<通常業務結果報告【5月】>

 5月の通常業務も無事に終了。
 この業務の中で、イリュードからエリーゼ団長が生きているという事を聞き出すことができたのよ。

通常業務結果報告【5月度上半期】 ノルグランドの霊査士・オウカ(a04194)

場所:作戦会議室   2005年05月11日 20時   発言数:3

●『支援要請』の狼煙作成が成功しました。


 カディス護衛士団の出立は、既に準備を終えていた故に慌しさこそなかったものの、非常に切迫したものとなった。
 ノスフェラトゥとの戦いに敗北を喫した同盟にとり、旧東方ソルレオン領(モンスター地域)の住民を守護することは急務である。モンスター地域東側の守護を担当することとなっているカディス護衛士団だが、その戦う相手は想定とは異なるものになるのかもしれなかった。
「では、後は任せたぞ」
「ええ、そちも頑張っ」
『団長ー!』
 カディスの石壁・イニチェリの言葉にオウカが返事をしかけたその時、カディス護衛士団の仮住まいとなっていたノルグランド城砦の入り口から、スピットとイヅモが走りこんで来た。旅装のカディス護衛士達が何事かと見つめる中、オウカの元に滑り込んで二人は荒い息をつく。
「……そちらも忙しいようだな」
「ど、どうしたの二人とも?」
「イリュードさんが来たんで戻って欲しいんですよ」
「団長に直接話がしたいんやそうで」
 二人の言葉に表情を改め、オウカはイニチェリを見やる。頷いたイニチェリに深く一礼し、彼女はノソリンに乗り込んだ。


「冒険者様は俺達を守るのが仕事だろう?」
 ユーヴィのおごった酒に口を軽くし、中年のリザードマンの男性はそう言うとさらに一杯ジョッキを呷った。カディスにいる一般人は元奉仕種族ばかりではない。
「あんた等はいいかもしれないけどな。俺達や俺のガキどもは、これから先もずっとここで生活していくんだぞ? カディスの護衛士様達が延々と戦って来たってのに、カディス城塞をなくしちまったら聖域戦を仕掛けられて勝てるのか?」
 何代か前からカディスで生活しているという彼は、列強種族同士の戦いもある程度の知識を持っているらしい。
「だが、現状ならばソルレオンが攻めて来る可能性は低いと」
「そう、そこだよ、そこ」
 ぴっ、とユーヴィを指差し、男は皿の上の腸詰をフォークで突き刺した。
「そう思っていたって、いつ事情が変わるか分からないだろう? 現に同盟諸国がエルヴォーグと手を組もうとしたせいで、ソルレオンとの中は一層悪くなったっていうじゃねぇか」
「む……」
 その言の正しさに眉をしかめ、ユーヴィはふとおかしな事に気づいた。
「その話、どこで聞いた?」
「え? ん……どこだったかな?」
(いくらなんでも知るのが早過ぎる)
 ゲート転送を行う事が出来る冒険者ならばともかく、同盟諸国の西の果てで一般人がその事を知っているのは妙だ。ユーヴィが手を顎に当てた時、横の席に見知った男性がどかりと腰を下ろした。
「クエス殿か」
「よう、黒の兄ちゃん。……どうも、煽ってる奴がいるんじゃねぇかね、こりゃ」
 噂の出所は分からんがね、と呟き、クエスは一枚の紙片をユーヴィの前へと滑らせた。
「これは?」
「領収書。……酒代って経費で落ちるかね?」
「無理だろう」
 私も自腹だ、と苦笑するユーヴィに、クエスは残念そうなため息をついた。


 カディス地域北西部、森の中。
「当たりか」
「聞き込みの甲斐があったようやな」
 同意の返事を一つ返し、ディックは湿った土を指でなぞるエルドを見やった。葦原から消えた死体の行く先を探る途中で出会った二人がたどり着いたのは、近辺住民からの情報を元に辿り着いた洞窟の前だ。彼等二人の視線の先、土は靴や骨の形にへこんでいる。
 葦原で消えた死体は、長きに渡るソルレオンとリザードマンとの戦争で命を落とし、回収されることのなかった遺体達だ。遺体を回収しようとしたセティが、その数の多さに頭を抱えていたのを思い出し、ディックは苦笑した。先日レイ達が調べた折には判然としなかったが、
「ひょっとすると土ん中から出て来たのもおるかもなぁ……」
「ともあれ、なくなっていた死体の数を考えると俺達二人だけで調べるのも危険か」
「場所は分かったことやし、いったん戻るとしよ。急いで討伐せんとあかんな」
 これまでの事を考えれば、例えこの一件が人為的なものであったとしてもこの洞窟にそれを為した者本人がいる可能性は低いだろう。そう判断し、ディックはエルドと共に急ぎ護衛士団本部へと帰還した。


