今年もふたりで・・・これからも二人で

●二人だけのミッドナイト

「静か……だな」
 ぽつりと呟くように、ディオナは隣にいるリュシュカに告げた。
「そうだな………」
 リュシュカも、頷く。
 ここは星屑の丘。
 たくさんの恋人達が訪れた場所だが、夜も更けたことで、もう周りには誰もいない。
 二人だけの秘密の夜。
 思わず、二人の顔に笑みが浮かぶ。
「なんだか緊張するな……」
「そうか? 俺は久しぶりに二人きりの時間ができた事が嬉しい」
 そういうリュシュカに、ディオナはどきまぎしてしまう。

 夫婦になってどのくらいの時が過ぎたのだろう?
 長いようで短い期間。
 けれど、こういう二人きりの時間が、ディオナにとって特別な時間のように思えてしまう。
 特別な時間、大切な時間だからこそ、逆に緊張してしまうのかもしれない。

「ああ、そうだ。冷めぬうちにこれを……」
 ディオナがそう言って出してきたもの。
 それは、ディオナの手作りであるフォンダンショコラであった。
「さすがディオナ殿。また腕をあげたようだな」
「そう褒めるな。おだてても何も出ないぞ……」
 そう言ってフォンダンショコラとフォークの乗った皿を、リュシュカにぐいっと渡すディオナ。
「ありがとう」
 リュシュカは受け取り、さっそく一口食べてみる。
「うん、最高だ」
「それは良かった」
 安心したように嬉しそうに微笑むディオナ。

 人のいない丘の上で、二人はそっと寄り添う。
 もうフォンダンショコラは跡形も無い。
 どうやら、二人で食べきってしまったようだ。
 リュシュカは、幸せそうな眼差しでディオナを見つめる。
「こうしてずっと、二人いつまでも一緒に……」
 リュシュカは囁くように告げ。
「ああ、いつまでも一緒に……」
 そして、口付け。
 長く短いような、夢のような時間。
 二人は、星の瞬く夜空を見上げながら、幸せなひと時を過ごすのであった。


イラスト: synn