
 ――現段階の救援は不可能。
 現在、全てとは言わぬが同盟の戦力は、はるか遠い地、レルヴァに集まっている。
 この状況において対ミュントス特務隊が無念の壊滅を果たそうとも――否、なればこそ、アンサラーは死者の祭壇を守らねばならない。救援を選ぶにせよ、アンサラーの規模は彼らの規模と大差ない。数名送っただけでは大した力にもならず、かといって此処で戦力を極端に二分すれば、或いは総力をもって救援に向かえば、祭壇がおろそかになる。
 それでは、ノスフェラトゥの思う壺だろう。
 このドラゴンズゲートをノスフェラトゥの手に渡すことだけは避けねばならぬ――それが長期にわたってアンサラーが物言わぬ死者の祭壇を監視し続けた理由に他ならない。

 満を持して。
 荒涼の大地の上、死者が葬列を為していた。
 人の姿をしたものもあれば、獣のようなものもある。肉を持つものもあれば、骨のみになったもの、武器を持つもの持たぬもの、それぞれだった。
 死の匂いをこれ以上も無く振りまいて、彼らは暗い空の下に構える祭壇を目指す。
 その先頭に立つものは、微笑う重騎士・イツェル・スィート。
 誰も知らぬが対ミュントス特務部隊にて、凄絶な戦死を遂げたものである。
 今、彼は新たな生を持ち、新たな任を背負っている。
 アンサラーに特務部隊の壊滅を報せ、そしてアンサラーを潰すこと。
「やはり……信じたくは無かったのですが」
 苦い表情で花影・マサキ(a17214)が言う。朝霧・ニコラシカ(a17900)も静かに遠眼鏡を下げた。
 彼女達だけではない。
 誰も、二度と味わいたくは無かった、仲間との対峙。
 それが「彼が彼ではない」とわかっているから尚、やりきれない。
 生前の面影を残す微笑んだような表情で、重騎士の青年は斧を構えた。
 従うようにアンデッド達が襲い掛かってきた。

 戦いに赴いた護衛士達と、数の差は倍。雑魚も多いが数体、手ごわい相手も混ざっていた。
 決して多くは無いが、それがいっせいに襲い掛かってくる状況に、余裕があるかと問われれば首を横に振らざるを得ない。
 せめて拠点にいる者たちの撤退が完了するまでは、などというのはあくまで護衛士達の都合である。易々叶えてくれるはずもない。
 銀と赤黒色の炎を纏いながら、白焔の夢・ハルキ(a31520)が白い刃を振るった。よろめき傷つくも機動に何の支障も無いアンデッドが今度こそ動けぬよう、破壊の一撃を地獄夜の番人・オズリック(a10046)が与え、更にその後ろからカリスが矢を射、援護する。
 灰銀の旋律・エンヤ(a18647)が描いた紋章は光の雨となってアンデッドたちに降り注ぐ。戦場に歌が聞こえる。空言の紅・ヨル(a31238)の声はアンデッドから受けた傷を癒す。
 アンデッドたちの軍勢に紛れ、いつしか後方まで切り込んでいたのは――イツェル。
「ラシィさん!」
 すぐ傍にいたマサキが警告の声を放った。
 後方からの支援で前線で戦うものたちを支えていたニコラシカの一瞬の虚をつき、回り込んでいた彼が、斧を振り下ろそうとした時――背後から音も無く忍び寄った死徒・ヨハン(a04720)が鋭い一閃。
 痛みが無いゆえに、彼の反応は鈍かった。
 二度目の死にイツェルが何を思ったのかは、その笑んだような表情からは察せられなかった。
 聖槍が彼の背を照らす。何かが、光を浴びて輝いた。黄金の弓に銀の剣が交差した紋章――傀儡からの解放を祝福するように、ヨハンは静かに十字を切った。

