<オープニング>

●覚悟
「ガタガタ抜かすんじゃねェーよ」
 動かない唇で、紅のアサッシン・ヨイヤミ(a12048)は誘いを跳ね除けた。甘ったるい闇の香りには怒りすら感じる。憎悪も殺意も苦渋も、そして空虚さも全て自分で自分が背負うと決めた道だ。手を血に染め上げて得た力は、彼の強靭な精神に付随している。
「指一本髪一筋分だって、オレの力を、テメェの好きにはさせねェーんだよ!」
 脳裏に響く囁きの主を、ヨイヤミは音に為らない声で怒鳴りつけた。
 甘いと叱られても、自分は自分なのだ。今更、変えることは出来ない。漆黒の世界で前後どころか上下の感覚も無く埋没して行きながら、神の道化・メロス(a38133)は思った。生きる意味を見失いたくない。自分は自分で在り続けたい。
「私は、私として、大好きな皆のところへ帰りたいんだ」
 大好きな、大好きな皆と共に帰るのだ。
 愛しき世界を楽風の・ニューラ(a00126)は強く意識した。笑顔と幸福に溢れた未来が欲しい。ドラゴンの力では得ることの出来ない目的が自身の裡には確りとある。そして守りたいものがある。だからこそ、帰りたい。
「俺は、今、此処で」
 全身を駆け巡る苦痛の中に、睡獅子・バルア(a31559)は暖かな存在を感じ始めていた。悲哀も絶望も乗り越えて、未来を見据える瞳が欲しい。共に笑い合い、泣き合った尊い記憶を忘れ去るくらいならば四肢を引き裂かれる痛みに何を思うことがあろう。
「折れず、挫けぬ心を手に入れる」
 彼の宣言は低く、微かに闇の中で響いた。
 生き続けていく日々に変わらず、飄風・カーツェット(a52858)と共に答えが在る。信頼に、信頼で報いたい。求める人に手を差し伸べたい。迎え入れてくれる人のもとに帰って行きたい。好きだと言ってくれる人に、大好きだと答え返したい。
「奪うことしか出来ん力なぞ、在っても誰も笑ってはくれんよ」
 誰もが自分自身で在り続けることだけを望むのだ。奪うだけの力に、誰かの微笑みを生む力は無い。だから、心は折れない。悪を断つ竜巻・ルシール(a00044)の足を踏み止まらせたのは、彼を想い、また彼が想う人々の顔だった。他者に絶望を齎す虚無の力など不要のものと、知っていたことを消切る前に思い出す。例え拒絶が痛みを生み、身を刻まれようとも、心が闇を耐えれば良いのだ。
 忘れられない記憶は誰にでもある。
 吸い込まれるような漆黒の淵で、流水の道標・グラースプ(a13405)は今も瞳に焼きついたまま離れることの無いある人の後ろ姿を思い出す。彼らが抗ったものに屈することは出来ない。暴虐の力に平伏すため、彼らが命を賭したのではない。グラースプは信頼を裏切らない。
「愛する人々を生かす為に、生きて帰す為に来たんだ」
 凍りついた頬に、薄い笑みを刻む。
「その彼らを傷つける力なんざ、頼まれても要らねえよ」
 冒険者の心に呼応して、周囲の闇が晴れていく。
 薄ぼんやりと、友の姿が目に映った。
「与えられ、制御できぬ力には如何なる価値も無い!」
 雷鳴をも凌ごうかと言う武勲詩抄・フレッサー(a37890)の声が響く。琥珀の煌きは、歩み来た過去を思い起こさせた。呑まれる力など必要とはしない。気遣わしげに荊棘の霊査士・ロザリー(a90151)の手を取り微笑み掛けると、彼女は僅かに瞳を緩めた。
「大丈夫。……私は、守られているから」
 欲するものは、冒険者として幾らか特異だ。霊査士は即ち、武力を捨てて至った身。力の誘惑に侵されることは無く、ただ祈るように向けられた数々の想いがその心を強くする。一般的な冒険者の務めは、民を守り己を磨くこと、であるのだろう。しかしながら、魔王様・ユウ(a18227)は自分を見失ってまで得る力に興味が無い。
「力とは、自らが制御出来てこそ意味のあるものです」
 実に愚問ですね、と彼は淡く笑みを浮かべた。
「制御の出来ない力など、破滅しか齎しません」
 そのようなものを手にして喜ぶなど、敗者の戯れ言に過ぎない。簡単に与えられる力と言うのも信用し難いものだ。死線を乗り越え、自らを研鑽した結果こそが力となる。ドラゴン界に堕ちた虚無の欠片にも惑わされず、冒険者たちはその力を強く払い除けた。

