『 星が降る静かな夜に 』

●贈り物の花

 静かな夜。
 空には満天の星が瞬いていた。
 ここは星屑の丘。
 恋人達が星空を見上げ、愛の言葉を囁く場所。

 そして、ここにも、一組のカップルが……。

 アニタは人の少ない木陰を見つけた。
「ここで休みましょう? どう? イルさん?」
「はい。ちょっと、疲れてしまいました……」
 アニタはすっとイルを抱きしめ、木に腰掛けた。
 アニタの腕の中でイルのぬくもりが伝わる。
 そして、その胸には、互いに贈った花が挿されていた。
 アニタの胸にはピンクのスターチス、イルの胸にはマーガレット。
 花言葉は『永久不変』、『真実の愛』。
 その贈り物は二人の気持ちを素直に伝えていた。
 そよそよと吹く風が、二人の花を揺らす。
「アニタさん、とても……星が綺麗ですね」
 イルが空を見上げながら告げる。
「本当に……今日は私のペンでも、表現できるか難しいわね」
「え?」
「今なら、イルさんの事ばかり書いてしまいそうだから……」
「アニタ、さん……」
 イルの顔が薄紅色に染まる。
「あの、アニタさん」
「何?」
 イルは振り向き微笑む。
「ずっと、側にいます……」
 そして、口付け。
 時が止まる。
 もちろんそれは、永遠ではない。
 けれど、二人は願ってしまう。
 流れる星に願いを。
 この時がこのまま永遠に続くようにと……。


イラスト: 的場つかさ