『 ここから始まる2人の時間 』

●星空のキス

 夜の星屑の丘。
 そこは満天の星達が恋人達を祝福するかのように瞬いていた。
 その下でニックは、エステルを強く抱きしめながら囁く。
「やっと団長と恋人になれたんだね。これからは今までの距離と時間を埋めるように、団長と……いや、エステルと一緒に歩いていくよ」
「ニック……」
 その言葉にエステルは言葉を詰まらせる。
 この日、二人は初めて恋人となった。
 そして、これからもずっと……。

 エステルはそっとニックに告げる。
 ほんの少し、緊張しながら……。
「あなたに贈り物があるの。ちょっと瞳を閉じてくれる?」
「ええ、いいですよ。団長のお願いだしね」
 ニックは笑顔で、エステルの願いを聞き入れ、瞳を閉じた。
 エステルは瞳が閉じた事を確認して……。
「……!」
 それは、ほんの一瞬。
 瞬く間の淡く甘い、口づけ。
 手作りのお菓子よりも、甘い贈り物だった。
「エステル……」
「喜んで、くれたかしら?」
 ニックは微笑み頷いた。
「もちろん。俺からも贈り物、していいかな?」
 返事も聞かずに、ニックは唇を重ねる。
 始めは短く、そして、何度も……。

 空の星は瞬く。それはまるで恋人達を明るく照らすように……。


イラスト: 鈴野百合