『 葬送曲〜亡き仲間へのバレンタイン〜 』
●奏でられる葬送曲
「ねえ、歌を歌わない?」
どうして、そんな話になったのか。
そして誰が言い出したのかは、もう忘れてしまった。
だが、シアもサクヤも気持ちは同じ。
志半ばで命を落とした仲間達を想い、歌を送ろうと……。
夜、静かな泉のほとり。
人はまばらで夜の闇が辺りを優しく包んでいる。
シアとサクヤは人の少ない場所を見つけ、腰を下ろす。
「ここでいいよね?」
「うん、ここなら他の人の邪魔にもならないだろうし」
シアの言葉にサクヤは笑顔で答える。
さっそくシアは持って来た楽器を用意する。
サクヤは少し発声練習を行っていた。
「じゃあ、始めるよ?」
シアの持つ楽器の弦が響き、曲が奏でられた。
ゆったりとしたメロディ。
サクヤの口からは切ない恋の歌が紡がれていく……。
そして、二人の横には、サクヤがいつも連れている子犬達が気持ち良さそうに耳を立てていた。
しばらくした後、曲が終わる。
「……ねえ、皆に届いたかな? 俺達の曲……」
空を見上げて、サクヤが尋ねる。
「うん、きっとね……」
シアが笑みを浮かべる。
二人はそっと寄り添い、長い時間、空を見上げていた。
いつまでも、いつまでも……。
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天狼の黒魔女・サクヤ
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イラスト: みなみすばる