ランララ聖花祭 〜花と風と貴女とともに〜

●永遠の絆

 何かが、聞こえる。
 叫び声?
 それとも、誰かのすすり泣く声?
 よくわからない。
 分かるのは、血煙の中である事。
 ここが、悲しみや切なさが渦巻く、戦いの場所である事。
 そんな場所で生まれた、酷く刹那的で、されど永遠をも内包しうる不思議な絆。
 大切にしたい、守りたい、永遠の絆が。

「あの、どうかしたんですか?」
 不安そうに見上げるのは、レイステル。
「あ、いえ……ちょっと昔の事を思い出していたんです」
 安心させるように笑みを浮かべながら、ヒルドはそう説明した。
 ここは、静かな場所であった。
 花は咲き乱れる、穏やかな朝露の花園。
 二人はその花園をゆっくりと歩いていた。
「昔のこと?」
「ええ。私達が出会ったときの事とか……心が通じ合ったときとか」
 レイステルもヒルドの言葉に導かれ、過去の思い出を思い浮かべた。
「いろいろありましたね……でも」
 ふと、レイステルはヒルドの瞳を見つめる。
「あなたに出会えて、とても幸せです」
 その言葉にヒルドは瞳を細める。
「私も、です」
 二人はそっと手を合わせた。
 不安。
 いつ運命が、二人を別離へと誘うかわからない不安。
 ヒルドはそんな不安を胸にしていた。
「あっ……」
 突然の風。
 その風は近くの花びらを舞い上がらせる。
「綺麗です………」
「ええ、綺麗ですね。そう……あなたのように」
「ヒルドさん………」
 レイステルの頬が淡い紅に染まる。
 そんなレイステルの手をそっと握り、ヒルドは歩き出す。
「さて、次はどこに行きましょうか?」
「そうですね……次は………」

 心が通う二人の間に、必ず付きまとうものが不安であろう。
 だが、ヒルドは選ぶ。
 二人、共に歩いていく事を………。


イラスト: ネム