『 甘いお菓子と愛、貰って下さい… 』

●愛を込めた苺のケーキ

 まだ日も落ちてはいない星屑の丘。
 そこでイリスイリスはゲイルが来るのを待っていた。
「食べて……くれるでしょうか?」
 ほんの少しの不安を感じながら……。

 そして、ゲイルがやってくる。
 どうやら、思いのほか、試練に手間取ったらしい。
「遅くなってすまない。待たせてしまったな、イリス」
 ゲイルはイリスイリスを抱きしめ、そう詫びた。
「いいえ。私も先ほど着いたばかりですから……」
 そして、イリスイリスはもじもじと俯く。
「ん?」
「あの……愛を込めた、苺ショートを食べて欲しいです……」
 そう言ってイリスイリスが差し出したのは、大きな苺のショートケーキ。
「ありがとう……」
 ここに来てくれた事の感謝も込めて、ゲイルはそう告げた。

「私がお口に運びますので、あーんと開けて下さいね」
 少し頬を紅く染めながら、イリスイリスはケーキを挿したフォークをゲイルの口元に運ぶ。
「うん、美味しいよ……」
 ゲイルはそう、微笑み返す。
「よかった……」
 ゲイルの笑顔でイリスイリスの不安が消えていく。
 そして、そのショートケーキは全てなくなった。
 もちろん、イリスイリスも一緒に食べた結果である。
「……女神の加護の元、誰より愛しています……」
 消えてしまいそうな声でイリスイリスはゲイルに告げる。
 その顔は真っ赤になっていた。
 ゲイルはそんな彼女を強く抱きしめ、囁くように……。
「俺も、貴女を心から愛している……」

 いつの間にか、空には星が瞬いていた。
 つい先ほどまで夕暮れだと思っていたのに。
 けれど、二人は幸せだった。
 二人の心は一つに結ばれているのだから………。


イラスト: chita