●好きという気持ち

 さわわと、女神の木が風で揺れる。
 揺れて木の葉が数枚、はらはらと落ちてきた。

 ジュリアスを前に、キャロルは息を飲んだ。
 ずっと憧れていたジュリアス……。
 意識しなくても、自然に出来てしまう距離。
「………それは分かっているよ」
 呟くようにキャロルは続ける。
「でも、『好き』は止まらない……。ボクはジュリアスが好き。大好き」
 そして、キャロルの瞳に涙がにじむ。
「好きでいるのはいいよね?」
 思い切って自分の気持ちを伝えた。
 僅かな間。
 それは一瞬のようで、キャロルにとっては長い時間。
 ジュリアスは、突然の告白に困惑していたようだったが……。
「ありがとう……」
 告げられたジュリアスの言葉は、キャロルにとって嬉しいものであった。
「こんな私を好きになってくれるのは、勿論構わない……というより、とても嬉しいよ。できれば……私もキミのその気持ちに応えてあげたい」
「ジュリ……アスっ……」
 嬉しさのあまり、涙がこぼれた。
 こんなにも嬉しいのに、相手を困らしてしまうというのに……涙が止まらない。
「う、うれ……しい……」
 やっと出た言葉は思ったよりも小さくて、か細い。
 ジュリアスは涙するキャロルの涙を、そっと指で優しく拭う。
「キャロル?」
 ちょっと困ったジュリアスの顔が、おかしくて。
 キャロルは涙を流しながら、微笑んだ。


イラスト: うおぬまゆう