『 重なる気持ち 』

●朝露のプレゼント

 朝靄のかかる『朝露の花園』。
 そこに咲く一面の花達が、訪れる恋人達を出迎えていた。
「ここが朝露の花園? とっても綺麗な場所だね」
 にこにこと笑いながら、キリはヒカリを振り返る。
 ヒカリは少し照れながら、持ってきたプレゼントを取り出した。
 この日、ヒカリがこの場所にキリを誘ったのは、プレゼントを渡す事だった。
「……今、一番大切な人ですから……キリさん、そのこれを」
 赤いリボンで可愛くラッピングしたプレゼント。
(「キリさん、喜んでもらえるかな?」)
「わあ……いいの?」
 キリは嬉しそうにそのプレゼントを受け取ってくれた。
「はい、その、どうぞ」
 キリの笑顔に安心するヒカリ。いや、それ以上にキリが喜んでくれた事がなにより嬉しかった。
 と、ふいにキリが花園にしゃがみ込んだ。
「キリさん?」
 不思議そうにキリを見つめていると……。
「はいこれ♪」
 ヒカリの黒い髪に朝露を浴びた白い花が飾られた。
 そして、キリはヒカリの額にキスをする。
「あ……」
「ありがとね」
 恥ずかしさのせいか、キリの顔がほんのり赤く染まっている。
 もちろん、キスを貰ったヒカリも耳まで赤くなっていた。
「キリさん……ありがとうございます……」
 朝靄が立ち込める花園。靄が消えるまで二人は甘い時を過ごすのであった。


イラスト: 茶駝乾