『 ―月彩風夜― 』

●鈴蘭の咲き誇る場所で

 鈴蘭の咲く花園で、少女はずっと待っていた。
 手が凍えそうになっても。
 そして、この身が滅びようとも、永遠に……。

「わっ!」
「きゃあっ!!」
 少女を驚かせたのは、待ち続けたあの青年であった。
 そして。
 二人の唇が重なる。
「ごめん、待たせたな」
 青年の言葉に、少女はふるふると首を横に振った。
 いつの間にかその手には小箱があった。
 恐らく、驚かせたときに渡したのだろう。
「あの、開けてもいいですか?」
「どうぞ」
 少女が箱を開けると、そこには蒼月石のついた指輪が入っていた。
「あ………」
 様々な想いが、少女の胸を満たしていく……。
「ありがとう、ございます……」
 そっとはにかむ様に頬を染める少女。
「あの、はめてもいいですか?」
「もちろん」
 嬉しそうに少女は貰った指輪を右手の中指にはめる。
「本当に、嬉しいです……」
 寄り添うように二人は鈴蘭の花園に座っていた。
「俺も嬉しいよ……」
 そして、二人はもう一度、唇を重ねるのであった。


イラスト: みずの瑚秋