『そうか』

 しかし、ドラゴンロードの重圧は欠片も減じず、その声は脳髄に深く木魂する。
 鉄面皮の権威者が表情ひとつ変えぬまま、小さな意外性を愉しむ色を落ち窪んだ瞳に覗かせたような、えも言われぬ不安感ばかりが煽られた。

『おまえたちは既に、ドラゴンとなりし資格を得ているのだな』

 同盟諸国の冒険者は、やがてドラゴンに至るであろう。
 ドラゴンロードの言葉は、大神ザウスが遺した言葉を思わせた。奇妙な符合の一致に胸騒ぎを覚える。ドラゴンロードは更に続けた。

『なれば、その身に積んだドラゴンの力を呼び起こせ』

●変化
 周囲を覆った闇は、覚悟の意志が振り払った。
 しかし、次に感じたのは身体の内側から噴き出して来る深淵の闇だ。
 そもそも己の内側に芽生え始めていた力が、ドラゴンロードが齎した虚無の欠片によって歯止めを失い、自分自身へと溢れ出したのだ。今度は、無理矢理に植え付けられた黒へ抵抗するのとでは訳が違う。
「身体、が……!?」
 何とか抗おうと黒紋の灰虎・カラベルク(a03076)は口を開くも、込み上げた熱いものが喉を侵した。ごぷ、と嫌な音を立てて内側から血が零れ落ちる。まるで自身が灼熱の炎にくべられ、臓腑が焼け爛れていくようだった。確かに、力は欲しい。だが力を得て膝を折るか否かなど、その答えは選ぶまでも無い。だと言うのに心奥から黒に染められて行く。此れが努力では足りない無常だと言うのか。人を傷つけるために欲するものなど無いと言うのに、掛け替えの無い仲間たちの存在を感じても尚、灰眠虎・ロアン(a03190)の身体は蝕まれていく。大好きな人々と大切な居場所を求める心が、帰り道を見失ったような孤独感に苛まれる。
 誰しもが悟った。
 これは、ドラゴンの力を受け入れるか否かと言う問題ではない。
 想いに関わらず自分自身の肉体が、そして呼応するように精神が、刻一刻とドラゴンへ変化して行きつつあるのだった。
「やめろ……!」
 誓桜の重騎士・キースリンド(a42890)は向ける先も判らない制止の言葉を吐く。
 身体を引き裂く痛みならば幾らでも堪えようと言うのに、心が切り開かれる苦痛に慟哭した。魂が抗い難い邪悪に染められて行く。守りたいものを意識するように、彼は胸のロケットを強く抑えた。
 至らず失った命の重みに再び不安が膨れ上がる。しかし、心が押し潰されそうになる中で、不意にその痛みは和らいだ。
「ミレナリィドール……?」
 鏡夜奏想・リア(a13248)は思わず目を見開く。
 願うものは暴力ではない。信じてくれた仲間に応えるため、救いたい命を出来る限りで支えたいだけだ。我儘だとしても譲れない、彼女にとって大切な綺麗ごとを意識すると、リアの召喚獣は彼女を護るように身を寄せて来た。魂を内側から侵して行く暗黒の力が、召喚獣によって阻害されたとでも言うのだろうか。思わずミレナリィドールに手を差し伸べたとき、再び、驚くべきことが起きた。
 指先が触れる寸前、召喚獣が光に変わる。
 召喚獣は金色の粒子にまで分解され、きらきらと優しい煌きを放ちながら、冒険者の身体の中へと吸い込まれるようにして消えて行ったのだ。