 激戦の中、ふと護衛士達は此処までノスフェラトゥの姿を見ていないことに気がついた。
 同盟の者を使ったアンデッドを使い、感情と戦力を其方に向けて。
 彼らを操り命令を下したノスフェラトゥは何処へ。
 今更のうのうと、此の程度の戦力をぶつけ、嗤っているのか?
 否、決まっている。
 陽動――彼らの目的が「地獄門」であるのならば、それしかあるまい。
「皆……! 団長……!」
 今更気付いたところで手遅れ――だが、コロクルはその危惧を矢文で伝えることができた。
 撤退のための交戦をしているものたちに、彼は言葉を送る。錆びた剣が振り下ろされるのに気付き、身を翻して改めて矢を射る。
 戦いに、引き戻される。
 例え統率を失って、雪崩れるように、アンデッド達は襲い掛かってくる。
 だからといって、すぐに退くことは許されない。
 ノスフェラトゥにせよ、アンサラーにせよ――此処を崩せば、すべて失うのだ。

●命を賭す
 死者の祭壇内――
 監視を行っていたものたちは、外の異変を既に耳にしている。他の地に就いているものたちからの連絡を天速星・メイプル(a02143)が受け取ると、すかさず皆に知らせたからだ。
 彼らは改めて、監視のためではなく、戦闘のための布陣をとることになる。
 長きに渡る祭壇の監視で、勝手は身にしっかり刻まれている。
 だが手ごわい相手が直接攻め込んでくるともなれば、流石に緊張を覚える。
 できれば、外に構える者達で掃討できれば良いのであろうが――或いは、アンサラーのためを思えば撤退では有るが、此処で撤退することが相応しいのか。
「いよいよ、か」
 流水の道標・グラースプ(a13405)が呟く。震えた手を押さえる。何の心配も無く全力で叩き潰せる強敵、武者震いこそせよ恐怖で震えているわけではない。
 だがミュントス残党が攻めてくる、という事実に、何かしらネガティブな感情がないわけではない。
「しかしグドン地域にいる方々は一体どうなってしまったのでしょうか」
 壊滅は真か嘘か。いずれにせよ、何かがあったに違いない。
 草原に舞う梟・ウィニア(a02438)が表情を曇らせた。
「今は、わからぬ」
 悩むときは今ではなく「集中すべきは目の前の戦い」と求道者・ギー(a00041) が静かに告げた。
「危険と思ったらくれぐれも深追いはしないよう」
 振り返りグラースプは護衛士達を一瞥し。
 そして――決して仲間は立てぬであろう騒々しさに気付いた。

