『 『ランララ聖花祭』 ―夕空に見守られて― 』
●不器用な恋のゆくえ
星空が綺麗な場所、星屑の丘。
空は次第に紅く染まっていた。
「クリストファー様……あの、その……貰って……下さい……」
緊張した面持ちで、ファーファルトは、手作りのガトーショコラをクリストファーに渡していた。
「ファーが作ったの?」
そのクリストファーの言葉に、ファーファルトはコクリと頷いた。
手渡したガトーショコラ。
それはクリストファーの為に、ファーファルトが愛を込めて作ったものである。
その苦労のお陰か、綺麗に作ることが出来た。見た目もそのまま売り物になりそうなほどである。
(「……綺麗に、焼けた…のです、が……喜んでもらえる、でしょう……か……」)
ファーファルトの心の中で不安がよぎる。
「ふうん、じゃ、さっそく一個、食べてみよっと」
ぽんとクリストファーはその場で食べてみた。
クリストファーの口の中に甘いガトーショコラの味が広がる……。
(「美味しい」)
心の中ではそう思っていた。
「まあまあかな」
クリストファーの口から出たのは、そんな言葉だった。
それでも、ファーファルトにとって充分であった。
「よかった……です……」
そして、二人は一緒に丘を降りていく……。
「……あ、空が……夕焼けにお星様が光って、綺麗です……ね」
空では、夜の闇色と、夕焼けの茜色が一緒になっていた。
「うん……」
珍しく本音が出た。
いや、これは……。
(「ファーの横顔が、綺麗だ……」)
空を見上げるファーファルトの横顔に、クリストファーは釘付けになっていた。
と、ふるふると自分の気持ちを振り払うようにクリストファーは、首を振る。
「もう行くよ」
「あっ……」
クリストファーの足が早い。
けれど、その手はしっかりとファーファルトの小さな手をしっかりと繋いでいた。
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イラスト: 赤霧天樹