『 星降る夜―泡沫の夢― 』

●星に願いをかけて

 静かだった。
 二人以外、誰もいない。
 きっと、これは……そう、聖花祭の翌日だから。
 二人きりだけというのが、フォルテにとって一番の喜びでもあった。

「本当に、誰もいないですね」
「そうじゃな……。今日はわしとフォルテの貸し切りじゃな?」
 二人はベンチに座り、笑みを浮かべる。
 ここは星空が綺麗な場所、星屑の丘。
 くすくすと笑いながら、二人は顔を見合わせる。
 そして、ゆっくりとフォルテはライナーとの距離を縮めていく。
 ライナーとの距離が縮むたびに、フォルテの胸が高鳴る。
「あの……」
「ん? どうかしたか?」
 ライナーの顔が、近い。
「そ、その……側にいてもいいですか? いえ、その、そうではなくて……」
 言葉がまとまらない。
 だんだんフォルテの顔が、紅くなっていく。
 にこりと笑みを浮かべ、ライナーは静かに手を差し伸べる。
「寒いんじゃろ?」
「は、はいっ!!」
 ライナーの肩にフォルテは頭を預けた。
 ライナーの吐息が、フォルテのすぐ側で感じられる。
(「一緒にいられるだけで、嬉しい……」)
 そして、ライナーと一緒に流れる星を見つめていた。
「この時が、永遠に続けばいいのに……」
 囁くような小さな願い。
「ん? フォルテ、何か呼んだか?」
「いいえ、何も」
 小さな願いを聞かれなかった事に安心しながら、少し残念に思いながら、ライナーと一緒の時間を過ごすのであった。


イラスト: 参太郎