いつまでも、きっと、どこまでも、ずっと

●あなたの隣に……

「もう、ユンなんて、知らないっ!!」
 リルアはぷいっとそっぽを向いてしまった。
 理由は簡単。
 ユンがリルアをからかったのだ。
 ………ちょっとやりすぎたかもしれない。
「そう、むくれるなって」
 ユンの暖かい手が、リルアの頭に触れた。

 本当は、いつもの調子で抗議の真似事でもしようかと思っていた。
 今度は私の番だからと。
 今度は私がユンをからかってあげるって。
 でも、できなかった。
 こんなにも、顔が赤くなるなんて思ってもみていなかったから。
 リルアは早くこの頬の赤みが消えないかとばかり願っていた。
 いや、それだけではないようだ。
(「………そうよね」)
 リルアは心の中で呟く。
(「ずっといっしょ、なのよね…………ユン」)
 それがたとえ、恋人ではなくても。
 それだけで、リルアは充分であったから………。

 リルアはまだ、そっぽを向いている。
「まだ、怒ってのか?」
 ユンはまだ、リルアの頭を撫でていた。
 ユンからは、後ろを向いているリルアの顔が見えない。
 きっとかなり怒っているのではないかとユンは予想する。
(「ちょっと言い過ぎたか?」)
 心の中で反省。
 でも、とユンは思う。
 ずっと――そう、ずっとこれからも、俺は変わらず、こいつの頭を撫でるだろう、と。
「なあ、これから何処かいかないか?」
「え? 何処に?」
 くるりと振り向いたリルアは、きょとんとしている。
「ちょっとそこまで」
「そこまでって……」
「まあまあ、気にしない気にしない。ほら、行くぞ」
 そういって、ぽんとリルアの頭を叩くと、そそくさと歩いていってしまう。
「ちょ、ちょっと待ってっ!!」
 急いで着いてくるリルアの為に、ほんの少しだけゆっくりと歩く。
「早く来ないと置いてくぞ」

 からかいから始まった二人の時間。
 でも。
 二人の距離は近づいたようだ。
 ほんの少しだけ………。


イラスト: おおゆき