乙女の意地にかけて(?)

●乙女の覚悟

 ぐっ。
 この日のためにライラブーケは気合を入れていた。
 今度こそ、思いを伝えるために。
 大切な気持ちを伝えるために。
 それはとても、緊張するし、恥ずかしい行為でもある。
 ぐぐっ!
 最後にもう一度、気合を入れた。
 大丈夫、力を込めた手には、何も持っていない。
 持っている大切なプレゼントは壊していないから。

「ベニトさんっ!」
 ライラブーケは相手を目の前に、そう切り出した。
 しっかりと踏みしめた一歩。
 ラッピングしたチョコレートを渡し、そして!
「こ、こ、恋人として、ぼ、僕とお付き合いしてくださいっ!」
 やっとライラブーケは伝えた。
 勇気を振り絞っての告白。
 そして、相手の答えは………。
「ちょ、チョコレート、あ、ありがとう、ございます……」
 汗を流しながら、ベニトは続ける。
「あの、その……ライラブーケさんの……気持ち、よく、わかります……。でも、今は……」
 応えられる段階ではない。
「あ、き、気にしないで。その、僕の気持ち、伝えたかった……だけだから……」
 にっこり微笑んで。
「あ、チョコレート、溶けないうちに食べてね。それだけは、お願いだよ」
 そんなライラブーケの言葉に、ベニトは頷いた。

 ライラブーケは無事に想いを伝える事ができた。
 その答えが残念な結果になってしまっても。
 大切なプレゼントを渡すこともできたのだから。
「上手く、笑えたかな?」
 呟くように一言。
 幸せになるためには、まだまだ時間が必要なのかもしれない。
 この次は、幸せになれるように、女神の木に願いながら………。


イラスト: chita