『 空に降り積もる蒼 』

●想いを伝えて

 レキはずっと胸に秘めていた想いがあった。
 トウマのことを愛しいと、思うこと……。
 その想いはトウマの姿を見つめるだけで、良かった。
 それだけで、幸せだった……。
(「そう思うていた筈だのに……」)
 この想いを伝えたくなってしまった。
 そして、今。
 トウマの前にいる。
 胸が高鳴る……。
 瞬きすら忘れてしまいそうなほどの時間が過ぎ、やっと勇気を出す。
「貴殿がどう在る事を決めていても良い。――そのトウマ殿の傍らに在りたい――」
 切実な想い。
 レキは自分の想いの全てを込めて、告白した。

 トウマはそんなレキをずっと見ていた。
 レキの告白が、トウマの耳に届く。
 甘く霧散してしまいそうな……声として。
(「久しく忘れていた感触……か」)
 そして。
「……有難う」
 短い一言。
 この言葉が、たとえ己の全てを奪う言葉であっても……。
 トウマはそれでも構わなかった。

 トウマはレキから貰ったお菓子をかみ締めていた。
 まだ、おかわりもあるようだ。側でレキが嬉しそうに手渡してくる。
 幸せな二人だけの時間。
 何故かトウマは、猫の着ぐるみを着ていた……。

イラスト: 指輪