 あなたは、わたし。

 わたしは、あなたの魂の力。
 あなたの精神が、わたしを魂の回廊から呼び出した。

 だから、わたしが居る限り、あなたは邪悪に呑まれることが無い。
 とても優しい声が聞こえた。
 ずっと昔から知っていたような、郷愁を抱かせる懐かしい声だ。自然と唇から洩れた自身の声のようでもあり、誰のものでもあるような不可思議な音。言葉は心にゆっくりと染み入り、邪悪に誘う圧力から魂を解放した。
 しかし、沸き起こる力は消えていない。
 溢れ出る漆黒の闇は冒険者たちの強靭な精神の内にて、太陽のように強く目映く、煌々と輝き始めていた。この力があれば、邪悪な存在ドラゴンにさえ立ち向かうことが出来るだろう。
「我が身砕こうと、想いは砕けず。人間を舐めるな!」
 握り締めた拳は生かすためのものだ。抱く信念に偽りはなく、チャンピオンハート・トウガ(a42909)は愚直に声を張り上げる。此れこそが求めた力なのだ。虚ろな闇ではなく、胸に灯った想いこそ、自身の拳に値するのだ。懐に仕舞い込んだ祈石を感じ、焔を纏う一陣の風・ディーン(a32427)は一度だけ目を閉じた。瞬きの間に見開き、大きく肺に息を吸い込む。殺す為だけに命を奪ったことも、憎しみに駆られて弓を引いたこともない。此れから先の道も、間違い無く同様に進んで行く。帰還を待つ人々が居る限り、窮地は自分が自分のままで脱しなければならない。
 此れは、人間の持つ精神の力だ。
「これが、人間の、真実の力なんだ!」
 魂の奥底から湧き出でる黄金の光によって満たされた冒険者たちは、その力を――


冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし


!死の行軍6日目!

●選択肢1:力の全てを解放し、最強の力を手に入れようと試みる
 最強の力を手に入れるべく、湧き出る力を無制限に解放します。
 その力の行き着く先がどこになるかは判りませんし、それが制御できる保障はありません。
 しかし最強の力を手に入れようと試みることは、力を求める冒険者の真理なのかもしれません。

●選択肢2:力に枷をつけ、邪悪のみを払う力として受け入れる
 邪悪な存在(ドラゴン)から世界を守る力としてのみ、この力を振るうことを誓います。
 新たな力を制御し、使いこなせるようになりますが、最強の力を手に入れることは出来ないでしょう。

●選択肢3:力を受け入れる事を拒む
 例えそれが邪悪では無い力だとしても、人間に過ぎた力であることは明白であり、受け入れることは出来ません。
 未知なる力を前に怖気づきながらも、現在の自分が持つ力で未来を切り開こうと試みます。

■締め切り:7月30日(月)0時59分
■行動内容は200文字以内に纏めてください。
■必ずしも全員が描写されるとは限りません。
■業務に参加した護衛士は、行動次第で重傷・死亡を負うことがあります。

※今回の特別業務は、行動内容に関して他者と相談することが出来ません。


 