 黒く染まった紗の服に清楚なレースが目を引いた。ほっそりとした手足に整った目鼻立ち。
 華奢な外見と衣類から、一見大事に育てられた一国の姫か何かのようだ。だが彼女に従うは影のように黒いローブを纏っている数人と、夥しい数のアンデッドだ。どれもこれも恐らくは祭壇の何処かで造られるアンデッドだろう。
「愚か者、わたくしに拳を振り上げる暇があるのならば、わたくしの敵を殺しなさい」
 目の前にのそりと現れる立ちはだかったアンデッドに鋭い一声を浴びせる。上品で静かだが、絶対の命令であった。
 死者の祭壇を構成する敵はアンデッド。それら全てが護衛士達の敵であり、ノスフェラトゥの配下である。
「これ以上、進ませるか!」
 早速とばかり切りかかる緋の護り手・ウィリアム(a00690)の赤い曲刀を、毒々しい形状の衣類を纏う者が素早く命じて、アンデッドを盾にした。黒いローブをはためかせ、艶やかな色に髪を染めたノスフェラトゥが黒炎を纏い、応じた。容赦なく放たれる炎を避け、ウィリアムは構えを直す。
「この者どもは、我々が」
「当然でしょう」
 隈取も鮮やかな顔の者たちが恭しい言葉を吐き、少女は一蹴する。その様は滑稽だったが、一瞬の思案のうちに、少女は姿をくらませていた。
 さっと確認するとノスフェラトゥは五人。アンデッドが彼らを守るように次々と襲い掛かってくる合間から、容赦なくブラックフレイムを食らわせてくる。
 アンデッド達もただ闇雲に襲い掛かってくるのではなく、統率と絶妙なタイミングを突いて来る。
 すべてはノスフェラトゥの指示である。
 厄介な――舌打ちし、ならば薙ぎ払うまでと緑風の双翼・エリオス(a04224)はソニックウェーブを放った。アンデッド達が衝撃波に押され、倒れる。
 開いた空間に潜り込み、勢いのままウィニアが斬りつけると、屈強な体躯をしていようと術士であるがゆえに、力負けする――そのまま止めを狙う。
 サーベルが身体に触れる瞬間に合わせて、ノスフェラトゥは冷静に禍々しくひずんだ鎖を放った。
 しかし顕現している独特のフォルムのマントがそれを弾く。退いた彼女に合わせ、逆に前へと進んだ天魁星・シェン(a00974) は言葉には出さずありがたいと呟くと、拳を振り下ろした。
 近くに居たノスフェラトゥが悪魔の顔を持つ炎を放つと同時に、屈強なアンデッド達が壁のように突進してくる。ギーが押さえに入ると、白い光で出来た槍がアンデッドたちの上に落ちた。暗い祭壇の中で、ひときわ眩い光であった。
 皆に届くようにとヒトのダメ吟遊詩人・ナイチチ(a01310)が声を張り上げ、凱歌を歌う。風が吹き、光が傷を癒す。
 回復を阻止するつもりか、横たわるアンデッドを踏みつけにして、短刀を手にノスフェラトゥが切りかかってくる。
 死を望むような特攻だ。ギーの腕に短刀が刺さるも、そのまま斬り返される。傷はどう考えても、ノスフェラトゥの方が深い。前進する想い・キュオン(a26505)がとどめの一矢を放つと、血を吐いてそのまま後ろに倒れた。
 仲間と敵と死人が流す咽るような血が、元々ある祭壇無いの臭気や死の気配と綯交ぜになり、息苦しい。そんなことに気をとられるばかりではないが、視界が開けるにつれて、彼らの無謀とも思える食い下がりに舌を巻く。
「長い時間潜伏し……やっと辿り着いた此の地……生き延びたいとは…思わないのですか……?」
 ふいに口から出た疑問。白骨夢譚・クララ(a08850)の呟き。彼で無くとも、思ったことではあろう。賢く卑怯な彼らが、何故ここまでするというのか。
「今が死を厭わず事を為す時……!」
 黒い炎が燃え上がり、諸共食らい尽くそうとする。この期に及んで、自滅になりかねぬ暗黒縛鎖で、一人でも多く護衛士達の足を止めんとする。
 間が開けば、アンデッドが押し寄せる。その繰り返し。
 形勢はなかなか一方に傾くことは無い。数の利で負けようと、召還獣という強みが護衛士達にはあった。平凡なアンデッドであれば、数体絡まれようと、そのまま振り切れた。
 個としての力の差――それは若干護衛士達に軍配が上がったとして、尽きぬアンデッドとミュントスの冒険者の前に、数十名で対応するのは苦しいものがあった。
 然れども。
 ノスフェラトゥを倒しきれば、際限ないこの状況は終わる。

「どうしますか……?」
 一息をつき、木陰の医術士・シュシュ(a09463)が皆へ問い掛けた。
 ミュントス軍残党と思われる、五人のノスフェラトゥは討った。
 さて、此処で撤退するか否か。
 アンサラーの大事を思えば、此処で撤退するのも悪い案ではない。
 だが、肝心な少女の姿は、アンデッドたちに紛れて消えていた。
 繊細なレースの端さえ、捉えることは叶わぬ状況で――傷も負わせることも出来ず。
 時間はどれほどたったのだろうか。
 退くわけにはいかない。

●畏怖の鈴
 行く度に、アンデッド達が道を塞いだ。広い通路であろうと、階段であろうと、狭い通路であろうと、尽きることなく現れ、少女の指示なのだろう護衛士達を――皮肉な表現ではあるが――死の物狂いで食い止める。
 最後の扉を前に立ちふさがるものどもを薙ぎ倒し、やっと終わりが見えてきた。
 開かれた扉の先は広い赤い絨毯があたかも血のように。むせ返る腐臭は相変わらずではある。其処で護衛士達が見たものは、ザンギャバスに覆われた地獄門と、背を向ける黒衣の少女。
 門には光を放つ魔法陣のようなものが描かれており――不穏な空気を感じる。
「止めろ!」

