『 青眼 』
●永遠の絆
「この花の名前は知っていますか?」
アゼルの問いに、メイプルは首を傾げる。
「薔薇……ですわよね? でもアゼル様の事ですから、普通の薔薇ではないのでしょう」
その答えに満足そうに微笑んだアゼルは、メイプルの髪に一輪の薔薇を挿す。
「この花の名はブルーローズ。ドリアッドの聖域に咲く薔薇よ、花言葉は『愛情を込めて』」
アゼルはメイプルの頬を優しく愛撫して答える。
「あら、私に愛情など込めてよろしいのですか? 本気にしてしまいますよ?」
そのアゼルに、メイプルはいたずらっぽく微笑んで答えた。
「今日も一緒に過ごす方がいらっしゃるのではないですか?」
と。
「あら、そうだったかしら。でも、同性の相手だからこそ、永遠の時を一緒に過ごせるのだと思わない?」
恋が全てという人もいるだろう。
だけど……恋人よりも近しい存在がいてはダメな理由などないではないか?
「それは嬉しいですね。でも、私はアゼル様よりも恋しい人など出来ないかもしれませんよ? アゼル様より私を愛してくれる人などいないと思いますから」
メイプルの答えに、アゼルは少し困ったような表情を作る。
(「それは、少し困るな。小姑になるという私の夢が遠のいてしまうから……」)
それはメイプルには秘密のアゼルの夢の話。
「それより、アゼル様に好きな人ができましたら紹介してくださいね」
にこやかにメイプルが言う。
(「嫉妬はしませんから‥多分、ですけど‥」)
それは、舞い散る花の見せる一時の夢。
美しい花々には、様々な思惑と夢とがあるらしい。
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イラスト: かみや まねき