<プレイング>


武勲詩抄・フレッサー(a37890) 2007年07月29日 10時
うむ、あい判った。何やら胸騒ぎがするな。急ぎ心を示す。儂はドラゴンロードをも超える存在となる!儂の力は、森羅万象愛しき全てを護る為の物。だが、さらに悟った。儂が使う力とは、愛しき全てを生み出す世界その物を護る為の力。太陽・風・山河・人・社会、諸々のそれら全てが儂の愛しき全てを生み出す母体。それらを虚無の滅びから護る為に力を尽くす。(1. 力の全てを解放し、最強の力を手に入れようと試みる)
流水の道標・グラースプ(a13405) 2007年07月29日 10時
我武者羅に力が欲しいとは思わない。今はただ、守る為の力が欲しい。守るという意志に呼応出来る力が欲しい。全てを解放しなくても人には過ぎた力なら、報いを受けて、例えばいつか身を滅ぼすことになるのかもしれない。でもそれでもいい。此処から出るまでの短い時間だけでも構わない。帰したい。一人でも多く帰したいんだ。もうこれ以上誰も死なせなくないんだよ。それを成し得る力が手に入るというなら諸手を挙げて歓迎しよう。(2. 力に枷をつけ、邪悪のみを払う力として受け入れる)
悪を断つ竜巻・ルシール(a00044) 2007年07月29日 11時
『私がいる限り邪悪に飲まれる事はない』か、その言葉信じるぞ!・・・制御出来ない力を振るうは狂戦士の本分。されど、今欲するは邪悪を討ち払う一振りの心の剣。「剣は人なり。心正しからざれば、剣また正しからず」内より湧き出でる力を“剣のイメージ”に集約し自らの力として受け入れる。人を活かす為の剣「活人剣の極意」今こそ極めて見せよう!「・・・友よ!召喚獣よ!我が心氣よ!今こそ我に邪を討ち払う一振りの力を!」(2. 力に枷をつけ、邪悪のみを払う力として受け入れる)
チャンピオンハート・トウガ(a42909) 2007年07月29日 13時
魂に本来限界などありはしない。無限の可能性を信じ、己を貫く…この命燃え尽きるまで、俺は、俺として生きる!制御出来ぬと言うなら制御してみせるまで。この身は武をもって道を極めんとする。ならば不可能ではない! 人間を、みんなを愛している。この胸に灯る想いが太陽ならば、ドラゴンも、ロードでさえも救ってみせよう。「我、全てを照らす輝きとならん!(拳突き付け)俺と勝負しろ、ドラゴンロード!話はそれからだっ!!」(1. 力の全てを解放し、最強の力を手に入れようと試みる)
飄風・カーツェット(a52858) 2007年07月29日 15時
奪うためではなく守るための力。それは確かに手にしたい。先程も言ったはずだ、この身が傷付こうとも心は折れぬと。この力を手にした事で俺自身に何が起ころうがそれは俺が選んだ事だ。身を持って受け入れよう。ただ己の理解を超え過ぎた力はいずれは他者をも傷付ける。そんな物は絶対に受け入れられない、それはもう奪う事と何ら変わりがない。だから全ては望まん。待ち続ける人々の元へ皆と帰るための力が欲しい。それだけだ。(2. 力に枷をつけ、邪悪のみを払う力として受け入れる)
黒紋の灰虎・カラベルク(a03076) 2007年07月29日 20時
力が欲しい、虐げられないための力を今此処に。俺が常に求める、相手を屈し滅ぼすためではない、力なき者が血と涙を流し嘆きの声を上げずに済む為の力を。グリモアに誓いを立てた時から変わらぬ己の裡に在るものを信じ望む。大切な友や仲間達と共に在る場所と民を守るための剣であるために。流されず飲み込み全てを血肉にしてみせる。歪まない信念で俺のままで力を手にしてみせる、相手がどんな強大な存在だろうと屈しはしない!(1. 力の全てを解放し、最強の力を手に入れようと試みる)
魔王様・ユウ(a18227) 2007年07月29日 21時
他の方がどうかは知りませんが、私は死線を行き続けたいので最強なんて不必要。先程も言いましたが制御出来ない力は破滅のみですからね、制御できるか如何か不確かなのなら制御できるだけで私的には十分です。幾ら邪悪に包まれないといっても無制限に開放すれば結局は過ぎたる力でしょう、ザウス神が危惧したように真なる竜へと至ってしまうかも知れませんからね。「私は自分の為に力を求めてますからね、過ぎた力は必要ないです」(2. 力に枷をつけ、邪悪のみを払う力として受け入れる)
神の道化・メロス(a38133) 2007年07月29日 21時
キミは私の魂の力で…私の精神がキミを魂の回廊から呼び出した…そっか、ありがとう。私の魂は私だけのものじゃないんだ…ありがとう……さん… …正直言うと怖いんだ…未知の自分が。でも、其処で踏み出す事が必要なら…不確定な未来の為に勇気を抱いて踏み出す事こそを希望と呼ぶのなら…私はキミを、私を信じてみる。 …臆病だから総てを信じてあげられるほど強くないんだ…ごめんね? でも、それでも良いなら…私に…力を貸して?(2. 力に枷をつけ、邪悪のみを払う力として受け入れる)
誓桜の重騎士・キースリンド(a42890) 2007年07月29日 22時
俺は自分の弱さを知っている。だからこそ守りたいものを守れるだけの力が欲しい、純粋にそう思う。世界を守る為に逝った人達、仲間を守る為に逝った人達、そして帰りを待ってくれている人達。その人達の願いにほんの少しでも報いたい。人が生まれて死ぬ、その時間の中で、泣いて笑って愛して喜ぶ、それが普通に繰り返される、そんな世界を守りたいんだ。だから、そのための力が欲しい。それ以上の力は…必要ではないから。(2. 力に枷をつけ、邪悪のみを払う力として受け入れる)
焔を纏う一陣の風・ディーン(a32427) 2007年07月29日 23時
強力過ぎる力は欲しくない。ただ今は…此処から皆を帰す力が、そしてランドアースの仲間たちを救う力が欲しい。俺の望みは高みへ登ることではなく、俺を育んでくれた世界を、人を護ることだから。微小な望みかもしれないけど、俺にとっては大切なことなんだ。枷を付けても人には過ぎた力を得る事によって、いずれ報いを受けても構わない。死んだって構うもんか。だから…俺の召還獣、どうか力を貸してくれ。皆を護る力を…!

