『 二人と一匹の時間・・・? 』

●恋人達と……ノソリン?

 満天の星が夜空を彩る。
 ここは素敵な夜空を見上げられる星屑の丘。
 そこにシリアとユーリアの二人がいた。
 いや、それだけではない。
「なぁ〜〜ん」
 何故か、シリアのノソリン、『こま』も一緒だった。
 シリアとユーリアは『こま』に寄りかかり、夜空を見上げていた……。

「あら、こまも一緒に来たんですか?」
「そ、そうなんじゃ。ついて行くと言って、聞かないんでのう」
 何か話が詰まったときの保険……といっても過言ではないかもしれない。
「こまもちょっとおしゃれしているんですね」
「おう、そうなのじゃ。それに飼いノソリンだということも示しておかないと、いろいろと大変じゃろう?」
 そんなシリアの言葉にユーリアはくすりと笑みを浮かべる。
「そうですね。迷子になったら大変ですものね。……あ、遅くなりましたが、これをどうぞ」
 そう言ってユーリアは持ってきた包みをシリアに渡す。
 これはユーリアの手作りのチョコクッキーであった。
「……味に自信はないのですが……あの、喜んでいただけたら嬉しいです」
 かなり赤面しながら、ユーリアはそう言う。
「ありがとう、なのじゃ……」
 もらったシリアも赤面。
(「こ、こういうときは何か気の聞いた事を……」)
 きゅぴーんと怪しい視線を感じる。
 まぐ。
「わああああっ!! こ、こらっ! こまっ!! それは駄目じゃっ!!」
「なぁ〜〜ん?」
「なぁ〜んじゃないっ!!」
 わたわたとシリアは、こまに奪われたユーリアのクッキーを取り戻そうとやっきになっていた。
「ふふふ、シリアさん、こまと一緒に食べたらいかがですか? たくさん焼いてきましたし、そのつもりで持ってきたのですから」
 そんな二人……いや、一人と一匹のやりとりにユーリアは微笑んでしまう。
 結局、彼らは、綺麗な星空を眺めながら、仲良くクッキーを食べる事となった。
(「わしの意気地なし〜」)
 告白出来なかったシリアは、心の中で泣いていたが。


イラスト: キイル