『 愛と言う名の戦い〜追う者と追われる者の行方〜 』

●愛する為の果たし状?

 その日。
 シエルリードは、うきうきとランララ聖花祭に参加していた。
「この試練を乗り越えて行けば……」
 順調に試練を乗り越えるシエルリード。
 が、しかし。
「んっ!?」
 突然、霧が発生したかと思った瞬間!
「貴様をランララの木までは行かせないっ!!」
 片手に果たし状を持ったガートルードが飛び出してきたのだ!
「え? ガートルードちゃん!?」
 シエルリードは事前にガートルードを呼び出していた。
 が、しかし。
「普段は貴様らの交際を暖かく見守っている私だが、今日ばかりは邪魔をするぞ! 貴様の菓子をバリバリ食ってやる、覚悟しろ!」
 なにやら誤解している。
 シエルリードのちょっとした、おちゃめな演出がいけなかったのか?
「ちょ、ちょっと待っ……」
「問答無用っ!!」

 その後、優位に立ったのはシエルリードの方だった。
「ちょ、こら、離せっ!! 貴様は、あの男と待ち合わせしているんだろうっ!? 私はそれを阻止しに……」
 興奮状態のガートルード。油断していたためにあっさりとシエルリードに掴まってしまったのだ。
 今はシエルリードの腕の中にいる。まるでお姫様を連れて行くかのごとく。
「誤解だよ、ガートルードちゃん。僕は……」
 シエルリードは女神ランララの木の下で、にこやかに微笑みながら続ける。口元には笑みがあったが、その瞳は真剣そのものであった。
「君の事が、好きだ」
「!!!」
 思いがけない告白。
 嬉しくてたまらない気持ち。今にも何処かに飛んで行きたい気持ち。
 それよりなにより、ガートルードの心を支配したのは。

 どうしたらいいのか?
 どんな顔をすればいいのか、どんな言葉を返事すればいいのか、どんなことをしてあげればいいのか。

 そう、ガートルードは混乱していたのだ。
 この場で告白されるとは、つゆとも思っていなかったのだから。
 ガートルードの顔はたちまち真っ赤になり、そして、彼女が出した答えは。
「ガートルードちゃんっ!?」
 緩んだシエルリードの手から、鮮やかに逃げ去ってしまう。
 つまり、ガートルードは、この場から逃げることを選択したのだ。
 ガートルードが走り去った姿を呆然と見送るシエルリード。
「うーん、やっぱり……いろいろなくどき文句の方がよかったかな?」
 実は事前にくどき文句を用意しておいていたのだが、シエルリードはその中の一つも使わなかった。
 当人を目の前にして、頭が真っ白になり、やっと出した言葉があれだったのだ。
「でもガートルードちゃんのあの反応。期待しても……いいんだよね?」
 二人の距離はほんの少しだけ、縮まった……のかもしれない。


イラスト: 柳瀬真紀