●お友達と一緒に

 星降るような夜。
 辺りには恋人達が愛を語り合っている。
 けれど、この二人はちょっと特別。
 まだ、恋人ではない。
 素敵なお友達。
 今日は……。

 日頃のお礼に素敵なプレゼントを。

「お味は……どうですか?」
 心配そうにノクターンの顔を見つめるのは、フィシス。
「はい、とっても美味しいです。でも、わざわざお礼なんていいのに」
 ノクターンの言葉に、フィシスはふるふると首を横に振った。
「そういう訳にはいきません。いつもお世話になっているノクターン様に何かを渡さないと私の気持ちがおさまりません……」
「フィシスさん………クッキー、ありがとうございます。本当に美味しいです」
 そして、とっても甘くてとろけちゃいそうな美味しいクッキーを頬張って、幸せに浸るノクターン。
「そう言ってもらえると、私も嬉しいです」
 そして、互いに微笑む。
 決して、恋人にはならない。
 だけど、大切な事には変わりない。

 こんな『好き』もあるのだと。

「それにしても……あそこのカップル凄いですね」
「あ、見てください、ノクターン様! あのカップルも……きゃあ、キスしちゃいましたよぉ〜」
「ねえねえ、あのカップル……なんだか素敵ですよね……あこがれちゃいます」
 途中で、カップルの品定め会になっていたり。
 ふと、我に返り、お互い顔を見合わせる。
「ふふふ」
 思わず笑ってしまう。
 けれど、こういうのが楽しいのだ。
 お友達とこうして楽しくおしゃべり。
 もちろん、片手には美味しいお菓子もお供にして。
「ずっとこういう感じでいられるといいですよね」
「ええ、私もそう思います」
 二人はくすくすと笑い、また他愛ない話を始める。

 二人の周りにいる恋人とは違うカンケイ。
 けれど、ノクターンとフィシスにとってそれは、とても幸せなひと時なのだ。
「あ、フィシスさん、あれ!」
「うわ、私、はじめてみちゃいました……」
 たとえそれが、カップルの見物会になろうとも……。


イラスト: みしほ