焔を纏う一陣の風・ディーン(a32427) 2007年07月29日 23時
(すみません)(2. 力に枷をつけ、邪悪のみを払う力として受け入れる)
鏡夜奏想・リア(a13248) 2007年07月29日 23時
嫌な胸騒ぎがするの。手に入れられる力を受け入れて、出来る限りの事を尽くしたい。その言葉を信じるよ、だから私に力を貸して?大好きで大切な人達が、救いたい命が沢山ある。毀れていくのを只見ているだけは絶対に嫌。絶望的な状況になっても、最後まで諦めない仲間の為に私は支えたい、力になりたい。希望の道を切り開きたい…たとえ命を燃やし尽くしても、強力な敵がいようが、大切な仲間を護り助けたいこの気持ちは譲れない!(1. 力の全てを解放し、最強の力を手に入れようと試みる)
睡獅子・バルア(a31559) 2007年07月29日 23時
制御できない力に意味はない。最強の力になど興味はない。例え手に入れられたとしてドラゴンを倒した後は?同盟が平和になった後は?その力を何に使えばいい?有り余る強き力はいずれ抑えきれず破壊を生む。だから今は唯、ここにいる仲間達を無事に帰すための力が、故郷の皆をドラゴンから守るための力が欲しい。ドラゴンさえ退けられるならば、他の何者にも俺たちは負けることはないだろうから。(2. 力に枷をつけ、邪悪のみを払う力として受け入れる)
灰眠虎・ロアン(a03190) 2007年07月30日 00時
人が心を亡くした存在、オレ達の成れの果てというドラゴン…ならばそれを滅するのは心持つ「人」だ。全てを清算する為には対等じゃ駄目だ。半端な心じゃ駄目なんだ。ドラゴンを克する力を。その先の、最強というドラゴンロードを超える魂を…!この湧き起こる力が自身の裡にある魂そのものならばその全てをぶつける!最強とはドラゴンの力では無い事を、沢山の友が信じてくれるオレ自身を信じる!全てを終わらせ皆で帰るんだ…っ!(1. 力の全てを解放し、最強の力を手に入れようと試みる)
楽風の・ニューラ(a00126) 2007年07月30日 00時
思うだけでは伝わらない、言葉と言う手段がなければ。だから私は手段が欲しい。そして言葉は伝えるべき相手に添わなければ伝わらない、だから私は人から遠く離れる訳にいきません。もし解放を選ぶ人が人間より余りに遠く行き過ぎた時は、私が呼び戻す伝書鳩になりましょう。人は光も闇も併せ持つ不完全な生き物で、だからこそ面白くて、其処に希望が在るのです。大丈夫、私も皆も一人ではないでしょう?この手は、繋ぐ為にある。(2. 力に枷をつけ、邪悪のみを払う力として受け入れる)
紅のアサッシン・ヨイヤミ(a12048) 2007年07月30日 00時
コレは試練だ。オレの魂がオレ自身に与えた試練だ。無限大の力をオレの器がひび割れず受け切れるかを、無制限の力にオレの魂が呑み込まれないかを試すための試練だ。思い出せ、オレは何のために力を欲するのかを。刻み込め、オレはオレの力で何をすべきなのかを。己の半身も制御出来ずして何が最強の力か。オレの魂の力は、オレが振るう力は!全ての邪悪を滅するためのモノだ!!(2. 力に枷をつけ、邪悪のみを払う力として受け入れる)


