『 ティータイム〜こんな日もいつもの風景〜 』

●二人だけの特別なティータイム

　いつもと同じティータイム。
　ただ、違うのは……その日が特別な日だという事だけ。
　今日は、ランララ聖花祭。

　白いテーブル、お気に入りの椅子。
　そのテーブルには、美味しそうなお菓子が並べられていた。
「まあ、今日のお菓子も美味しそうですわね」
　シルエラはそのお菓子を前に、満足そうに微笑んでいた。
「ありがとうございます」
　その横でシルエラの為にお茶を淹れるのはユース。慣れた手つきで暖かいお茶が白いカップに注がれていった。
「このケーキ、はじめて見ますわね。新作ですの？」
「ええ、そうですよ。新作のケーキです。よくお気づきになりましたね」
「伊達にあなたのケーキを食べていませんわ」
　くすりと微笑む。
　そして、シルエラは自分のケーキを一口食べてみる。
「まあ、美味しい……」
　口の中に広がる甘酸っぱいカシス、そしてとろける様なシャンパンのムース。
「今日もまた、素晴らしい出来ですわね」
「そう言っていただけるなんて……光栄です」
「ふふ、少しオーバーですわ」
「そんな事ありませんよ？」
　いつも通りですと付け加えるユース。二人は顔を見合わせくすくすと微笑んでいた。
「そういえば、ランララの試練、ちょっと大変でしたわね？」
「僕もあれには、ちょっと手こずりましたね」
　苦笑を浮かべるユース。
「あら、そんな風には見えませんでしたわ」
「そういうシルエラさんはどうたったんですか？」
「そうですわね……もう少しで危ないところでしたわ」
　先ほどの試練の様子を思い出したのか、ぶるっと身震いするシルエラ。
　こんな他愛のない話が、長い間続いた。

　そして。
「今日はとても楽しかったですわ」
　シルエラは椅子から立ち上がり、満足げにそうユースに告げた。
「僕もですよ」
　にこりと微笑み返す。
「……これからもよろしく」
　そんなユースの言葉にシルエラは微笑む。
「こちらこそ。ケーキ、とっても美味しかったですわ」

　ささやかなティータイム。
　二人の楽しいティータイムは、こうして幕を下ろしたのであった。


イラスト： 水原　れん