『 えっと・・・気持ちはありますのよ? 』
●ミイラにしたい気持ち
ルーカスは様々な困難に立ち向かった。
途中でほっかむりをした者達に何度もスタートに戻された。
そして、険しい道を転びながらも登っていったのだ。
案の定、無傷で、というのは無理であったが、ゴールまで完走出来たことは奇跡と言っても、バチは当たらないだろう。
「大丈夫ですの?」
そう言ってカメリアは甲斐甲斐しく手当てを施す。
「まあ、何とか」
ここまで来れた安心感と、試練の疲れでほうっと息をつく。
ぐるぐるぐるぐる。
怪我したところを入念にカメリアは包帯を巻いていく。
「これでよし、ですわね」
やっと終わってルーカスを見る。
「…………」
そのルーカスの姿は、ミイラのようになっていた。
「まあ!」
「まあ! じゃないだろ?」
ため息混じりにルーカスは突っ込みを入れる。
「素敵なあなたにプレゼントですわ」
そういって包帯で塞がった口元にお菓子を近づける。どうやら口が塞がっている事に気付いていないらしい。
「………俺は玩具か?」
少しくぐもった声がむなしく響く。
「あら、いらないのですの?」
「口が塞がっているんだっ……」
口の包帯を取る気力もないルーカスに、その言葉は辛かった。
「本当は感謝の気持ちを伝えたいんですのよ? 依頼を終えて帰って来たいと思う方ですから」
「だったら、早く、口の包帯を解いてくれ……」
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イラスト: 梓乃