 

<リプレイ>


□【特別業務】死の行軍 最後の日

●曙光
 そして、5人の冒険者が湧き出る力を解放した。
「希望のグリモアよ、御照覧あれ」
 暖かな太陽、草原を巡る風、河を流れる清水、そして人々が織り成す物語までもすべてが抱く愛しさを生み出している。虚無の滅びから、愛しき世界を護らねばなるまい。胸に留めた桜の香りに春を想い、懐中に潜める紫の守護剣で夏の終わりを知る。折れぬ腕に蝶を捕らえた大剣を携え、武勲詩抄・フレッサー(a37890)は力の渦に身を任せた。
「儂の力は、森羅万象、愛しき全てを護る為に或る」
 蒼翠色の術手袋を嵌めた掌を力に翳し、鏡夜奏想・リア(a13248)は微かに笑みを浮かべる。出来得る限りを尽くしたい。毀れていく様を見ているだけでは居たくないから、と不器用な己を遠い人々に詫びた。首に提げた少し歪な銀細工の加護は、身よりも心に深く強く齎されている。
「希望の道を、切り開きたい」
 最後まで諦めず立ち続ける、絶望に屈しない仲間の力になりたかった。
「だから、大切な仲間を護りたい気持ちだけは譲れない!」
 すべてを救おうと願うには人間は未だ弱く、望みは我儘な綺麗事でしか無いのだと知っている。それでも願わずには居られないから、リアは一歩を踏み出した。
 灰眠虎・ロアン(a03190)は強く力を求める。礎を築いた仲間の姿を思えば涙が零れそうになる。泣かずに前を向き、揺るがずに輝き続ける星を信じて、彼らが繋いだ希望を今度は自身が担うべく大好きな大好きな世界を明瞭に思い起こしていた。
「ドラゴンが心を亡くした存在ならば、それを滅するのは心持つ『人』だ!」
 邪悪に克つ力が欲しい。
 魂そのものを、すべてぶつけて道を拓こう。
 ドラゴンは決して最強の存在ではないのだと、ロアンは己に信頼を向けてくれる友を信じ、己が持つ力を信じた。彼の、そして彼が愛する人々の幸福を沢山の護りが祈っている。
 しかし、導き出された力は余りにも強く、ひとりの人間の意志に抑え切れるものでは無い。肉体と精神が音を立てて軋み、魂が悲鳴を上げている。誰にも制されることの無い最強の力は膨らみ続け、冒険者の魂すらもすべて呑み込まんとしていた。
「俺が、求めるものは――」
 無差別に全てを破壊するような力ではない。
 力無き者が血と涙を流し、嘆きの声を上げずに済むための力だ。
 弛まぬ意志は安易な死など望まない。仲間と共に今、立ち続けることが出来て来た酷く短い道程を黒紋の灰虎・カラベルク(a03076)は愛おしく思う。誓いを捧げた日より変わらぬ想いは、背負うものを増すたびにより重みを増して来た。向けられる信頼を感じ取り、カラベルクは心からの信頼で想いに応える。
 制御し切れぬ力が暴発し、護りたいものが傷付けられることの無いよう、護りたいものが何事も無く戻ることの叶うよう、彼らは抑え切れぬはずの力を手繰らんとした。
「俺は、己を貫くだけだ。例え、この命が燃え尽きようとも」
 魂には無限の可能性が秘められている。みんなを愛しているから、チャンピオンハート・トウガ(a42909)は不可能にも挑むのだ。心には拠る所がある。けれど固めた拳に偽りは無く、駆け抜けた脚に迷いも無い。トウガの胸に灯った想いは、裡より滲み出る光と共に輝き続けて行くのだろう。
「我、全てを照らす輝きとならん!」
 ドラゴンロードに一矢を報いる。
 そして、世界を護る礎となるのだ。
 解放された力の奔流が魂から溢れ出、肉体と言う檻を越えて外界に至る。最早、痛みすら感じることは無い。陽光を思わせる優しくも強い、命の輝きが聞き取れぬ音と共に世界を満たした。
 彼らの魂が燃焼されて行く。
 最後に、微笑む誰かの姿が虹彩を透った。
 眩しい命の輝きが遺された者の瞳を灼き、願いを宿す彼らの声が心の中に響き渡る。
 直後、水晶の立ち並ぶ地下世界に凄まじい大爆発が起きた。無制限に解放された力はひとつの身体に留まり切らず、彼らの命を代償に、ドラゴンロードが作り出したドラゴン界すら揺るがしたのだ。此れを死と表現するのは、恐らく相応しくない。彼らは肉体を失い、文字通り、すべてを包み込む光となったのだ。

