『 内緒で「アイシテマス」 』
●ないしょの告白 ないしょの言葉
綺麗な星空を大切な人と一緒に見る場所。
星屑の丘。
ユギはぼんやりと夜空を見上げ、そして、膝枕で眠るジェイドを見た。
本来ならば、こんなに綺麗な夜空を見上げて、愛を語るのだろうか。
ユギはふとそんなことを思っていた。
星を見る時間よりも、ジェイドを見る時間の方が多い事に気付きながら……。
ジェイドは寝ていた。
いや、実は寝た振りだった。
こうしてユギの傍に居る。
それだけでジェイドの心は満たされていく……。
(「だからもう少しだけ、このままで……」)
ジェイドはこの静かな時間をかみ締めながら、願っていた。
「そうだ、告白……」
ユギは思い出したように呟く。
じっとジェイドを見つめ、寝ているのを確認する。
そして、ユギは微笑む。
「ありきたりでごめんね……」
そう前置きし。
「誰より何よりあなたが大好き……うぅん『アイシテマス』」
最後の言葉は大切に想いを込めて。
「……寝てるから、聞こえない……よねっ?」
うん、大丈夫と呟きながら、またジェイドを見つめる。
幸せそうな笑みを口元に添えて。
(「俺も、大好きだ……」)
そのジェイドの言葉は、ユギには聞こえない。
ジェイドの胸の中にしまわれた、大切な言葉。
いずれ分かるときが来る。
そのときまで……。
もう少しだけ、このままで……。
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刃の験者・ジェイド
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呪縛せし朱糸・ユギ >
イラスト: 機喬 鎖ノム