「負けたようだな」
 正装をしたイリュードは、いきなりそう切り出した。
「……もう知ってるのね?」
「あれだけ派手にアンデッド共が闊歩して、しかも同盟の者達がそれを止めぬならば嫌でも分かる。北方、東方の国境線では、既に厳戒態勢だ……」
 ため息をつき、イリュードはオウカを見やった。
「さて、今回の訪問させてもらったのはそれとは違う件でな」
「?」
 不思議そうな表情を作るオウカにイリュードは咳払いを一つ。
「先日報告に来た者達が言っていた駐在の件なのだが」
「えーっと……あ、そういえばそんなのもあったっけ」
 ナミが提案していた事か、と思い出し、オウカはぽん、と手を叩く。
 一瞬呆れたような目つきになったイリュードは、頭を振って意識を整調、
「マルティアス護衛士団の決定を伝えよう。ソルレオンの正義は、卑劣な企みを厭わぬ東方同盟諸国の者達を我等の領内に置くことを認めん。……だが、マルティアス護衛士団の役割を果たすためにも、お前達東方同盟諸国がこれ以上ソルレオンの正義に反する行動を取らぬよう監視する役割は必要であると判断した」
(好き勝手言ってくれるわね……)
 心に細波が立つのを感じながら、オウカは表情を変えずに頷く。イリュードはそんな様子など知らぬげに、
「お前達に異論がなければ、私をはじめ数名がここに留まる事となるだろう。……異議はあるか?」


ノルグランドの霊査士・オウカ(a04194) 2005年05月11日 20時
【業務連絡1】アンデッドの巣窟となっている洞窟が発見されました。護衛士依頼が数日中に発令されます。

ノルグランドの霊査士・オウカ(a04194) 2005年05月11日 20時
【業務連絡2】ソルレオンからの使者(例によってイリュード)が護衛士団本部に滞在中です。次回の通常業務において、こちらからの返答を携えてマルティアスに帰還します。接触を希望する人は次回通常業務において『4.その他』を選択、詳細を記入のこと。

通常業務結果報告【5月度下半期】 ノルグランドの霊査士・オウカ(a04194)

場所:広場   2005年05月25日 23時   発言数:1

「同盟がヤバイって噂……? ああ!」
 ユーヴィの問いに、男は何度も頷きを返した。
「さっき聞いたよ。確か、ミュントス軍とかいう連中が北の方で暴れまわってるんだろう? あそこも治安が回復したばっかりで大変だねぇ……こっちも大丈夫なのかい?」
 またしても最新かつ正確な情報だ。思わず一歩前に出、ユーヴィは男を問い詰める。
「その話、誰から聞いた?」
「ん? ノルグランドの護衛士様だよ」
「護衛士だと……?」
「腕章をつけてたから間違いないだろ……あ、それになんだかソルレオンのアンデッドが出るとかいう話も聞いたな」
 広場の方へ行ったはずだと聞き、ユーヴィは走り出した。行きかう人を避け、村の広場へ通じる道を辿る。
 前方、一頭のノソリンを引いた男が村の女性達と会話を交わしているのを発見。加速を重ね、
「実は北の方で……おや、どうかしまゴフッ!?」
 危険情報を広めていたストライダーの忍び・ジンベエに、ユーヴィの全体重を乗せたドロップキックが炸裂した。

