『 ランララ聖花祭【初めての愛情クッキー】 』

●初めての……

「ふむ、そうなのか」
 アルフィールは冒険者の酒場で知った。
「ランララ聖花祭というのは、お菓子を作る祭りなのだな?」
 少し違うが……まあ、よしとしよう。
 とにかくアルフィールはそそくさとその場を後にした。

 そして当日。
「用事って何だ?」
 オルティネートはアルフィールに誘われて、やってきたのはキッチン。
「クッキーとやらを作ってみた。試食してくれないか?」
「試食?」
 アルフィールの差し出したクッキーはどれも美味しそうであった。
「自信はいまいち、だがな……」
 じっと見つめて、オルティネートは感慨深く思う。
(「普段、料理をしない子が、お菓子を作るなんて……」)
 ぱくりと、一つ食べてみる。
「ん、美味しいよっ!」
「……何で泣くんだ?」
 オルティネートは思わず涙していた。
「いや、何も聞くな。うん」
 アルフィールの頭をなでて、オルティネートは続ける。
「美味しかった。また作ってくれよ」
「あ、ああ……」
 結局、アルフィールには、オルティネートの涙の理由が分からなかった。
 けれど、美味しいと言ってくれた事。
 また作って欲しいと言ってくれた事。
 それが一番、嬉しかった。
「今度は何を作ろうか?」
「おう、何でもいいぞっ!」
「……ゲテモノでも?」
「え?」
 二人は笑う。
 また、同じときが過ごせるようにと祈りながら……。


イラスト: 芳田ひふみ