 アンデッドたちに扉を封鎖させ、何人も通すなと命じ、荒い息を落ち着かせる事も忘れ、死したザンギャバスが門の前に張り付き形成する「門の蓋」に、少女はそっと手を添えた。
 一瞬不快そうに眉根を寄せるも、躊躇いは無かった。
「失礼致します、殿下」
 形式だけの言葉を紡ぐと、作業を開始する。
 少女が触れている部分から光が放たれる。途切れ途切れの光は線となり文字となり、大きな魔法陣のような形となった。
 だが、其処まできて堅く閉じられたはずの扉は、開かれてしまった。
 淡く光るそれを睨むように、少女は「早く、急いで……!」と焦りの言葉を洩らす。
 冷笑こそ似合えど、焦りなど似合わぬし、醜いとさえ思っていることだろう。そんな彼女が焦りのまま言葉を零したなど、恐らく生まれて初めてだろう。
 肉を裂くような音がして、熱の通わぬ身体が袈裟懸けに弾けた。
「どうだ!」
 手ごたえにようやく憎い相手を倒したと、緋炎断罪・ゴウラン(a05773)が瞳に勝利の歓びを浮かべたときだった。

 リィィン……

「!?」
 聴きなれぬ、鈴の音。
 それを耳にした護衛士達は、心の奥底から揺さぶられるような「恐怖」を覚えた。
 脆弱な鈴の音色であるにも関わらず、彼らの平常心をねっとりと絡めとるような、力に満ちた禍々しい音。

 同じく聴きつけた少女は口の端に笑みを浮かべた。
 艶やかに鮮血を散らし。
 無様に内腑を撒き散らそうとも、「成し遂げた」彼女は美しく、笑んだ。
「……あの方が……太陽さえ……統べられるのも……時間の」
「煩い」
 グラースプが暗い表情で、少女の紡ぐ言葉を遮った。
 戦いは、勝利は甘美なれども。不安は、重く彼の心を支配していた。
 肉体的な疲労よりも、心を蝕む何かが重荷であった。
 また、鈴は鳴る。不安を煽るように。

 リィィン……

●予言
 護衛士達の活躍により、死者の祭壇に侵入したミュントス残党軍の排除には成功した。
 だが、彼らの目論見を阻止する事はできなかった。

 彼らの目論見とはなんだったのか?
 地上と地獄とを結ぶ回廊には死せるザンギャバスの肉塊が鎮座し、地獄と地上との往来は閉ざされ続けている。
 つまり、彼らの地獄への帰還はならなかった。

 では、あの魔法円の光は、あの鈴の音はなんだったのだろう……。

 本部に戻った護衛士達は、団長のロウに出来る限りの情報を持ち帰って霊視の結果を待った。

 沈思黙考していたロウの無表情が微かに動いたのを、黒紋の灰虎・カラベルク(a03076)は確かに見た。
「大丈夫か?」
 状況が状況だ。心配そうに、というよりも何事かを確信するように紫眼の月・ヴァルゴ(a05734)が問うた。

「申し訳ありませんガ……このままアンサラーにいる事はできないヨウデス。アンサラー護衛士団はエルドールまで撤退しマス」
 そのヴァルゴの問いに対する、ロウの答えは簡潔な物であった。

 霊視によりいかなる情報を得たのかは判らない。だが、想像する事は容易であったかもしれない。

 そもそも、地獄と地上とを隔てる壁は、死せるモンスターザンギャバスの肉塊だけであった。
 この肉塊が、ノスフェラトゥへの抑止力となりえていたのは、モンスターザンギャバスが健在だと誤認させていた事につきる。
 仮に、モンスターザンギャバスが地獄の門の内側に陣取っているのならば、ノスフェラトゥ軍といえども容易に地上に侵攻する事は出来ないのだから。

 だが、その地獄の蓋が紛い物でしかないという情報が地獄に伝わってしまったとすれば……。

「ノスフェラトゥ軍の侵攻が再開されるという事だな?」
 九天玄女・アゼル(a00436)が問い直す。ロウは頷いて返事とした。
 ――そのアゼルの言葉に護衛士達は顔色を変えた。
 列強種族ノスフェラトゥが再び侵攻を開始すれば、監視業務を行うだけの戦力しかないアンサラーでは持ちこたえる事などできはしない。

「団長」
 短く呼びかけて促すは黎燿・ロー(a13882)だった。
 一刻も早く、後方のエルドール砦へ合流し防衛線を築く必要がある。
 そして何よりも、同盟本国に……円卓にこの情報を伝えなければならない。


 ノスフェラトゥ軍に動きあり……。
 暗鬱に広がる死の国の不穏な影が、ランドアースの澄んだ空を翳らせようとしていた。
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