早朝の散歩
●花に願いを
「まあ………」
辺りを見渡せば、一面花畑。
大小様々な花が、二人を迎える。
まだ、朝日が出てきていない頃。
空がゆっくりと白く輝きだす。
「スタインさん、見てくださいまし! こんなに綺麗なの……初めてですわ」
嬉しそうに微笑み、歩いていくメイ。
その歩調はいつの間にか駆け足になってきているようだ。
「そうですね。こんなに素敵な花園にめぐり会えるとは、私達は幸運ですね」
「ええ」
と、メイが何かに躓き、転びそうになった。
「きゃ……」
「危ないっ」
とっさにスタインがメイを抱きとめる。
そのおかげで、転ぶことなく怪我もなかった。
「ご、ごめんなさい……」
「いいえ。怪我が無くてよかったです」
二人は向かい合って微笑む。
「まだ足元は暗いですから、気をつけてくださいね」
スタインの言葉にメイは頷いた。
「あ、そうです。また転ばないように手をつなぎましょうか?」
突然の提案。
「えっと……いいんですの?」
「もちろん」
二人は手をつなぎ、ゆっくりと朝日を浴びていく花園を楽しんでいた。
花には蜜が集まり、見ているだけで涼しげに感じる。
「スタインさん?」
ふと、スタインの足が止まった。
「どうかしたんですの?」
「ちょっと願い事を」
「願い事?」
「ええ。でも、内緒です」
そう言って、スタインはまた笑顔を浮かべた。
一年を無事過ごせたことに感謝を。
そして、今年もメイと一緒にいられるように……。
スタインはそう、願った。
まるで、空を行く二羽の鳥のように。
いつまでもずっと……あなたの側に………。
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降りそそぐ木漏れ日・スタイン
&
エルフの医術士・メイ
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イラスト: ねこ