『 試練を越えて 』

●美味しいお菓子と一緒に

 星屑の丘。
 夕暮れ時といえども、もう既に薄暗く、星が瞬き始めていた。
 茜色が、ゆっくりと山の向こうへと消えていく……。

 グリンダは、楽しげに星屑の丘にたどり着いた。
「お待たせしました。遅くなってすみません……」
 そんなグリンダにアルフィルクは。
「気にせんでええよ。そない待ってへんし」
 にこやかに、そう告げた。
「そうですか……あ、隣、いいですか?」
 そして、グリンダはアルフィルクの隣にちょこんと座る。
「日頃お世話になっている人にお菓子を渡そうと思ってきました。作ってきたノソリンチョコ、貰ってくださいね」
 そういって手渡すチョコレートは、作るのが難しそうな形をしていた。
 これで遅くなったのかと、アルフィルクは思う。
 でも……『日頃お世話になっている人』というのが、少し引っかかった。
(「こないな事に気をもんでも、しかたないわ」)
 心の中でアルフィルクは思い直す。
「グリンダ、その……一緒に食べへんやろか?」
 貰ったチョコレートを分けつつ、アルフェルクはそう提案する。
 それにグリンダは少し驚きながら。
「はい、いいですよ♪」

 二人は幸せそうにチョコレートを一緒に食べていた。
 アルフェルクは食べながら、そっと願う。
(「このままずっと、傍にいさせてな」)
 空には茜色が消え、代わりに夜の闇が辺りを包んでいた。
 まるで、二人を包むかのように、優しく……。


イラスト: 洋武