『 一日だけの王子様 』

●秘密の花園でティータイムを

「素敵な場所っ!」
 ミミルとシーナは、さえずりの泉に来ていた。
「うん、ここで過ごすティータイムは、どの宮殿よりも勝る……かな?」
 そんなシーナの言葉にミミルは笑みを浮かべた。
「ちょっとオーバーですわ、王子様」
「そう? じゃあ……君といる場所なら何処でも宮殿になるとか」
「それもオーバーですわよ」

 二人は微笑み合い、手ごろな場所に腰掛けていた。
「姫、頑張りましたね?」
「腕を振るいましたもの。王子様に喜んでもらわなくてはと思いまして」
 開いたバスケットの中にはたくさんのお菓子が詰め込まれていた。
「もちろん、ミミルもいただきますわ」
 お菓子の半分はミミルのもの、ということらしい。
「はい、王子様。あーんしてくださいませ」
「あーん」
 ミミルがチョコレートを一つ摘み、シーナの口に運ぶ。
 シーナはそのミミルの手に自分の手を添えて、チョコレートを口に入れる。
「まろやかな口解け、深い味わい、どれをとっても素晴らしい味です。流石は姫。やりましたね」
「ふふふ、王子様にそう言っていただけるなんて、光栄ですわ」
 そして、二人は顔を見合わせ、互いに笑う。
「はい、王子様・お姫様ごっこ終了〜。なんか肩こりそうなんだよね」
「もう、シーナさんたら。でも、ミミルもちょっと思いましたわ」
 くすくすと笑いながら、ミミルは続ける。
「今日は一日だけの、女の子の秘密、ですわねv」
「じゃあここは、さながら秘密の花園だね?」
 シーナはミミルの持ってきたバスケットから、新たなお菓子を一つ摘み上げた。
「改めて、いただきまーすvv」

 二人だけのティータイムは続く。
 甘い甘い、秘密のティータイムが……。


イラスト: 気狂いピエロ