たまには素直に。「……愛してるよ」

●不揃いのかたち

 星降るような夜空。
 夜空を見る絶好のポイントと言われている星屑の丘に、二人はきていた。

「カクテル入りのクッキーを作ったの」
 セントは、長く赤い髪を揺らしながら、セイガに手作りクッキーを渡した。
「どれどれ?」
 クッキーを受け取り、包みを開くセイガ。
「色とりどりで凄く美味しそうでしょ? 味と愛のこもり具合は自信あるんだから」
 にっこりと微笑みながらセントは訊ねる。
 確かに色鮮やかなクッキー。色を見るだけなら、美味しそうという言葉も頷ける。
 だがしかし。
「形悪いな〜〜」
 口元に笑みを浮かべ、セイガは口にした言葉。
 それはクッキーの形。
 そう、色は綺麗に出ているのだが、そのクッキーの形がどうも綺麗に定まっていない。
 一生懸命、綺麗な形にしようと思って………逆に失敗したような形であった。
「うっ、やっぱり………こんなクッキーもらっても、嬉しくないわよね」
 さっきの笑顔は何処へやら。セントはずーんと落ち込んでしまった。
「バカだな」
「え?」
「嬉しいに決まってるだろ?」
「で、でも………」
 セントの言葉が、遮られた。
 なぜなら、セイガがキスしたのだ。
 甘く淡いキス。
「さて、美味しいクッキーも味見してみるか」
 ばくばくと食べはじめるセイガ。
 先ほどのキスに照れているのか、セイガの顔はほのかに紅く染まっているように見える。
「おわっ」
 セントは突然、クッキーを食べているセイガに抱きついた。
 そして、囁く。
「………愛してるよ」
 セイガの耳元で顔を近づけて……。

 少し肌寒い夜。
 けれど、この二人にとっては、暖かいひとときになったのであった。


イラスト: ぎん太