●覚醒
 凄絶な爆発が時空を歪ませ、ドラゴン界に穴を生み出す。護衛士の心に干渉を加えていたドラゴンロードの威圧が、未知を感じる畏怖にも近しい驚倒の気配を最後に彼らの周囲から消えた。正真正銘、5人が生んでくれたこの瞬間こそ、ドラゴン界から脱出する最初で最後のチャンスだった。
 しかし、今のままの自分では、爆発に呑まれて死ぬしかない。
 力が欲しい。
 護ると言う己の意志に応えるだけの力が欲しい。
 彼らの命が失われたなどと言いたくもない。彼らの命を生かす為に、流水の道標・グラースプ(a13405)は何かに向けて手を伸ばす。刹那にも満たない時の間に彼らの心を想いが駈けた。邪悪のみを払うため、その力を受け入れようと飄風・カーツェット(a52858)はその道を選ぶ。誰と比べることも無く、己が正しいのでもなければ他者が誤っているのでも無い。力を得た身を何が苛むとしても、己の心は決して折れない。
 世界を、仲間を護る為に往った人々、そして帰りを待つ人々の顔を誓桜の重騎士・キースリンド(a42890)は思い浮かべる。世に生を受けてから旅立ちまでの間、泣き、笑い、愛し、喜び合う、幸福な平穏を護りたい。己を育んでくれた大地を、そこに住まう人々を護りたい。焔を纏う一陣の風・ディーン(a32427)にとって、それは何にも替え難い大切な願いだ。枷をつけても尚、過ぎたる力であると言うのなら報いを受ける覚悟がある。
「今は、唯」
 迫る爆発の輝きを前に、睡獅子・バルア(a31559)は僅かに瞳を伏せた。有り余る強き力が破壊を生む日を恐れる。仲間を無事に帰すため、故郷の皆をドラゴンから護るため、力が欲しい。ドラゴンを退けるための力が欲しい。今は唯、選んだ道を信じるのみだ。
「分相応に、ですね」
 魔王様・ユウ(a18227)は、自身の望むままに選択した。過ぎた力は求めない。制御することに意味がある。本当は行き過ぎた彼らを呼び戻したかった。けれど、命を懸けて決断を下した彼らの意志に、今更他者が何と言葉を紡げば良いのか。添うことが許されぬならば、せめて先へ伝え繋ぎたいと楽風の・ニューラ(a00126)は願う。
「私は臆病だから。正直言うと、怖いんだ」
 己の魂から響く呼び掛けに、神の道化・メロス(a38133)は想いを返した。
「不確定な未来の為に、勇気を抱いて踏み出すことこそ希望と呼ぶなら……」
 傍に在るものを、そして、自分自身を信じてみよう。
 この瞬間こそ試練なのだ。自身は決して「呑み込まれない」と強く示し、自身と言う器に膨れ上がった魂をすべて受け切るための試練なのだ。紅のアサッシン・ヨイヤミ(a12048)は己の魂に呼び掛ける。
「オレの魂の力は、オレが振るう力は――」
 何のために力を欲するのか、思い出さなければならない。その力で何をすべきなのか、魂に刻み込まなければならない。
「全ての邪悪を滅するためのモノだ!」
 そしてヨイヤミは湧き出る力に枷を付ける。
 悪を断つ竜巻・ルシール(a00044)は、邪悪を討ち払う一振りの剣を心に描いた。魂が叫ぶ力を、自身の力として受け入れる。
「友よ! 召喚獣よ! 我が心氣よ! 今こそ我に、邪を討ち払う一振りの力を!」
 彼の言葉に呼応して、彼の手中には一振りの剣が生まれ出でた。

