『 星降る夜に・・・・。 』

●忘れていた誕生日

 満天の星々が恋人達をほのかに照らす。
 ここは星屑の丘。
 数多くの恋人達が夜空を見上げながら、愛を語っている。

「ルーカス……」
 その姿を見つけ、ディアーナは嬉しそうな声を上げた。
「ディアーナ、待たせたな」
 その言葉にディアーナは首を横に振る。
「……来てくれて、ほんにありがとう。そなたと出会い、こうして無事に祝える事を嬉しく思う」
 そう言って差し出すもの。
 それは、聖花祭用のお菓子と。
「誕生日おめでとうじゃっ」
 笑顔と共に渡す、誕生日プレゼント。
「そういえば、誕生日でもあったな……」
 ルーカスは言われて驚き、そして苦笑を浮かべる。
 ランララの試練ですっかり失念していた、自分の誕生日。
 こうして祝ってもらえるとは、思ってもみなかった。
「ありがとう、ディアーナ」
 ルーカスはディアーナの差し出すプレゼントを受け取った。
 ディアーナは嬉しそうにそして、照れたように微笑む。
「喜んでもらえたのなら、それでいいのじゃ……」
 その気持ちだけで、ディアーナは充分であった。

 恋人達は二人きりの夜を過ごす。
 愛を語るわけでもなく。
 ただ、二人きりで寄り添うだけ。
 それだけで、二人は充分、幸せだった……。


イラスト: すがのたすく