ランララ番外編:ある光景

●試練に疲れたら

「……あァっと、幸せ諸君。ちぃっとばかし俺にも幸せを分けてくんねぇかなぁ? ってなぁ。今年の大寒波は独り身には堪えてねぇ。俺様もそろそろカノジョが一人や二人欲しい訳よ。知り合いにいるだろ? 可愛い娘。紹介してくれよ。名前と所属旅団だけでいいから、ココに書いてってくれねぇかな? ほらほら、アンタ。とっとと書いてマイハニーに会いに行こうぜ、なあ」
 怪しい笑みを浮かべながら、ギンヌンガガプは様々な人々を捕まえて、試練を行っていた。
 が、最後には。
 どばきっ!!
 みんな、蹴り倒して先へと行ってしまった。
 それでも、いくつか名簿があるのが救いだろうか?
 ギンヌンガガプ、ちょっとぼろぼろ。
「幸せ連中を邪魔すんのはいいが……みんな容赦なく蹴り倒してくな……くそう」
 ほろりと涙が出てきそうだ。

 と、そこに。
「一緒にいてくれる人がいないのでー♪ 一人で試練を頑張るのですー♪」
 一人でバスケットを抱えてシャルムがやってきた。
「うにゃ? ギンさん、何しているんですか? ボロボロ……」
「試練だよ、し・れ・ん! シャルちゃんもやるか?」
「うーんそうですね……」
 ちょっと考えて、シャルムはぽんと手を打った。
「試練は他の人に任せて一緒にお菓子食べに行こうです♪」
「………はぁ?」
「そうと決まれば、朝露の花園に行きましょうっ! 私、行きたかったんですよね、花園♪」
「だからその……おわっ!!」
 いつの間にやら、シャルムに連れて行かれて、二人は花園に出かけていった。
 試練を放って置いて、まっすぐに。

「どうですか? 美味しいですか?」
「うんうん、サイコーっ!!」
 楽しそうにシャルムのお菓子を頬張るギンヌンガガプ。
「お菓子、沢山作ったですから、食べてくださいね♪」
「おう、ありがとうなっ!!」
 二人は花が咲き乱れる園で、ティータイム。
「シャルちゃんが来てくれて、俺、幸せだな」
 ギンヌンガガプは今の幸せな時を満喫していた。
「あ、後でまた試練やるんですよね。応援してますから、頑張ってくださいね♪」
 ちょっと目の前が真っ暗になったが……気にしないでおこう。
「おう、後でシャルちゃんも試練やってけよ♪」
 麗らかな花園。
 楽しいティータイムは、しばらく続く。
 お菓子がなくなる、その時まで。


イラスト: ハニコ