『 残された時間、つかの間の休息・・・。 』

●儚き夢のように……

 失われたものを追い求めて、あらゆる手を使った。
 そう、暗殺も……。
 そんな毎日がずっと続くものだと思っていた。
 あっけなく、終焉はやってくる。
 そして、得たものは………。

 澄んだ青空。
 そよぐ心地良い風。
 今日は特別な日。恋人達が集うランララ聖花祭であった。
 クロムには縁遠い世界のはずだった。
「起きたか?」
「グリム、いたのか……?」
 クロムは、いつの間にか隣に居たグリムに尋ねる。
「いるぞ。いつまでも、な……」
 その言葉にクロムは苦笑する。
「そうか……」
 短くそう告げ、空を見上げる。
「………こうして、お前と一緒にいられるのは、後、どのくらいなんだろうな……」
 思い出したように、ぽつりとグリムが言葉を紡ぐ。
「さあな。約束の時が来るまでだろう?」
「約束の、時か……」
 永遠に来なければいい。
 そんな悲しい約束の時が来るのを……。
 だからこそ、今、女神に祈っているのかもしれない。
 この二人でいる時間が、永遠に続く事を。
「なあ、隣で寝てもいいか?」
「ああ」
 せめて、今日だけは……このままで……。


イラスト: カノ