eclipse of...

●不意打ちは駄目よ?

 麗らかなさえずりの泉。
 そこにぱたぱたと走ってくる影がある。
 レナだ。
 それを愛おしく見つめる者がいる。
「セインさーーーんっ!!」
 レナはセインに駆け寄った。
 レナを愛おしく見つめるのは、セイン。
「セインさん、ごめんね。遅くなっちゃったよぅ〜」
 息を弾ませ、ぺこんを頭をさげるレナ。
「いいえ、私も来たばかりですから」
 セインは微笑み、レナを泉の畔へと誘った。

 二人はゆっくりと泉の側を歩く。
 時折吹く風は、泉の水を受けたのか、少し涼しく感じる。
 そして、木々から零れ出す日の光が、暖かい。
 この二つが合わさり、今、さえずりの泉は、とても心地よい場所となっていた。
「あ、そうだ。忘れないうちに……はい、プレゼントだよ♪」
 レナから渡されたのは、クッキーであった。
「有難うございます。ここで……頂いても構いませんでしょうか?」
「どうぞどうぞ、だよ♪」
 にこにこと勧めるレナ。
 セインはクッキーを一枚取り、にこりと微笑んだ。
 レナもつられて、にこり。

 ちゅっ♪

「…………!!!」
 確かにそれは不意打ちであった。
 レナのわなわなゲージがMAXになり………。
 ばちこーーーーーーんっ!!
 セインの目の前に、沢山の星が散っていった……。
「うう、それでも、幸せです………」

 その後、レナは倒れたセインをそのままに、さえずりの泉を去っていった。
 セインの心の中に『不意打ちは厳禁』という言葉が刻まれた事もない。
 ただ、ほんの一瞬に交わした口付け。
 それだけで、セインは満足なのであった。


イラスト: ハニコ