『 無謀な夕食風景〜バレンタイン〜 』
●あま〜いひとときを
「今日の夕食はこれだよ♪」
じゃじゃーん!
サクヤが持ってきた食材は。
「ほ、本当にこれでやるのか?」
「もっちろん♪ 嫌とはいわないよね?」
ツキトは、そんなサクヤの言葉にうっと詰まる。
こうして、素敵な(?)夕食会が始まったのである。
「うん、美味しい〜っ!」
幸せそうにサクヤは、チョコレートまみれになった果物を口の中いっぱいにする。
今日の夕食。
それはチョコレートフォンデュであった。
サクヤは次々と、暖かいチョコレートに果物をまぶしていく。
「とてつもなく甘そう……」
思わずツキトは呟く。
ツキトの傍らには美味しいお酒が置かれていた。
美味しいお酒と……。
「串焼きが良かったんだけど、なぁ……」
「何か言った?」
「いや、何も!」
急いで手にしていた果物を口の中に放り込む。
「…………あ、あま……」
ツキトの瞳に涙がにじむ。
「ねえねえ、またやろうね♪」
「あ、ああ……暇があったら……な……」
(「出来れば二度目はありませんように……」)
思わずツキトは祈る。
「う〜ん、今日の夕食は最高だよね♪」
ツキトは気付かれないようにため息をつき、サクヤは上機嫌で、夕食を楽しむのであった。
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イラスト: 黄桜伽奈子