『 〜sweet & bitter〜 』
●ほろ苦いココアの理由
「あ、みつけたのじゃ!」
ルビーナは、星屑の丘に来ていた。待っているであろう、アコナイトを見つけるために。
そして、その姿はすぐに見つかる。
「ルビーナさん……」
アコナイトはルビーナに気付き、振り向いた。
「傷付けてゴメン……」
一言二言話した後、ルビーナはやっと、自分の気持ちを伝えるのに成功した。
「え? 何が、ですか?」
「ほら、前に誘っておいてドタキャンして……その、嫌な思いさせてしまったから……じゃ……」
それを聞いたアコナイトは微笑し、ルビーナの頬をひっぱった。
「あう、何を……」
そう反論しようとするルビーナの口の中に、アコナイトは持ってきていたチョコレートをぽんと入れる。
「美味しいのじゃ♪」
嬉しそうにもぐもぐとチョコレートを食べる横で、アコナイトは次にホットココアを飲んでいた。
「ん? あこ……」
キス。
いや、キスではない。口移しでホットココアをルビーナの口に注いだのだ。
「では、用事がありますので……」
そう言って、アコナイトはその場を走り去っていった。
本当はアコナイトに用事なんてなかった。ただ……。
(「この、はにかんだ顔をルビーナに見られないように」)
それだけが彼女を突き動かす。
残されたルビーナの口の中に甘いホットココアが残る。
だが何故、こんなにも甘くて美味しいのに、苦く感じてしまうのか?
ルビーナは走り去るアコナイトを見送りながら、その問いの答えを探していたのであった。
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宵咲の狂華・ルビーナ
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イラスト: 茶駝乾