 光が螺旋を描く。
 魂の回廊に、冒険者の意志が刻み込まれる。
 希望を捨てることなく絶望に立ち向かい、ドラゴンに立ち向かう仲間たちの姿が見えた。すべての冒険者の魂の内側から、『ドラゴンウォリアー』の力が溢れて行く。
 グラースプは確かに清廉な水の気配を肌に感じた。光の中で、自身の姿が変貌する。望みを果たすだけの力が、肉体と精神とに重ねられて宿る。ある者は漆黒の両翼を広げ、ある者は身に紋様を刻み、ある者は急速に若返る。
 今ならば、地を蹴るだけで飛翔が叶うと知る。
 爆発した命の煌きに呑まれる寸前、意識を失った霊査士を引っ掴み、生まれ出でた『ドラゴンウォリアー』たちは創り出された時空の歪みに飛び込んだ。光となった魂の輝きがドラゴンロードの目すら晦ませた隙に、彼らは光の速度でドラゴン界を突破する。
 轟音は遅れて響き、ドラゴン界すべてが激しく震動した。命を懸けた5人の魂に応え、遺された護衛士らは光の奔流に紛れ、世界を覆う闇に飛翔する。ドラゴン界を突破した先には、暖かな太陽の陽射しがあった。

 愛しき大地、ランドアース。
 本来、人間には制御出来ない力を制御し切るのは、冒険者の強き心があるからこそだ。邪悪な存在であるドラゴンから世界を護りたい。その願いが、この力を操るに足る強靭な精神力を生み出している。忘れ得ぬ誓いを胸に、護衛士らは己の脚で大地を駆けた。希望を信じた仲間のもとへ戻るのだ。ドラゴン界から離れ、同盟に報告を齎し、懸けられた命に報いるため護衛士は駈ける。
 すべての選択は、すべてに誇れるものだ。
 美しい蒼穹の空には、変わらぬ太陽が輝いている。
 ドラゴン特務部隊は遂に、同盟領への帰還を果たしたのだった。


冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:黒紋の灰虎・カラベルク(a03076) 灰眠虎・ロアン(a03190) 鏡夜奏想・リア(a13248) 武勲詩抄・フレッサー(a37890) チャンピオンハート・トウガ(a42909)