〜聖花祭の贈り物〜

●贈り物は……

 朝露の花園を散歩していた二人。
「綺麗な花ですね」
「そうでござるな」
 ミユキの言葉に、コテツは頷く。
「この花を、その髪に飾ったら、もっと綺麗だと思うのでござるが……」
「止めておきましょう。花が可愛そうです」
「そう言うと思ったでござるよ」
 二人はくすりと微笑み、また歩き出した。

 と、丁度良いベンチを発見した。
「そろそろ、休憩しませんか?」
 持ち掛けたのは、ミユキ。
「ちょっと疲れたので、助かるでござるよ」
 久しぶりの夫婦水入らずの時。
 コテツはベンチにどっかと座り、ふうっと息を吐いた。
 ミユキもちょこんと座った。
「え?」
 コテツの膝の上に。
「あ、今日は贈り物があるんですよ」
 にこにことミユキは続ける。
「み、ミユキ、殿?」
「はい、去年は上げれなかった贈り物です」
 取り出したるは、美味しそうなチョコレート。
「口移しでプレゼントしましょうか?」
「いや、その……あの………」
「それとも……?」
 ミユキの指が自分を指した。
「ふ、普通にチョコをもらうでござるよっ」
 あわあわと慌てるコテツ。
 こんなに積極的なのは、初めてではないのだろうか?
「ちょっと残念です」
「えっ!?」
「冗談ですよ。はい、どうぞ」
 そう言って、ミユキはチョコレートを手渡した。
 コテツは受け取り、さっそく一口食べた。
「うん、美味いでござるよ♪ ありがとう、ミユキ殿」
「どういたしまして。あっ、唇に……」
 そういってミユキはコテツにキスをした。
「チョコレートついていましたよ。……ちょっと甘かったでしょうか?」
 コテツは、突然の事に顔が真っ赤になっている。
(「ちょっと、やり過ぎましたか?」)
 心の中で、ちょっと舌を出して。

 こうして二人は、そのベンチで、しばらく休憩を楽しむのであった。


イラスト: はまだ