穏やかな日〜いつまでも共に〜
●二人寄り添って
今日はいつもと違う特別な日。
けれど………。
「そうだ、今日は面白い話をしてやろうか」
ドークスは優しい笑みを浮かべ、アリョーシャの顔を見た。
「面白いお話ですか? どんなお話なんでしょう」
にこにことドークスの話を楽しみに待つアリョーシャ。
ここは、多くの恋人達が集う、女神ランララの木。
その木陰に二人は座り、二人だけの時間を楽しんでいた。
他愛のない話から始まった長閑な時間。
今度はどうやら……。
「そこで、巨大猪が俺に向かって突進して来るんだが……俺は紙一重でそれをかわしたんだ」
「まあ、紙一重で?」
ドークスの臨場感あふれる武勇伝。
相手は凶悪な巨大猪だったようだ。
今まさにクライマックスを迎えようとしている。
「そうして、しばらく相手の体力を奪って、一気にこの……俺の『疾風』で相手の首筋を斬りつけて倒したんだ」
鞘に納まった愛用の剣を見せながら、ドークスはそう説明した。
「さすがはドークスさんですね。私もぜひ、その場で見たかったです………」
ドークスさんの勇ましい姿を……。
そう続けて伝えられたら、どんなにいいだろうか?
アリョーシャの頬が薄いピンクに染まる。
「どうかした?」
「あ、いえ、なにも……その……やっぱりドークスさんは、凄い、です……」
「そう言ってもらえると、嬉しい」
にこりと微笑むドークスに、アリョーシャの頬はさらに色づいていく。
「俺ももっと、アリョーシャと一緒に冒険ができると良いな……」
ドークスの言葉に、アリョーシャはただ、頷いた。
いつもと変わらぬ日常のように。
特別な日が過ぎていく。
いや、今日はやっぱり特別な日。
「すぅ……すぅ……」
静かな寝息を共に、夢の中に入っていくアリョーシャ。
「………う……ん……」
そして、隣で同じく眠っているドークス。
その二人の手は、いつの間にか握られていた。
寄り添うようにそっと……。
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雪花の巫女剣士・アリョーシャ
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若き疾風の狩人・ドークス
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イラスト: YWAKA