『 華に思いを乗せて・・・。 』

●その花の意味

 花。
 一つの花にも、意味がある。
 時には由来までもある。
 だからこそ、必要なのかもしれない。
 勇気がほんの少し足りない恋人達にとっては……。

 星降るような夜。
 星屑の丘では、静かな時が少しずつ過ぎていった。
 セリオスとウィンディアもその場所で、二人座っていた。
「セリオス……」
 ウィンディアはそっと、セリオスの手に花を添える。
 セリオスは突然の事に、少し戸惑っていた。
「この花はどういう意味があるんだ?」
 その言葉にウィンディアは緊張した面持ちで。
「その意味は……その……これからも、私を愛し続けてくださいますか、です……」
 そう、囁くように小さな声で告げた。
「それはその……ど、どういう意味でだ?」
 セリオスも顔を真っ赤にさせて、尋ねる。
「ですから……その……こんな私ですが、よろしいですか?」
 そう、それは愛の告白。
 とても遠まわしな言い方ではあるが。
「………これが答えだ」
 セリオスはウィンディアの唇に自分の唇を重ねた。
 暖かいぬくもりが唇から伝わる。
 ウィンディアは思わず瞳を閉じた。
 ほんの瞬くような出来事。
 けれど、二人にとっては、長い時間。
「花、ありがとう……」
 照れたようにセリオスが告げる。
 ウィンディアはふるふると首を横に振った。

 二人の手がそっと重なる。
 そして、いつまでも美しい星空を見上げていたのであった。


イラスト: 芳田ひふみ