『 ランララの木の下で……精一杯の想いを込めて。 』

●恋する気持ち

 女神ランララの木の下。
 ここでは多くの恋人達が、相手を想いながら待っていた。
 ファレアも例に漏れず。
 かの人が現れるのを待っていた。
 その手には自分の気持ちを込めた手作りのガトーショコラがあった……。

「ルーカス様……」
 ほんのり、頬が赤くなる。
 ルーカスの事を思うと、どうしてこんなにも胸が苦しくなるのだろう?
「大丈夫でしょうか?」
 何もない場所で転んでしまうルーカス。
 今回はランララ聖花祭の試練も行われており、丘の上まで登るのには時間が掛かる。
「ご無事だと、いいのですが……」
 と、そのとき遠くで見知った青いマントが翻るのを見た。
「ルーカス様っ!!」
 ファレアは急いで、彼の元へ駆け寄る。
「すまない。ちょっと遅れたかな?」
「いいえ。わたくしも丁度来たところですから」
 ちょっとの嘘。
 でも、ルーカスに会えた事でファレアの胸はいっぱいになっていた。
 いや、ここで満足してはいけない。
 ファレアは自分を奮い立たせる。
「あの……これを……」
 そっと差し出したのは、ファレアの作ったガトーショコラ。
「お口に合えば、いいのですが……」
 不安な気持ち。
 そして、好きという気持ち。
 言葉には出来なかったが、そのファレアの瞳が、ルーカスに訴えていた。

 ぽんっとルーカスの手がファレアの頭に乗せられる。
 ルーカスはファレアのプレゼントを受け取った。
「すまんな。ありがとう」
 そして、微笑み、ファレアの頭を撫でる。
 恋人ではない距離。
 けれど、今はそれだけでも嬉しい。
「いいえ、喜んでいただけるだけで、嬉しいですわ」
 ファレアは笑顔でそう、ルーカスに告げるのであった。


イラスト: 気狂いピエロ