 教訓:下手に情報を広めると、民衆が不安を感じる事もあります。
 教訓2:でも、悪意を持って広めていた人は捕まっていません。


「団長……うわ」
「うわ、って何よ、うわ、って」
 扉をノックし、オウカの部屋に入ったティンは、内部の惨状に呆れと驚きの混じった声を上げた。
 護衛士達の相談の場と化している団長室は、護衛士達の持ち込んだ書類や資料で足の踏み場も無い。室内を必死で片付けているマリアに軽く会釈し、ティンは飛び石を渡るようにしてオウカの机の前まで辿り着いた。
「こんな手紙が」
「ん〜、何々?」
 差し出した手紙は、リザードマン王都キシュディムからの連絡を伝えるものだ。
「リザ領北部の国境線で旧モンスター地域からの避難民を受け入れるとか、警戒態勢を取るとかいう話みたいで」
「うちの管轄とはあんまり関係無いみたいね〜」
 ですね、とティンは頷きを返した。
「カディス護衛士団からの連絡があれば、こっちに来ますかね?」
「どっちかというと、円卓に直で行くんじゃないかしら? 旧モンスター地域東側ではミュントス軍の被害は出てないようだから連絡とかそうそう無いだろうけど」
「円卓と折り合いの良い護衛士団でもないですからね……ノルグランドと一緒で」
 思わず苦笑した二人は、そのままの表情で大きくため息をついた。


「結論から言えば……生きている。今は」
 エリーゼ団長の死罪は執行されたのか。
 シュウの問いへの答えは、そういうものだった。内心に安堵を感じながら、シュウは浮かんだ疑問をイリュードに投げかける。
「死罪は執行されていないのか?」
「ソルレオンの法はお前達が考えるほど非情ではない」
 イリュードは軽く肩をすくめた。
 彼の説明によれば、エリーゼの死罪が執行されなかった理由は3つある。
「まず、他者を庇って自ら死を選ぶという誇り高き行いを見せていた事だな。次に、尋問の中で改悛の情があると認められた事だ」
「……随分曖昧な基準のようにも思えるがな……」
 イリュードの護衛として傍にいたデューイは、そう口にしかけて答に気づいた。
「『ソルレオンの心』があるから平気なのか?」
「そういう事だ。我等の裁きの前で、下手な小細工など通じはしない」
 イリュードは頷きを返した。曖昧に見える基準でも、ソルレオンが行えば絶対のそれになるのだろう。二つ目までの条件でも、達成するのが相当に困難であろう事は容易に想像出来る。
「で、3つ目の理由とは?」
「3つ目は……『母国と関わりの無い事項において、己の最大限の力を用いてソルレオンに協力する』と誓った事だ。それによって大きな成果があれば、罪を減じられる事もあるだろう……至難ではあるが」
 イリュードは、多少言いづらそうにそう言った。エリーゼの持つ『力』と言えば霊査に他ならないだろうが、
(「……同盟諸国と関係の無い事柄で、霊査を必要とする……?」)
 普通の治安維持程度に用いられるとも思えない。
「……彼女は、何をしているんだ?」
「知ってどうする?」
 イリュードは静かに首を振った。
「お前達には命を救われた身故、ここまでは教えたがな」
 ため息を一つつき、クエスから聞いた話をそこに加える。
「ノスフェラトゥと進んで手を組もうとするような者もいる国の者を、ソルレオン領に立ち入らせる事は出来ん。……例外が無いとは言わんが、到底奨められたものではないな。それに……」
 エリーゼ殿があの場所で長く生きていられるとも限らない。
 言って立ち上がるイリュードに、シュウとデューイは愕然と視線を向けた。


「……あら」
 国境線を監視していたシルフィアは、東の方から歩いて来る一団に気づいて目を細めた。
「そういえば、今日がお帰りになる日だったのですわね」
 護衛についていたスピット達とソルレオンの国境警備隊に挨拶し、イリュードらの監視団はマルティアスへ通ずる街道へと消えて行く。
「監視団を受け入れることは決まったわけですし……これから益々大変になりますね」
「そうだね」
「ウェ、ウェルディさん?」
 振り返るシルフィアに、ウェルディは口の前で人指し指を立てて見せた。
「で、どうだい、国境警備隊の様子は?」
「今までと大差無い気がしますわね」
「おや、警備は厳しくなるかと思ったんだけどな?」
 眉を上げたウェルディに、シルフィアも首を傾げた。
「僕達を警戒していないとか……」
「そうだと、良いのですけれど」
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