薄明を眺める想いは一つ

●朝陽に願いを……

 二人はずっと側に居た。
 本当は途中で帰ろうとも思っていたのかもしれない。
 けれどそうしなかったのは、帰るのが勿体無かったからかもしれない。
 それとも……時を忘れて語り合ってしまったのかもしれない。
「それで………ん?」
 空が明るくなり始めた事に気づいたのはアガート。
「どうかしたの?」
 アガートの側に居たローズマリーが訊ねる。
 と、ローズマリーも気づいたようだ。
 もうすぐ夜明けだという事に。
「あ……ちょっと話しすぎたか」
 バツの悪そうにアガートは頭を掻いた。
「もう遅いわ」
 くすりと微笑むローズマリー。
「せっかくだし、朝陽が昇るのを見ていましょうよ」
「それもそうだな」

 このままでいたい。
 アガートに包まれるようにローズマリーは座って、朝陽を眺めていた。
 こんな風になったのは、確か夜。
 寒い風が吹いてきて、このままでは風邪をひくからと、アガートが引き寄せてくれたのだ。
 こんな機会はめったにないだろう。
 だからこそ、このままでいたいと思ったのかもしれない。

 すぐ側で、あなたのぬくもりを感じられるから。

「綺麗ね……」
「ああ、こんなに綺麗なもんなんだな……」
 改めて朝陽の美しさに見とれる二人。

(「たとえ相手が何であろうと、俺はローズマリーのそばに常に居る」)
 アガートはそう決意を新たにした。

(「これからも、ずっと一緒にいられますように……」)
 ローズマリーも幸せを願う。

 静かにその日は始まる。
 辺りには小鳥がさえずり始めていた。
 夜通し語り合っていたのだから、仕方ないのかもしれない。
 アガートとローズマリーは、二人仲良く寝ているのであった。


イラスト: どり