ずっと一緒に…。

●初めてのデート

 今日はカームにとって特別な日であった。
 雪のフォーナ感謝祭の時に、初めて告白。
 そして、晴れて恋人同士になれた。
 だが、いろいろ立て込んでいたために、恋人同士になってからのデートは一度もなかった。
 いや、感謝祭が終わってから会うこともできなかったのだ。
「うぁぁ〜〜っ!! 緊張するっ!!」
 勢いで早く待ち合わせ場所にたどり着いたカーム。
 正直言って、彼は緊張していた。
 告白してからかなりの時間が経ってしまっている。
「も、もしかしたら、嫌いになっちゃったとか!?」
 その可能性は否定できない。
 カームの不安は募るばかりであった。
「いやいや、こういう時は、良い方に考えないとっ!!」
 うんと頷き、挫けそうになる自分を奮い立たせる。
「よし、今日の予定を考えておこう! えっと……まずは朝露の花園に行って……」
 カームは余った時間で、デートのシミュレーションを行ってみる。
「そ、そして、最後には………」
 カームの頭の中で、素敵なキスシーンが浮かび上がる。
「ああああ、いやいやいや」
 浮かび上がったシーンを払い消すように、カームは頭をかき乱す。
「そうではなくって………」
「そうではなくって、何ですか?」
 そんな質問にカームは正直に答える。
「少しでも一緒にいたいっ!」
 と、そこまで言ってカームは気づいた。
「え?」
 目の前に恋人のソエルがいる事。ソエルはにこにことカームを見上げている。
「え? ええっ!? そ、ソエルっ!? い、いつ来たんだっ!?」
「ついさっきですよ」
「えっと、ど、どこまで聞いてた?」
「そうですね……少しでも一緒にいたいってところから、でしょうか」
 にこにこにこ。
 あわあわあわ……。
「ずいぶんお待たせしてしまったみたいですね」
 ちょっと困った顔してソエルが口を開く。
「あ、いや、その、そんなことないよ。さっき来たばっかだし」
 慌てながら、答えるカーム。
「まずはどこから行きましょうか?」
「そうだな、やっぱり……」

 何事も初めが肝心というけれど。
 今回ばかりは失敗してしまったかもしれない。
「あ、そうそう」
 朝露の花園を二人で歩きながら、ソエルは言う。
「私も、少しでも一緒にいたいです。……カームさんと一緒に」

 恋人になって初めてのデート。
 どうやら、今日はカームの願うデートになりそうだ。
 ゆっくりと二人で過ごす、幸せなデートに………。


イラスト: おおゆき